マレーシアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年のGDP成長率は5.2%、内需が成長を下支え。
  • 貿易は過去最高を記録、米国と台湾向けが2桁増に拡大。
  • 対内直接投資は41.2%増、サービス業が急拡大。
  • 対日貿易は輸出入とも3年連続減少、投資実行額は過去3番目の高水準。

公開日:2026年9月8日

マクロ経済

不確実性下でも内需が下支え、実質GDPは5.2%成長

2025年のマレーシアの実質GDP成長率は5.2%だった。2026年国家予算案発表時(2025年10月)に財務省が提示した4.0~4.8%の見通しを上回り、2024年(5.1%)とほぼ同横水準を維持した。年間を通じて輸出が伸び悩んだものの、堅調な内需が景気を下支えした。

需要項目別に見ると、民間最終消費支出は通年で安定的に推移し、前年比5.2%増と経済を下支えした。小売売上が6.1%増の8,115億リンギ(約31兆6,485億円、1リンギ=約39円)と5年連続で拡大し、個人消費支出の強さを裏付けた。新車販売台数も前年比0.2%増の82万752台と過去最高を記録し、2年連続で80万台を超えた。好調な国内経済や堅調な労働市場に加え、2025年7月に政策金利が3%から2.75%へ、5年ぶりに引き下げられたことによる良好な融資環境が個人消費を後押しした。政府最終消費支出も、通年で6.6%増と堅調に推移した。また、国内総固定資本形成は9.6%増となり、前年(12.0%)から伸び率は減速したものの、4年連続のプラス成長を記録した。マレーシア中央銀行(以下、中銀)は、世界的な不確実性が高まる中でも投資の好循環が維持され、特にインフラ整備や機械設備への投資が引き続き成長を支えたと指摘した。一方、通年で輸入の伸びが輸出を上回ったことから、純輸出は19.3%減とマイナスに転じた。2026年は、物価が安定的に推移し政策金利が据え置かれる中、内需は引き続き堅調に推移すると見込まれる。

表1 マレーシアの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 3.5 5.1 5.2 4.4 4.4 5.4 6.3
民間最終消費支出 4.6 5.1 5.2 5.0 5.3 5.0 5.3
政府最終消費支出 3.4 4.7 6.6 4.3 6.4 7.1 8.0
国内総固定資本形成 5.4 12.0 9.6 9.7 12.1 7.4 9.3
財・サービス輸出 △ 7.9 8.3 3.1 4.1 2.6 1.7 3.9
財・サービス輸入 △ 6.8 8.2 4.6 3.1 6.6 0.7 7.9

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。

〔出所〕マレーシア統計局「四半期別GDP統計」から作成

産業別に見ると、2025年のGDPの59.6%を占めるサービス業の成長率は5.5%となり、前年の5.3%から小幅に拡大した。シェアの大きい小売、卸売、情報通信が引き続き堅調に推移したほか、飲食も前年の4.0%から7.4%へと大きく伸びた。GDPの23.0%を占める製造業も、前年の4.2%から4.5%へとわずかに加速した。内訳を見ると、最大のシェアを占める電子部品・通信機器・家電に加え、飲料、食品加工、動植物性油脂も9.9%の高い伸びを示した。一方で、精製石油製品や自動車・輸送機器はマイナスに転じた。このほか、建設業も前年比12.2%増と2桁成長を維持したものの、前年の17.5%増からは伸び率が鈍化した。

中銀は、不確実性を伴うものの、2026年の実質GDP成長率を4.0~5.0%と予測している。対外リスク要因としては、中東における地政学的緊張の高まりや各国の関税措置の影響により、世界貿易が想定を上回るペースで減速する可能性を挙げた。また国内では、悪天候や計画外の設備メンテナンスが生じて農産物や鉱物資源など一次産品の生産量が想定を下回った場合、経済成長の下押し要因となる懸念もあると指摘した。一方、世界経済成長が上振れすると、電気・電子製品に対する世界的な需要拡大、観光活動の活発化が経済成長を押し上げる要因になると見込んでいる。

中銀は、2026年の総合インフレ率を1.5~2.5%、食料品・エネルギーを除くコアインフレ率を1.8~2.3%と予測している。また、中東情勢を背景に国際商品市況の変動が続く中でも、好調な国内経済などを背景に2025年に進行したリンギ高が継続し、輸入価格の上昇を一定程度抑制することで物価の安定に寄与する可能性があるとみている。

貿易

貿易総額は初の3兆リンギ超え、対米・台湾輸出が過去最高を記録

2025年の貿易総額は前年比6.3%増の3兆615億リンギとなり、初めて3兆リンギを超え、過去最高を記録した。輸出額は6.5%増の1兆6,067億リンギ、輸入額は6.2%増の1兆4,548億リンギだった。貿易収支は1,518億リンギで、黒字は28年連続となったほか、黒字額も前年から9.2%増加した。

輸出を品目別に見ると、全体の44.3%を占める電気・電子製品が前年比18.3%増の7,116億リンギだった。同品目の54.7%を占める集積回路は24.3%増の3,892億リンギだった。次いで、パーム油・同製品、専門・科学・制御機器も堅調に増加した。一方、石油製品は19.1%減の951億リンギ、液化天然ガス(LNG)は16.6%減の516億リンギだった。国際エネルギー価格の下落や輸出先の需要減に加え、定期メンテナンスによるLNG生産の減少も影響した。

輸出を国・地域別で見ると、シンガポールが2,496億リンギで前年に引き続き最大の輸出相手国だった。これに米国、中国、香港、台湾が続き、いずれも前年から増加した。特に対米輸出は電気・電子製品、機械・設備および部品、加工食品などの旺盛な需要に支えられ、前年比17.2%増の2,331億リンギに達し、過去最高を記録した。HSコード4桁ベースでは、集積回路が対米輸出全体の25.4%を占める最大品目となり、輸出額は35.3%増と大きく伸長した。台湾向け輸出も、電気・電子製品、光学および科学機器、機械・設備および部品に対する堅調な需要を背景に、輸出額は31.2%増の880億リンギと過去最高を更新した。このうち、58.2%を占める集積回路が33.1%増と拡大した。

輸入を品目別に見ると、39.0%を占める電気・電子製品が、前年比24.6%増の5,677億リンギとなり、輸入全体の増加を牽引した。このほか、計測・検査・分析・制御用機器、非貨幣用金も堅調に増加した。一方、石油製品、原油の輸入は減少した。国・地域別では、中国からの輸入が前年比19.1%増の3,530億リンギとなり、全体の24.3%を占め、引き続き好調だった。次いで、シンガポール、台湾、米国、日本が続いた。

表2-1 マレーシアの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電気・電子製品 601,577 711,613 44.3 18.3
電子管・電子部品 387,981 465,612 29.0 20.0
集積回路 313,091 389,154 24.2 24.3
圧電結晶およびその部品 44,788 54,033 3.4 20.6
その他の電気・電子製品 132,185 145,105 9.0 9.8
通信機器およびその部品・付属品 47,120 54,427 3.4 15.5
パーム油・同製品 114,378 124,887 7.8 9.2
石油製品 117,577 95,104 5.9 △ 19.1
専門・科学・制御機器 54,811 61,021 3.8 11.3
液化天然ガス(LNG) 61,903 51,634 3.2 △ 16.6
合計(その他含む) 1,509,291 1,606,650 100.0 6.5

〔出所〕マレーシア統計局

表2-2 マレーシアの主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電気・電子製品 455,803 567,714 39.0 24.6
電子管・電子部品 267,278 308,723 21.2 15.5
集積回路 202,510 233,523 16.1 15.3
圧電結晶およびその部品 52,652 61,052 4.2 16.0
通信機器およびその部品・付属品 35,835 52,944 3.6 47.7
石油製品 121,418 91,954 6.3 △ 24.3
特殊機械・同部品 31,198 31,721 2.2 1.7
原油 63,167 53,556 3.7 △ 15.2
計測・検査・分析・制御用機器 20,272 23,098 1.6 13.9
非貨幣用金 19,348 21,012 1.4 8.6
合計(その他含む) 1,370,237 1,454,847 100.0 6.2

〔出所〕マレーシア統計局

表3 マレーシアの主要国・地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)〔注1〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。 〔注2〕湾岸協力会議(GCC)諸国はバーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国の合計値。
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州(注1) 1,026,954 1,066,244 66.4 3.8 943,653 1,030,876 70.9 9.2
日本 83,357 76,376 4.8 △ 8.4 70,147 66,589 4.6 △ 5.1
中国 187,764 188,875 11.8 0.6 296,481 353,027 24.3 19.1
香港 88,796 96,232 6.0 8.4 16,670 20,344 1.4 22.0
台湾 67,021 87,950 5.5 31.2 109,127 145,067 10.0 32.9
韓国 54,256 52,618 3.3 △ 3.0 55,421 64,478 4.4 16.3
ASEAN 437,955 457,553 28.5 4.5 326,414 319,990 22.0 △ 2.0
シンガポール 230,865 249,551 15.5 8.1 165,398 152,826 10.5 △ 7.6
タイ 58,998 64,077 4.0 8.6 55,524 54,500 3.7 △ 1.8
インドネシア 54,424 51,199 3.2 △ 5.9 61,132 62,843 4.3 2.8
ベトナム 53,863 55,244 3.4 2.6 29,253 36,886 2.5 26.1
インド 52,132 52,297 3.3 0.3 31,367 27,195 1.9 △ 13.3
オーストラリア 49,401 48,636 3.0 △ 1.5 33,579 29,994 2.1 △ 10.7
ニュージーランド 6,272 5,707 0.4 △ 9.0 4,447 4,192 0.3 △ 5.7
北米 205,416 239,728 14.9 16.7 131,076 140,228 9.6 7.0
米国 198,906 233,080 14.5 17.2 126,252 134,388 9.2 6.4
南米 32,014 41,969 2.6 31.1 42,018 50,119 3.4 19.3
欧州 153,467 166,517 10.4 8.5 133,766 126,555 8.7 △ 5.4
EU27 115,826 129,168 8.0 11.5 103,085 98,871 6.8 △ 4.1
ドイツ 32,335 32,965 2.1 1.9 32,307 30,512 2.1 △ 5.6
オランダ 35,673 43,044 2.7 20.7 5,591 5,179 0.4 △ 7.4
英国 8,615 8,818 0.5 2.4 8,188 6,963 0.5 △ 15.0
湾岸協力会議(GCC)諸国(注2) 25,727 25,141 1.6 △ 2.3 76,087 65,754 4.5 △ 13.6
アフリカ 31,868 33,982 2.1 6.6 35,137 31,044 2.1 △ 11.6
合計(その他含む) 1,509,291 1,606,650 100.0 6.5 1,370,237 1,454,847 100.0 6.2

〔注1〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔注2〕湾岸協力会議(GCC)諸国はバーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国の合計値。

〔出所〕マレーシア統計局

通商政策

相次ぐ新規FTAの署名・発効、EUとの交渉動向に注目

マレーシアは、自由貿易協定(FTA)を戦略的に活用し、市場アクセスの拡大や輸出先の多角化、ならびに対外的な貿易リスクの低減を図っている。こうした取り組みを背景に、2025年のマレーシアの貿易総額に占めるFTAカバー率は63.4%に達した。中でも、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)や地域的な包括的経済連携協定(RCEP)といった主要な地域枠組みは、関税の引き下げや原産地規則の整備を通じて通商環境の予見可能性を高め、世界経済の不確実性が増す中でも、輸出拡大を下支えする重要な役割を果たしている。

表4 マレーシアのFTA発効・署名・交渉状況(単位:%)〔注1〕FTAを適用した貿易額ではなく、FTA締結国との貿易額がマレーシア全体の貿易額に占める割合。 〔注2〕「合計」算出に当たっては、重複する国・地域の構成比は除く。 〔注3〕特恵関税協定は除く。 〔注4〕複数国間協定の場合、発効日は最初の発効国を基準とする。
FTA 発効日 マレーシアの貿易に占める構成比(2025年)
往復 輸出 輸入
発効済み ASEAN物品貿易協定(ATIGA) 1993年1月 25.4 28.5 22.0
ASEAN・中国自由貿易協定(ACFTA) 2005年7月 43.1 40.2 46.4
日本・マレーシア経済連携協定(JMEPA) 2006年7月 4.7 4.7 4.6
ASEAN・韓国自由貿易協定(AKFTA) 2007年6月 29.2 31.7 26.5
マレーシア・パキスタン自由貿易協定 2008年1月 0.2 0.3 0.1
日本・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP) 2008年12月 30.1 33.2 26.6
ASEAN・インド包括的経済協力枠組み協定(AIFTA) 2010年1月 28.0 31.7 23.9
ASEAN・オーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA) 2010年1月 28.3 31.8 24.4
マレーシア・ニュージーランド自由貿易協定 2010年8月 0.3 0.4 0.3
マレーシア・インド包括的経済連携協定 2011年7月 2.6 3.3 1.9
マレーシア・チリ自由貿易協定 2012年2月 0.1 0.1 0.1
マレーシア・オーストラリア自由貿易協定 2013年1月 2.6 3.0 2.1
マレーシア・トルコ自由貿易協定 2015年8月 0.8 1.2 0.2
ASEAN・香港自由貿易協定 2019年6月 29.2 34.5 23.4
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP) 2018年12月 37.6 44.2 30.2
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定 2022年1月 54.5 51.6 57.8
マレーシア・UAE包括的経済連携協定 2025年10月 1.4 1.0 1.8
合計 63.4 63.5 63.2
交渉妥結 マレーシア・EFTA経済連携協定(MEEPA) 0.5 0.3 0.7
マレーシア・韓国自由貿易協定 3.8 3.3 4.5
交渉中 マレーシア・EU自由貿易協定 7.5 8.0 6.8
ASEAN・カナダ自由貿易協定 25.8 28.9 22.4
マレーシア・GCC自由貿易協定 3.0 1.6 4.5

〔注1〕FTAを適用した貿易額ではなく、FTA締結国・地域との貿易額がマレーシア全体の貿易額に占める割合。
〔注2〕「合計」算出に当たっては、重複する国・地域の構成比は除く。
〔注3〕特恵関税協定は除く。
〔注4〕複数国間協定の場合、発効日は最初の発効国を基準とする。

〔出所〕マレーシア統計局、ジェトロ「世界のFTAデータベース」から作成

2025年10月にはアラブ首長国連邦(UAE)との包括的経済連携協定(CEPA)が発効し、マレーシアが締結するFTAは17件となった。マレーシア投資貿易産業省(MITI)によれば、CEPA発効により、物品・サービス貿易、投資、経済協力など幅広い分野で制度的枠組みが整備され、市場アクセスの改善や中東市場への投資の拡大に加え、戦略的協力関係の深化を通じ、経済成長や雇用創出への寄与も見込んでいる。

また、2025年4月には長年交渉が続いていた欧州自由貿易連合(EFTA)との経済連携協定(MEEPA)で合意に達し、6月に署名したほか、10月には韓国とのFTAに署名するなど、具体的な交渉成果を着実に積み上げている。さらに、2026年5月にはコスタリカのCPTPP加盟交渉が実質妥結し、マレーシアとコスタリカの間では初の通商協定が成立することとなった。現時点で両国間の貿易額は限定的であるが、同協定を契機として、将来的な貿易拡大および経済関係の深化が期待される。

現在、マレーシアは3件のFTA交渉を進めている。このうち、マレーシア政府は2025年1月、12年間中断していたEUとのFTA交渉を再開すると公式発表した。MITIは、FTA締結により、電気・電子製品やパーム油関連製品の輸出拡大に加え、新産業マスタープラン2030に沿ったグリーンエネルギーや先進製造業分野へのEUからの投資拡大につながるとの期待を示している。同FTAは在マレーシア日系企業からの関心が特に高く、2024年度海外進出日系企業実態調査では、マレーシアからの輸出でFTA・EPA発効を期待する国・地域としてEUが66.7%と最多だった。このほか、マレーシアはUAEとのCEPA締結を契機として、2025年5月26日に中東6カ国で構成する湾岸協力会議(GCC)とのFTA交渉開始を正式に発表した。MITIによると、マレーシアとGCC間の貿易額は2024年に223億ドルに上った。主な輸出品は電気・電子製品、宝飾品、石油製品、パーム油関連製品、加工食品などである。両者は、関税・非関税障壁の削減や規制協力の深化を通じて、貿易・投資関係のさらなる拡大を目指すとしている。

なお、FTA推進と並行して、マレーシアは従来からの貿易相手国への依存低減を目的に、輸出の多角化を積極的に推進している。ナイジェリア、タンザニア、アンゴラ、モロッコ、ウズベキスタン、ケニア、イエメンなどの新興国市場向け輸出が伸びており、これらアフリカ、中央アジア、中東市場でのプレゼンスの拡大が、輸出の持続的な成長と経済の強靱(きょうじん)性の強化に寄与している。

対内直接投資

デジタル分野で大型案件相次ぎ、対内直接投資は大幅増

2025年のマレーシアの対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比41.2%増の659億リンギだった。投資額は2022年に次ぐ高水準となった。また、投資実行額(グロス)は、前年比6.5%増の3,617億リンギと過去最高を記録した。

業種別投資額では、サービス業が前年比67.0%増の595億リンギと大幅に拡大し、9割超を占めた。うち、情報通信業が35.3%増と堅調に拡大し5割超を占めた。金融・保険業は3.4倍に拡大し、4割超を占めた。情報通信業の増加の背景には、前年同様にデータセンターの建設計画の増加があるとみられる。一方、製造業は68.1%減の26億リンギとなった。製造業のほとんどの業種で前年比2桁減となったほか、石油・化学・ゴム・プラスチック分野で大幅な引き揚げ超過となり、製造業の投資額を押し下げた。2023年までは、半導体など電気・電子産業向けの投資が主流であったが、2024年以降は、データセンター関連の大型案件が相次いでいる。

国・地域別に見ると、シンガポールからの投資が前年比3.0倍の534億リンギに拡大し、投資総額の8割超を占めた。統計上の内訳は明らかでないものの、第三国によるシンガポールを経由した投資が大半を占めるとみられる。2位は香港で67億リンギ(63.6%減)だった。3位の中国は前年の引き揚げ超過から66億ドルの流入へ転じた。2025年末時点で対内直接投資残高では5位となっている。中国からは製造業投資が拡大しており、中でも電気自動車(EV)関連が多い。主な投資案件として、電池メーカーのEVEエナジー(EVE Energy)による第2工場建設がある。以下、日本(31.1%減の43億リンギ)、英国(54.7%増の24億リンギ)が続いた。2025年に過去2番目の高水準を記録した米国は引き揚げ超過となった。ただし、投資実行額(グロス)では297億リンギとなり、シンガポール、香港に次ぐ3位だった。米国からはマイクロソフト(Microsoft)やスタック・インフラストラクチャー(Stack Infrastructure)、グーグル(Google)、バンテージ・データセンターズ(Vantage Data Centers)など、データセンター投資が上位を占めた。

表5 マレーシアの業種別対内直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
業種 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
農林水産業 166 31 0.0 △ 81.3
鉱業(石油ガス含む) 5,041 3,013 4.6 △ 40.2
製造業 8,280 2,645 4.0 △ 68.1
電気・電子 8,276 6,572 10.0 △ 20.6
食品・飲料・たばこ 2,578 1,998 3.0 △ 22.5
非金属鉱物・基礎金属・金属加工 3,162 1,781 2.7 △ 43.7
輸送機器・その他製造業 △ 83 362 10.5 △ 15.4
繊維・木製品 491 △ 704
石油・化学・ゴム・プラスチック △ 6,143 △ 7,364
建設業 △ 2,410 788 1.2
サービス業 35,613 59,459 90.2 67.0
情報通信業 23,534 31,843 48.3 35.3
金融・保険業 7,564 26,060 39.5 244.5
運輸・倉庫業 1,188 1,675 2.5 41.0
保健・社会福祉業 485 331 0.5 △ 31.8
卸・小売業 4,030 49 0.1 △ 98.8
公益事業 △ 2,204 △ 146
その他サービス業 1,016 △ 354
合計 46,689 65,936 100.0 41.2

〔出所〕 「対内外国直接投資統計」(マレーシア中央銀行)

表6 マレーシアの国・地域別対内直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
東アジア 28,181 18,687 28.3 △ 33.7
香港 18,293 6,659 10.1 △ 63.6
日本 6,217 4,283 6.5 △ 31.1
中国 △ 11 6,607 10.0
韓国 2,207 775 1.2 △ 64.9
台湾 1,421 376 0.6 △ 73.5
東南アジア 18,989 55,261 83.8 191.0
シンガポール 17,888 53,439 81.0 198.7
タイ 520 1,064 1.6 104.6
大洋州 △ 4,131 △ 375
オーストラリア △ 3,888 △ 377
欧州 △ 8,593 △ 9,175
スイス 1,765 1,422 2.2 △ 19.4
ドイツ 2,833 △ 794
フランス 5,565 180 0.3 △ 96.8
オランダ △ 20,889 △ 19,224
英国 1,579 2,442 3.7 54.7
北米 10,959 △ 480
米国 11,416 △ 593
中南米 1,151 2,580 3.9 124.2
ケイマン諸島 4,561 1,009 1.5 △ 77.9
英領バージン諸島 △ 2,311 137 0.2
バミューダ △ 463 596 0.9
合計(その他含む) 46,689 65,936 100.0 41.2

〔出所〕「対内外直接投資統計」(マレーシア中央銀行)

投資の先行指標と位置付けられるマレーシア投資開発庁(MIDA)の投資認可額統計によると、2025年の投資認可総額は前年比11.0%増の4,267億リンギで、3年連続で過去最高を記録した。内訳は、サービス業が65.9%、製造業が30.8%、第一次産業が3.3%だった。また、投資認可総額のうち、国内からの投資が51.5%、外国からの投資が48.5%とほぼ二分された。

サービス業では、人工知能(AI)、ビッグデータ、データセンター、クラウドコンピューティングなど情報通信業への投資が好調だった。製造業では、電気・電子産業が285億リンギと最大で、次いで化学・同製品が249億リンギで続いた。MIDAは製造業投資を通じて、新たに10万9,950人の雇用が創出されると予測している。

製造業の外国投資認可額は前年比13.1%増の1,006億リンギだった。業種別に見ると、電気・電子製品が前年に引き続き最大だったが、認可額は前年比55.5%減の237億リンギへと大幅に減少した。一方、化学・同製品が2.9倍の191億リンギ、基礎貴金属製品が27.6倍の106億リンギ、非金属鉱物製品も38.1%増の82億リンギと前年を上回った。これらに輸送機器を加えた上位5業種で、全体の73.0%を占めた。

国・地域別では、シンガポールが前年比96.3%増の296億リンギで首位だった。これに、中国(2.8倍の276億リンギ)、香港(2.4%減の124億リンギ)、米国(41.7%減の61億リンギ)、日本(4.1倍の37億リンギ)が続いた。2025年の主な投資案件として、中国系INVニュー・マテリアル・テクノロジー(INV New Material Technology)によるリチウムイオン電池セパレータ工場開設(32億リンギ)、射出成型機大手の海天集団(Haitian Group)によるコンピュータ数値制御生産拠点設立(30億リンギ)、香港の電池メーカー金山科技工業(Gold Peak Technology)によるニッケル亜鉛電池の工場および研究開発センター設立(6億7,000万リンギ相当)、米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)による地場系複合企業YTLコーポレーションと連携したAIデータセンター投資(200億リンギ相当)などが報じられた。

MIDAは2024年から、投資元を最終親会社の所在国・地域別に集計した統計(認可額ベース)の発表を開始した。それによると、2025年は中国が前年比90.3%増の437億リンギで首位となった。中国を業種別に見ると、化学・同製品、電気・電子製品、輸送機器の順で大きかった。次いで、シンガポール(52.9%増の89億リンギ)、米国(0.7%減の71億リンギ)が続き、いずれも電気・電子製品が最大の業種だった。

表7 マレーシアの主な対内直接投資案件(2025年)(金額上位20件)(単位:100万ドル)〔注〕 投資額は推計値も含む。
時期 企業名 国籍 業種 投資額 概要
11月4日 マイクロソフト(Microsoft) 米国 データセンター 2,200 ジョホール州にマレーシアで2カ所目となるデータセンターリージョン「Southeast Asia 3」の開設を発表。
8月20日 スタック・インフラストラクチャー(Stack Infrastructure) 米国 データセンター 1,660 ジョホール州に2つのハイパースケール・データセンターを備えたキャンパス設立を発表。電力容量は合計220メガワット(MW)。同社にとって初めてのマレーシア進出となる。
7月30日 恵州億緯鋰能(EVE Energy) 中国 電子部品 1,200 クダ州で電気自動車(EV)用リチウム電池の第2工場が完成。
9月12日 エックスファブ・シリコン・ファウンドリーズ(X-FAB Silicon Foundries) ベルギー 半導体 600 サラワク州でアナログ半導体の製造能力拡張およびクリーンルームを増設。
2月12日 エアトランク(AirTrunk) オーストラリア データセンター 538 ジョホール州にハイパースケールデータセンター(JHB2)を新設し、クラウド需要に対応したインフラを整備。
5月5日 グーグル(Google) 米国 データセンター 538 子会社のパール・コンピューティング・マレーシア(Pearl Computing Malaysia)を通じて、ヌグリスンビラン州でデータセンター用地を取得。
11月23日 バンテージ・データセンターズ(Vantage Data Centers) 米国 データセンター 514 ヨンドールグループ(Yondr Group)からジョホール州にある300MWのハイパースケール・データセンターを取得。同社にとってマレーシアで3カ所目のキャンパス。
7月8日 トクヤマ 日本 化学 435 サラワク州にて、韓国OCIグループの現地法人と、半導体用多結晶シリコンの半製品の製造・販売を手掛ける合弁会社を設立。
7月31日 ロイヤル・フォーパック(Royal Vopak) オランダ 輸送・倉庫 328 ジョホール州ペンゲランにあるバイオ燃料貯蔵・物流タンクの容量拡張を発表。
9月2日 リャンロン (Rianlon) 中国 化学・医薬 300 高分子材料向け耐劣化剤、潤滑油材料、バイオベース材料の研究開発・製造工場を建設。
5月11日 レクシスネキシス・リスク・ソリューション(LexisNexis Risk Solutions) 英国 データセンター 270 APACデータセンターを開設。安全で高性能なデジタルIDおよび不正防止ソリューションを提供。
11月19日 浦林成山(Prinx Chengshan) 中国 ゴム製品 250 クダ州ゴム産業団地にタイヤ製造工場を建設(第1フェーズ)。
4月22日 フェローテック(Ferrotec) 日本 半導体 226 クダ州クリムに半導体等装置関連部品を製造する第2工場を起工。石英、セラミックスの製造および金属受託加工を行う予定。
7月29日 佳邦科技(INPAQ Technologies) 台湾 電子部品 208 ペナン州に高周波アンテナモジュールの生産工場を開設。Wi-Fi 7、低軌道(LEO)衛星、車載向けの旺盛な市場需要に対応する。
12月2日 インテル(Intel) 米国 半導体 208 ペナン州で半導体組立・テスト拠点の能力拡張および先端パッケージングを強化。
11月2日 ビッテレ・エレクトロニクス(Bittele Electronics) カナダ 電子部品 205 プリント基板(PCB)の組み立て工場を開設。米国の顧客等に販売する。
10月1日 エクイニクス(Equinix) 米国 データセンター 201 ジョホール州のデータセンターへ追加投資。同社にとって、ジョホールで2拠点目、マレーシアでは4拠点目となる。
10月17日 浙江勝華波電器(SHB) 中国 電子部品 152 自動車のシーティングモーターおよびワイパーシステムを生産する工場が稼働を開始。同社として海外初の工場。
2月19日 金山科工業(Gold Peak Technology) 香港 電子部品 150 ジョホール州にニッケル亜鉛電池の製造工場と研究開発センターを建設。データセンター向けに供給する。
10月2日 寧波徳業科技(Deye Group) 中国 電子部品 150 ジョホール州にて太陽光インバーター・蓄電池工場を着工。

〔注〕 投資額は推計値も含む。

〔出所〕ワークスペース(Refinitive)、fDi Markets(Financial Times)、各社プレスリリース、報道などから作成

投資環境・外資誘致政策

産業高度化や脱炭素への取り組みが進展

2025年は国家半導体戦略(NSS)に基づく、地場企業や人材育成に向けた取り組みが具体化した。3月には、マレーシア政府が、英半導体設計大手アーム・ホールディングス(Arm Holdings)との提携を発表した。政府は今後10年で2億5,000万ドルを投じ、同社の設計システムと設計情報利用サービスを導入する計画で、7月にはアーム主導の人材育成プログラムが初めて開催された。また、7月にはペナン州に「ペナン・シリコン・リサーチ・アンド・インキュベーション・スペース」が、11月にはスランゴール州で州内2拠点目となるICデザインパークが開設されるなど、IC(集積回路)設計拠点の拡充が進んだ。

高付加価値産業の誘致を目的としたジョホール・シンガポール経済特別区(JS-SEZ)は、2025年1月にシンガポールとマレーシアの両国首相が設立に最終合意した。JS-SEZでは、9つの重点エリアで11の主要経済セクターへの投資誘致を進め、5年以内に50件の高付加価値プロジェクト組成と、2万人の熟練雇用創出を目指す。法人税や個人所得税の優遇措置や、投資プロセスを迅速化するジョホール・ファスト・レーンが導入されている。ジョホール州は投資先として注目が高まっており、MIDAによると2025年の同州への投資認可額は1,100億リンギと国内で最大だった。

脱炭素に関しては、2023年に策定した国家エネルギー移行ロードマップ(NETR)で定められた重点分野で法整備が進んだ。2025年1月にはエネルギー効率・保全法(EECA 2024)が施行され、エネルギー消費量の大きい施設や製品を対象に、エネルギー需要の管理や効率化を義務付けることで、産業、商業、住宅部門での省エネを推進する。また、8月には、二酸化炭素の回収・有効利用・貯留(CCUS)事業枠組みを定めた初の法律であるCCUS法が施行された。同法は、国際基準に準拠したCCUS運用を確保するための環境保護、リスク管理、事業運営者の責任を規定し、その一環として炭素注入税(注1)の導入が盛り込まれた。経済成長の源としてCCUS産業の発展を促進する狙いがある。同法に基づき、10月1日には、CCUSにかかる規制・監督主体として、経済省傘下にCCUS庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが設置された。

(注1)
政府による貯留サイトの長期監視費用に充当するため、海上貯留施設の運営者に対して課される。

パリ協定に基づく取り組みとして、政府は2025年5月に国が決定する貢献(NDC)の達成に向けたロードマップ、行動計画および長期低排出発展戦略(LT-LEDS)を策定し、10月にはNDC3.0を提出した。さらに、2026年4月には国家炭素市場政策(NCMP)を策定し、国際カーボン取引市場への参加に向けた国内の制度整備を進める方針を示すなど、脱炭素政策を加速させている。

高所得国入りに向け、政策貢献型投資を奨励へ

2025年7月には、現アンワル政権下で初となる2026~2030年の国家中期計画(第13次マレーシア計画)を発表した。「開発の再構築」をテーマに、5年間で4,300億リンギを開発予算に充てるとした。国民の生活水準向上と経済の強靭化を進め、マレーシアの国際的地位を向上する。年4.5~5.5%の経済成長を通じ、2030年までに高所得国入りを目指す。また、国内賃金の引き上げに向け、外国人労働者数を労働力人口の10%に抑制する目標を設定した(2025年8月12日付ビジネス短信参照)。外国人労働者の雇用比率に応じて税率を調整する多層型人頭税については、導入時期を2025年から2026年へ延期した。

また、2025年10月発表の2026年度国家予算では、成果連動型の投資優遇措置を段階的に導入することが盛り込まれた。投資貿易産業省(MITI)とMIDAは2026年1月末に、製造業の新規投資を対象とする「新インセンティブフレームワーク(NIF)」を発表し、3月1日から先行導入している。NIFでは、新たな投資に対しては1986年投資促進法に基づく奨励事業および奨励製品リストを廃止し、投資が国家戦略(注2)へどの程度貢献するかに応じてインセンティブの内容や水準を決定する仕組みに転換する。今後、製造業の再投資やサービス業に対しても適用を拡大する予定で、詳細の発表が待たれる。

(注2)
国家投資目標(NIA)および新産業マスタープラン(NIMP)2030を指す。

対日関係

輸出入とも3年連続減少、投資実行額は過去3番目の高水準

2025年の対日貿易総額は前年比6.9%減の1,430億リンギだった。マレーシアにとって日本は、シンガポール、米国、中国、香港、台湾に次ぐ6位の貿易相手国・地域である。日本は2015年に米国へ3位の座を譲って以降4位だったが、2024年に台湾、2025年は香港にも抜かれ、順位を6位へと下げた。輸出額は8.4%減の764億リンギ、輸入額は5.1%減の666億リンギと、いずれも3年連続で減少した。貿易収支は25.9%減の98億リンギへと黒字幅が縮小したものの、日本に対しては16年連続で貿易黒字となった。

対日輸出を品目別(HSコード4桁ベース)に見ると、天然ガスが全体の26.1%を占め、引き続き最大の輸出品目となった。マレーシアにとって、日本は液化天然ガス(HS271111)の最大の輸出先であり、日本にとってもマレーシア(輸入額シェア14.5%)は、オーストラリア(同39.8%)に次ぐ重要な供給国である。これに加え、集積回路、石油および歴青油、パーム油・同製品、アルミニウムの塊が主要輸出品目となった。集積回路とパーム油・同製品、アルミニウムの塊は前年比2桁増であったのに対し、天然ガス、石油および歴青油は2桁減に落ち込んだ。対日輸入では、集積回路が前年比9.3%減と2年連続で減少したほか、2024年まで2年連続で急拡大した半導体製造装置が24.1%減となった。一方、半導体デバイスは28.5%と急拡大した。マレーシアにおける半導体関連の大型設備投資が一巡し、生産設備の稼働段階へ移行していることを反映した動きとみられる。また、乗用車も19.1%減となった。日系メーカーによる自動車販売の減少が反映された。

表8-1 マレーシアの対日主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
天然ガス(HS2711) 26,293 19,936 26.1 △ 24.2
集積回路(HS8542) 6,091 6,792 8.9 11.5
石油および歴青油(HS2709) 4,732 3,756 4.9 △ 20.6
パーム油・同製品(HS1511) 2,301 2,571 3.4 11.7
アルミニウムの塊(HS7601) 1,664 2,155 2.8 29.5
合計(その他含む) 83,357 76,376 100.0 △ 8.4

〔出所〕 マレーシア統計局

表8-2 マレーシアの対日主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
集積回路(HS8542) 12,871 11,679 17.5 △ 9.3
半導体デバイス(HS8541) 2,398 3,081 4.6 28.5
半導体製造装置(HS8486) 3,930 2,982 4.5 △ 24.1
自動車部品(HS8708) 2,979 2,826 4.2 △ 5.1
乗用車(HS8703) 2,894 2,340 3.5 △ 19.1
合計(その他含む) 70,147 66,589 100.0 △ 5.1

〔出所〕 マレーシア統計局

日本からの直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年比31.1%減の43億リンギへと減少した。投資実行額(グロス)は前年比0.8%増の217億リンギと微増し、過去3番目の高水準だった。なお、2025年末時点の対内直接投資残高は1,044億リンギで、総額の9.6%を占め、シンガポール、香港に次ぐ3位だった。業種別では、サービス業が49億リンギと投資を牽引した一方、製造業は引き揚げ超過となった。

サービス業では2025年、堅調な個人消費需要の取り込みを目指した新規進出・拡張が活発だった。回転すし店「スシロー」の1号店がクアラルンプール市中心部に開店した。三井不動産が手掛ける商業施設ららぽーとブキッ・ビンタン シティ センターでは、アニメグッズ専門店「アニメイトクアラルンプール」が正式開業した。また、出版大手KADOKAWA(カドカワ)の現地法人による漫画などを扱う書店「K+(ケープラス)」が開業した。このほか、大和ハウス工業が、一般消費財やEコマースなどへの需要の高まり、物流ニーズの多様化に対応し、マルチテナント型物流施設を開業した。ヘアカット専門店「QB HOUSE」やドラッグストア「マツモトキヨシ」も、シンガポールとの往来拡大が期待されるジョホール州に、それぞれマレーシア1号店を出店した。

MIDAによると、2025年の日本の製造業投資認可額は、前年比4.1倍の38億8,696万リンギに拡大し、5位となった(前年9位)。製造業の内訳を見ると、化学・同製品が31.3倍の26億4,955万リンギで、全体の68.2%を占めた。トクヤマおよび韓国OCIグループ現地法人の合弁による半導体用多結晶シリコン半製品の製造案件(20億リンギ)が寄与したとみられる。次いで、機械機器(16.2倍、2億9,448万リンギ)、食品製造(4.9倍、2億5,848万リンギ)、プラスチック製品(3.1倍、2億3,955万リンギ)が続いた。主な投資案件としては、堀場製作所による工場新設や、三井金属による高周波基板用銅箔(どうはく)工場への追加投資、流体制御機器メーカーのピラー(PILLAR)による製造販売拠点設立(4億3,500万円相当)などがあった。

製造業では出資・買収案件も見られた。具体的には、豊田通商による車載電池用銅箔製造エスケイ・ネックシリス・マレーシア(SK Nexilis Malaysia)への出資(1億1,000万ドル)、ヨシムラ・フード・ホールディングスによる業務用厨房(ちゅうぼう)機器輸入販売企業エグザマス・ジャヤ(Examas Jaya)の株式取得(14億円)、パンチ工業による金型関連部品販売企業ブライト・マシン・ツールズ(Bright Machine Tools)の買収(金額非公開)などがあった。

現地人材育成・登用政策の強化に、前広な周知と対話を求める声

ジェトロの日系企業調査(調査期間2025年8月19日~9月17日、有効回答数367社、回答率47.3%)によると、在マレーシア日系企業の44.0%が、今後1~2年の事業展開を拡大すると回答した。特に非製造業で拡大を見込む企業が51.8%と半数を超え、現地市場ニーズの拡大や高付加価値製品・サービスへの需要を背景に、積極的な事業展開を進める動きがみられた。一方、製造業では現状維持が54.3%と最多で、拡大は35.3%にとどまった。

足元の景況感について、マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)とジェトロが共同実施した2026年日系企業アンケート調査(調査期間2026年2月6日~3月5日、有効回答数208社、回答率37.0%、以下JACTIM・ジェトロ共同調査)によれば、2025年下期の業況判断指数はマイナス4.3ポイントとマイナスが続くものの、2024年下期から7.2ポイント改善し、新型コロナ禍前の水準を上回った。国内経済は好調な一方、競争の激化やコスト増などにより、業況判断は企業・業界ごとにばらつきがあるとみられる。2026年の予測は5.3ポイントとプラスに転じたが、2026年3月以降の中東情勢緊迫化が同調査に十分に反映されていない点に留意が必要だ。

JACTIM・ジェトロ共同調査によると、オペレーションにおける現状の課題としては、前年に続き「従業員の賃金上昇」を挙げる企業が76.1%と最多で、中でも製造業の回答率は8割を超えた。次いで、「駐在員ビザ・就労許認可手続き」が54.7%となり、前年(27.3%)から急上昇した。背景には、マレーシア政府が2026年1月に発表した駐在員のビザにあたる雇用パス(EP)の取得条件の厳格化がある。最低月給の大幅な引き上げ、EP期間の上限設定、現地人材への引き継ぎ計画書提出の義務化が主な改正点である。事業運営への影響が懸念されるほか、現地人材とのスキルギャップや高い離職率を踏まえ、現地人材の高度化・管理職登用といった政策目的の実現を疑問視する声も聞かれる。このほか、「為替レートの変化」が50.3%と約半数を占めた。2025年後半から急速に進行したリンギ高を受けたものとみられる。

マレーシア政府が産業の高度化に向けて、外国人材への依存を減らし、現地人材の育成・雇用促進を目指すなか、外国人を取り巻く政策は転換期にある。上述のEP取得条件の厳格化に加え、EPを1件発給するごとに最大3人の学生インターンを有給で義務付ける「1:3ポリシー」が2026年6月から本格的に施行された。日系企業からは、受け入れ準備の負担や受け入れ期間中の業務管理の難しさを挙げる声も聞かれる。このほか、雇用者数や外国人雇用比率に応じて税率を調整する多層型人頭税の導入が2026年中に予定されており、コスト増が懸念される。こうしたなか、日系企業からは、急激な政策変更が投資意欲の減退を招くと懸念の声が聞かれるほか、政策変更にあたっては、産業界からの十分なヒアリングや適切な猶予期間をもった告知を求める声が高まっている。

基礎的経済指標

〔注〕 実質GDP成長率:2015年基準、消費者物価上昇率:2010年基準、貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 3.5 5.1 5.2
1人当たりGDP (米ドル) 12,098 12,619 13,949
消費者物価上昇率 (%) 3.0 1.8 2.0
失業率 (%) 3.4 3.2 3.0
貿易収支 (100万リンギ) 215,155 139,053 154,593
経常収支 (100万リンギ) 20,048 27,716 31,829
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 110,885 112,968 120,170
対外債務残高(グロス) (100万リンギ) 1,264,447 1,350,201 1,394,809
為替レート (1米ドルにつき、リンギ、期中平均) 4.56 4.58 4.28

〔注〕
実質GDP成長率:2015年基準、消費者物価上昇率:2010年基準、貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支:マレーシア統計局、
対外債務残高(グロス):マレーシア中央銀行
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF