知的財産ニュース 職務発明制度の改善に向けた「発明振興法」の改正案が国会で成立
2024年1月10日
出所: 韓国特許庁
職務発明自動承継制度により企業のリスク低下、資料提出命令・守秘保持命令制度により正当に報われる環境を定着
<職務発明制度の見直しについて>
#承継制度の見直し:現行の規定では、承継通知時に企業が権利を承継するため、承継通知の前までは二重譲渡の恐れがあり、企業経営への負担も大きい。
韓国特許庁は、職務発明の自動承継制度の導入、資料提出命令及び守秘保持命令の導入(キム・ハンジョン議員の代表発議(2023年5月)、イ・チョルギュ議員の代表発議(2023年9月))を柱とする発明振興法の改正案が1月9日火曜日に国会の本会議で成立※したと発表した。
※1月中に改正法律案の公布予定→自動承継制度の導入、資料提出命令・守秘保持命令制度の導入は公布後6か月が経過した日から施行
職務発明制度※は、職務上なした発明により大きな成果に貢献した従業者に対し補償を行うことで発明のモチベーションを向上し、使用者は従業員により創出された職務発明を安定的に承継することで技術移転・事業化など企業利益につながる大事な制度である。
※職務発明は、従業者が職務上なした発明であって、その性質上使用者の業務範囲に属し、従業者の現在又は過去の職務に属する発明のことを指す(発明振興法§2)
使用者と従業者の両方が満足できる職務発明制度にしていくため2021年から2023年まで計24回にわたって見直しを重ね、使用者側、従業者側、科学技術界、法曹界などから意見を取りまとめて承継・証拠提出制度の改善など、使用者側と従業者側の両方が抱えている問題を改善できる内容が改正案に盛り込まれた。
①使用者側が抱える問題を解消する目的に職務発明承継制度を見直した。現行法では、全ての職務発明に対し承継通知が必要であるため企業経営の負担が大きく、承継通知前に二重譲渡される恐れがあった。改正案では、職務発明の承継時点を承継通知時から発明完成時に改め、不承継の意志のみ通知するよう承継手続きを簡素化して企業への規制を緩和した。
②従業者側が抱える問題を解消する目的に証拠提出制度を見直した。現行法では、訴訟の当事者が求める証拠資料が営業秘密に該当した場合は証拠資料として確保することが難しくなっていた。改正案では、営業秘密の場合も訴訟の判決に必要だと判断された場合、証拠資料の提出を裁判所が命ずることができ、当該の証拠資料を訴訟外の目的で活用できないように制裁する資料提出命令と守秘保持命令の制度を同時に導入した。
③職務発明優秀企業の認定、認定の取消、認定の有効期限の引き上げなどを法律で定めて認定制度の法的根拠を強化した。
現行 | ⇒ | 改善 |
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①承継通知時の職務発明の権利承継(発明完成後から承継通知前まで二重譲渡の恐れあり) | ⇒ | 承継に関する規定を導入することで発明完成時に職務発明の権利承継 |
②職務発明の補償金をめぐる訴訟で証拠資料が営業秘密に該当する場合、当該の資料提出を拒否(資料提出命令の導入なし) | ⇒ | 職務発明の補償金をめぐる訴訟で資料提出命令および守秘保持命令の制度を導入 |
③認定の有効期限、認定の取消根拠に関して告示のみ | ⇒ | 認定、認定の有効期限、認定の取消根拠を法律で定める |
また、職務発明を拡散し正当に報われる環境を整えるために、職務発明についてのガイドラインを今年上半期にまとめる。ガイドラインには、▲職務発明の標準規定、▲使用者-従業者間の協議・同意の手続き、▲補償の事例などが盛り込まれ、企業や発明者に配布し教育を行う予定である。
特許庁長は「職務発明制度を改善することで優秀な人材や研究者がよりモチベーションを高めて技術開発に取り組み、使用者が職務発明を安定的に承継して企業利益にもつながると思う」とし、「何より使用者と従業者間で合理的に補償する環境が整うことで技術のイノベーションを図ることが期待される」と述べた。
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