知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 商標法の一部改正法律案(議案番号:2110990)

2021年06月23日

議案番号:2110990

提案日:2021年6月23日

提案者:イ・ギュミン議員外10人

提案理由

現行法は、商標権又は専用実施権が侵害されると、商標権者又は専用実施権者(以下、「商標権者等」という。)は、商標権侵害に対する損害賠償を請求することができ、これに対して法院は、損害賠償額を算定するに当たり侵害者の利益額を商標権者等の損害と推定することができるように規定している。
しかし、損害額を算定するためには商標権者が侵害者の利益額を立証しなければならないが、侵害者が保有している営業秘密のような主要情報を商標権者等が確保して損害額を立証し、それを裁判過程で現出することは事実上不可能に近いため、それに対しては適正に立証責任が分配されるように制度を改善すべきであるという指摘がある。
一方、2016年の「特許法」の改正を通じて、特許権侵害による損害賠償額を算定するに当たり、法院の鑑定命令及び当事者の説明義務を付与し、侵害者に資料提出命令の対象・範囲を拡大する等における損害額算定制度の改善が行われた。しかし、現行法は、類似な領域を取り扱っているにも関わらず、制度変化の流れに追いつけず、そのため、訴訟時の被害当事者の実質的な救済は、特許権の侵害訴訟より難しい状況である。
そこで、侵害者の侵害行為で受けた損害額の算定のために鑑定人に対する当事者の説明義務を課し、迅速・正確な損害額の算定を図るようにする一方、侵害者が保有している証拠に対して提出命令の対象と範囲を拡大し、法院の証拠提出命令に対する不応時の制裁効果の導入を通じて、提出命令の実効性を向上し、デザイン権者の効果的な権利救済を図ろうとするものである。

主要内容

  1. 商標権等の侵害による損害額算定のために法院が鑑定を命じた際には、当事者は鑑定人に鑑定に必要な事項を説明するように義務化する(案第111条の2新設)。
  2. 商標権又は専用実施権の侵害訴訟において、法院が提出を命ずることができる要件に侵害行為の立証を含めるようにし、多様な電子記録媒体等も証拠として活用できるように提出対象を書類から資料に拡大する(案第114条第1項)。
  3. 証拠提出命令の拒否理由の妥当性を判断するために法官のみが予め確認する秘密審理手続制度を導入する(案第114条第2項新設)。
  4. 侵害の証明又は損害額の算定に必ず必要な場合には、営業秘密であっても提出義務を課し、法院の提出命令に従わない場合、相手方の主張事実を真実なものに認めるようにすることで、商標権者等の立証負担を緩和する(案第114条第3項から第5項まで新設)。

商標法の一部改正法律案

商標法の一部を次のように改正する。

第111条の2を次のように新設する。
第111条の2(鑑定事項の説明義務)商標権又は専用実施権の侵害訴訟において、法院が侵害による損害額の算定のために鑑定を命じた際には、当事者は、鑑定人に鑑定に必要な事項を説明しなければならない。
第114条の題目のうち、「書類」を「資料」とし、同条題目以外の部分を第1項とし、同条第1項(従前の題目以外の部分)の本文のうち、「侵害行為による損害を計算するのに必要な書類」を「侵害の証明又は侵害による損害を計算するのに必要な資料」とし、同条但し書のうち、「書類」をそれぞれ「資料」とし、同条第2項から第5項までを、それぞれ次のように新設する。
②法院は、資料の所持者が第1項による提出を拒否する正当な理由があると主張する場合には、その主張の当否を判断するために資料の提示を命ずることができる。この場合、法院は、その資料を他の者に見られるようにしてはならない。
③第1項により提出すべき資料が営業秘密(「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第2条第2号による営業秘密をいう。以下同じ。)に該当するが、侵害の証明又は損害額の算定に必ず必要な際には、第1項の但し書による正当な理由と見做さない。この場合、法院は、提出命令の目的内で閲覧できる範囲又は閲覧できる者を指定しなければならない。
④当事者が正当な理由無しに資料提出の命令に従わない際には、法院は、資料の記載に対する相手方の主張を真実と認めることができる。
⑤法院は、第4項に該当する場合、資料の提出を申請した当事者が資料の記載に関して具体的に主張することに著しく困難な事情があり、資料により証明する事実を他の証拠により証明することを期待し難い際には、その当事者が資料の記載により証明しようとする事実に関する主張を真実なものと認めることができる。
第227条第1項各号以外の部分における本文のうち、「営業秘密(「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第2条第2号による営業秘密をいう。以下同じ。)に」を「営業秘密に」とし、同項第1号のうち、準備書面又は既に調査し、若しくは調査しなければならない証拠」を「準備書面、既に調査し、若しくは調査しなければならない証拠又は第114条第3項により提出し、若しくは提出しなければならない資料」とする。

附則

第1条(施行日)この法律は、公布後3ヶ月が経過した日から施行する。
第2条(商標権又は専用実施権の侵害訴訟に関する適用例)第111条の2、第114条及び第227条第1項の改正規定は、この法律の施行後に提起される訴訟から適用する。

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