知的財産ニュース 3次元(3D)プリンティングの応用製品に関する特許出願が年平均で40%急増

2021年11月2日
出所: 韓国特許庁

マラソンの世界記録保持者であるキプチョゲ(ケニア)は、東京オリンピックで3Dプリントを活用したポリウレタン素材のシューズを履いて出場し、金メダルを獲得した。選手の足形に合わせた多孔性の構造で作られたシューズは、軽いだけではなく、汗の排出機能と通気性に優れており、競技力の向上に大きく貢献したと評価されている。

英国の「フードインク」は、世界初の3Dプリンターレストランとして、全ての料理を3Dプリンターで作り提供している。
「3Dプリンティング応用製品」は、製作品の形状・機能・材料の特性に合わせて3Dプリンティング技術を適用し、カスタマイズ型で製作した製品のことを意味する。

技術の高度化とともに消費者向け製品へのニーズが高まっているため、グローバル3Dプリンティングの市場は、既存の設備・素材中心から医療、食品へと、さまざまな分野における応用製品をカスタマイズ型で製作するようになり、その適用分野が広がっている。

韓国国内でも伝統産業である機械部品から医療、食品などの分野に至るまで、3Dプリンティング応用製品の市場を先に開拓しようとする技術開発の競争が激しい。

韓国特許庁によると、3Dプリンティング応用製品に関する韓国国内の特許出願は2013年47件から2018年254件で、年平均40%ずつ増加している。

細部分野別に見てみると、機械部品分野の出願(458件、42.0%)が依然として最も多く、その次に医療分野(247件、22.6%)、電気電子(95件、8.7%)、消費財(93件、8.5%)、自動車(82件、7.5%)、航空宇宙(47件、4.3%)、建設建築(29件、2.7%)、食品(24件、2.2%)の順である。

特に、最近になって出願の増加が目立っている医療および食品分野の品目を具体的にみると、医療分野では3Dプリンティング技術を活用した手術模型やモデルや手術ガイド、人体移植用のインプラントおよび透明矯正装置などのように、個人向けのカスタマイズ型医療機器を製作する技術が主に出願されている。

食品分野ではフード用3Dプリンティング装置を利用してチョコレート、ピザなど、顧客のニーズに合わせた料理を提供する技術が主に出願されている。

出願人の国籍別では、韓国人の出願が457件(42%)で外国人出願の634件(58%)に比べて、やや少ない件数であるが、外国人出願の場合、2013年38件から2018年130件に年平均で28%ずつ増加した反面、韓国人の出願は2013年9件から2018年124件に年平均で69%ずつ増加しているため、ここ数年間において韓国人の出願が急増していることが分かった。

韓国人出願の割合をみると、中小企業144件(32%)、大学119件(26%)、研究所92件(20%)、個人20件(25%)、大企業32件(7%)を占めている。

3Dプリンティング応用製品に関する韓国人の出願は、中小企業と大学・研究所からの出願が全体の78%を占めており、韓国国内の中小企業と大学・研究所を中心に3D3Dプリンティング応用技術の開発が活発に行われていると見て取れる。

3Dプリンティングの応用製品を多く出願している企業をみると、韓国の場合、韓国生産技術研究院(36件)、韓国機械研究院(13件)などの政府出捐研究所が、外国の場合、HP(25件)、Nike(22件)、Stratasys(20件)、Boeing(17件)、Siemens(13件)、GE(13件)などの大手多国籍企業が主要出願人となっている。

特許庁のスマート製造審査チームの審査官は、「3Dプリンティングは、金型を必要とせず3D設計データを用いて製品を作る技術である。そのため、カスタマイズ型の製品を多品種少量生産方式で製作でき、容易に高付加価値の機能性製品を作ることができるため、カスタマイズ型製品へのニーズが高まるとともに、3Dプリンティング応用製品に関する特許出願も増えていくと見込んでいる」とし、「韓国企業がグローバル市場をリードするために、医療および食品分野など、最近、特許出願が増加している技術分野を中心に技術開発を進めることで特許ポートフォリオを構築する必要がある」と強調した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195