知的財産ニュース 技術流出犯罪、もはや「軽い処罰」はない
2023年6月14日
出所: 韓国特許庁
最高裁判所の量刑委員会、技術流出犯罪に対する
特許庁・最高検察庁の量刑基準整備提案書を採択
営業秘密侵害犯罪等の技術流出犯罪に対する「軽い処罰」がなくなる。韓国特許庁と最高検察庁は、今月12日月曜日に開催された第125次量刑委員会で、営業秘密侵害犯罪等の技術流出犯罪の量刑基準(※)が整備対象に選定されたと発表した。両機関が今年4月に最高裁判所の量刑委員会に提案した「技術流出犯罪量刑基準整備提案書」が最終採択されたのである。これにより、第9期量刑委員会の任期内(~2025年4月)に技術流出犯罪に対する量刑基準が見直される予定である。
※量刑基準:裁判官が刑の量定や執行猶予の要否を決定する際に参考にする基準
最近、米国と中国中心の技術覇権争いが激化するに伴い、韓国企業の優秀な技術を狙う海外企業による技術流出の試みが持続的に発生している。国家情報院によると、この5年間(2018~2022)摘発された産業技術の海外流出事件だけで計93件であり、その被害規模は約25兆ウォンと推計されている。摘発されていない事件まで考慮すれば、技術流出によって発生する経済的被害ははるかに莫大なものと予想される。
しかし、技術流出犯罪の波及効果に比べ、それに対する処罰は不十分なところがあった。2019年から2022年まで言い渡された技術流出事件のうち実刑は10.6%(※)にすぎず、2022年に言い渡された営業秘密海外流出犯罪の刑量は平均14.9か月(※※)の水準であった。営業秘密海外流出の法定刑が最大懲役15年であることを勘案すれば、実際の処罰水準は低かったのが事実である。
※不正競争防止法第18条第1項及び産業技術保護法第36条(国内外を含む)に違反した技術流出事犯に対する裁判所の言渡し445件のうち47件(2019~2022)
※※平均懲役刑量(月):12.7(2018)→14.3(2019)→18.0(2020)→16.0(2021)→14.9(2022)(最高検察庁)
犯罪の抑制と予防のためには、適正水準の処罰が必要なだけに、特許庁と最高検察庁は、技術流出犯罪に対する軽い処罰を解決する必要性に深く共感し、量刑基準の整備に向けて持続的に協力してきた。望ましい量刑基準整備案の検討に向けた研究委託を並行して推進し、国家情報院、産業通商資源部、中小ベンチャー企業部、警察庁、関税庁などと量刑基準の整備に向けた協力方法を議論した。
また、今年5月には、両機関が共同で「技術流出犯罪量刑基準討論会」を開催し、技術流出犯罪の特殊性を考慮した量刑基準の改善案および技術流出犯罪の被害規模算定方法を議論し、最近の量刑基準整備の動向を把握するために取り組むなど、足並みを揃えてきた。
メディアでも、技術流出犯罪の重要性と深刻性に比べて処罰水準が低い現実について継続的に問題を提起してきた。第9期量刑委員会が7年ぶりに技術流出犯罪の量刑基準を整備することにした背景には、特許庁と最高検察庁等技術流出関連機関の努力とともに、技術流出犯罪に対するメディアと国民の持続的な関心があったからと見られる。
具体的な量刑基準の整備案は、今年下半期にも議論が行われはじめると予想される。初犯が多く、被害規模の算定が困難な技術流出犯罪の特殊性をきちんと反映できるよう、刑量の加重、減軽要素および執行猶予の判断基準に対する改定案を議論し、2019年に強化された営業秘密侵害犯罪の法定刑が訴訟実務に反映されるよう、勧告刑量の引上げ案も議論されると見られる。
改定案は、まず、量刑委員会が専門家会議などを通じて下書きを作成し、以後、特許庁や最高検察庁など関連官庁からの意見収集を経て修正・補完するものと見られる。このような手続きを通じて作成された最終案が量刑委員会で議決されれば、改定された量刑基準が施行される。新しい量刑基準は、施行日以降に公訴が提起された事件から適用される。
特許庁長は、「量刑委員会が技術流出犯罪の深刻性に共感し、量刑基準を整備することにした決定を歓迎する」とし、「特許庁は、知的財産の主務官庁であり、不正競争防止および営業秘密保護に関する法律の所管機関として、技術流出犯罪に適した量刑基準が設けられるよう、任された役割を最後まで確実に成し遂げたい」と述べた。
検察総長は、「技術流出犯罪が量刑委員会で量刑基準見直し対象の犯罪群に選定され、産業技術の保護が一層手厚くなると期待される。経済の安全保障と直結する技術流出犯罪に対する厳正な捜査に最善を尽くす一方、中小企業の技術奪取被害保護にも力点を置きたい」と話した。
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