知的財産ニュース 半導体の生産性向上のカギとなる「自動搬送システム」の技術、韓国が特許出願増加率トップ

2023年12月26日
出所: 韓国特許庁

上位10社のうち3位SEMES、6位サムスン電子など韓国勢が多い


#半導体の自動搬送システム(AMHS, Automated Material Handling System)は、半導体の製造工程でウェハーを積載したウェハー搬送容器(FOUP, Front Opening Unified Pod)を自動搬送するためのシステムのことだが、ほこりと振動を最小限に抑えつつ最大のスピードでウェハー搬送容器を移送し、ボトルネックが発生することなく適時にウェハーが工程装置に搬送されるようコントロールすることがそのコア技術である。
#半導体の自動搬送システムの装置としては、半導体工場の天井に設置されているレールに沿って走行する台車(vehicle)が自動でウェハーの搬送容器を持ち上げて目的地まで運搬する天井走行式搬送車(OHT, Overhead Hoist Transport)とウェハー搬送容器が工程装置に入る前後の一時保管庫であるストッカー(stocker)が代表であり、そのほかには自動昇降装置(lifter)、無人搬送車(AGV, Automated Guided Vehicle)などがある。
#半導体の自動搬送システムの市場規模は※2022年24.7億ドルから毎年6.1%ずつ成長し、2028年には35.2億ドルに達すると見込まれる。これを受けて半導体の自動搬送システムに関する技術開発が世界的に活発になっている。
※Industry Research, “AMHS for Semiconductor Market Insights and Overview [2023-2029]”, 2023.08.

世界の半導体自動搬送システムの特許出願がここ10年(2012年~2021年)で年平均10.2%増加している中、韓国は年平均32.1%増加し、最も速いスピードで成長していることがわかった。

韓国特許庁が五庁(IP5:日米欧中韓の知的財産庁)に出願された世界の特許を分析したところ、2012年は117件であった出願件数がここ10年で年平均10.2%成長し2021年には281件に達している。

国別の特許出願の動向

国別の出願件数の増加スピードをみると、韓国は年平均32.1%と世界で最も速く、台湾が年平均17.3%伸び2位であり、日本(6.2%)、中国(6.2%)の順となっている。

同期間の出願件数をみると、日本が1,238件(67.7%)と最も多く、2位の韓国が398件(21.8%)、3位の台湾が88件(4.8%)、4位の中国が46件(2.5%)、5位のアメリカが44件(2.4%)を出願した。

技術分野別の特許出願

技術分野別では、半導体の自動搬送システムの中で天井走行式搬送車が(OHT)60.3%(1,103件)、ストッカーが32.1%(587件)と全体出願の92.4%を占めている。年平均の増加率をみると、天井走行式搬送車は21.1%である一方、ストッカーは―9.3%と、天井走行式搬送車に関する出願が最も速いスピードで伸びていることがわかった。

主要出願人

主要出願人をみると、日本のダイフク(608件、33.3%)の出願件数が最も多く、2位は村田機械(586件、32.1%)、3位は韓国のSEMES(248件、13.6%)、4位は台湾のTSMC(77件、4.2%)、5位は米国のブルックス・オート―メーション(30件、1.6%)となっている。

そのほかに韓国出願人には、6位のサムスン電子(29件、1.6%)、7位のSYNUS Tech(26件、1.4%)、8位のSFA(19件、1.0%)など、上位10位の中に韓国勢が多い。

出願人の類型

出願人を類型別にみると、企業による出願が全体の98.7%とほとんどを占めており、個人が1.0%、大学が0.2%、公共機関が0.1%を占めている。大規模の投資が求められる産業であることから企業が技術開発をリードしていると思われる。

特許庁の半導体製造装置審査チーム長は「自動搬送システムを半導体工程に設置するためには工程システムと生産容量など、製造のカギとなる情報を装置供給メーカーに提供しなければならないため、経済的な側面だけではなく情報のセキュリティーの側面でも国産化を図る必要がある」とし、「韓国企業が革新技術を開発して市場を開拓していけるよう高品質の審査だけではなく関連する特許情報を持続的に提供していく」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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