知的財産ニュース K-バッテリー技術で、電気自動車の安全性を高める

2021年5月24日
出所: 韓国特許庁

バッテリー構造の安全性を強化する特許出願が活発

気候危機への対応とカーボンニュートラルに向けた取り組みの一環として、電気自動車の製造と使用がますます増えており、電気自動車の時代が近づいてきている。しかし、電気自動車バッテリーの爆発や火災によるニュースを頻繁に耳にするようになり、それについて懸念しているのも事実である。

韓国特許庁によると、電気自動車用バッテリーメーカーの電池構造(セル-モジュール-パック)(※)における安全関連の特許出願が活発であることが分かった。バッテリー構造の安全分野に対する特許出願件数は、2010年21件から2019年166件になり、年平均26%増加したと調査された。

※「バッテリー構造(セル-モジュール-パック)」

バッテリーセルは、電気エネルギーを充電・放電して使用できるバッテリーの基本単位であり、正極・負極・分離膜・電解液をアルミケースに入れて作る。
バッテリーモジュールは、バッテリーセルを外部からの衝撃や熱、振動などから保護するために複数のセルを組み合わせてフレームに入れたバッテリーの組立体を意味する。
バッテリーパックは、電気自動車に装着されるバッテリーの最終形態であり、バッテリーモジュールに冷却システムなどの各種制御および保護システムを搭載して完成する。

バッテリー構造における全体の特許出願のうち、安全分野における出願の割合は2010年以後60〜70%水準で、全体出願の過半数を占めている。

電気自動車の安全を重要視するようになり、バッテリー構造の安全性確保をパフォーマンスの改善より優先した結果であると思われる。

バッテリー構造(安全分野)における技術分野別の出願動向を見ると、バッテリーセル関連の出願が38.0%、モジュールが30.4%、パックが31.6%を占めている。バッテリー構成の要素であるセル、モジュール、パックの安全性はいずれも重要であり、特にバッテリーセルの構造が安全であれば、モジュール、パックを含むバッテリー全体の安全を保証できるため、それに対する出願が活発であると分析される。

バッテリー構造(安全分野)における細部技術別の出願動向を見ると、電極の連結と遮断に関する出願が48.1%、電極組立体の密封とシーリングが21.2%、冷却とガス排出が16.2%、保護回路とセルの膨張防止が14.4%を占めている。バッテリーの円滑な電極連結および過充電・過電流を遮断するための電気⋅保護関連の出願が55.6%で、全体出願の過半数を占めた。

バッテリーの安全分野における特許出願人の類型を見ると、韓国出願の場合、韓国のバッテリーメーカーの3社であるLGエネルギーソリューション、サムスンSDI、SKイノベーションが全体出願の約86.9%を占めている。トップ10の多出願人の場合、韓国と日本の企業がそれぞれ5:5のシェアを占めており、出願の割合はバッテリーメーカーの3社にサムスン電子と現代自動車を加えた韓国企業が日本企業より6倍以上高い。順位外の中国企業BYDは11件で、出願件数は少なかった。

一方、世界最大の電気自動車市場を持っている中国の国籍別出願動向を見ると、中国国籍の出願が49.9%、日本17.7%、韓国13.6%で、中国の出願が優勢であった。

しかし、トップ10の多出願人の場合、韓国メーカーの出願割合が39.3%で、中国メーカー(36.8%)と日本メーカー(18.2%)を上回っている。これは、韓国の主要バッテリーメーカーが中国の電気自動車市場に進出するために集中的に出願した結果であると考えられる。

特許庁の次世代エネルギー審査課の審査官は、「火災発生のおそれのない電気自動車の製造は、安全性が強化されたバッテリーの構造から始まる」とし、「ますます競争が激化する日中韓の3ヵ国に欧州まで加わる状況の中で、韓国が主導権を握るためには安全なバッテリー構造を確保し、特許ポートフォリオを多様化することでバッテリーの技術格差を広げる戦略を維持しなければならない」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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