知的財産ニュース 人工知能、モノのインターネット、バイオなどの特許申請・取得が、よりしやすくなる

2021年1月19日
出所: 韓国特許庁

「デジタル新産業分野の特許付与基準」を制定

  • 劇場を運営している甲は、ある日体験したヘルスケアのマッサージチェアに付いているユーザーカスタマイズ機能に着目し、ユーザーの身体情報により特殊効果の強度を制御する、モノのインターネット(IoT)基盤の劇場用4Dチェアを開発した。しかし、開発した4Dチェアは、マッサージチェアに比べるとサービス分野や用途は異なるが、その構成要素がほぼ類似しており、この4Dチェアで特許申請をしても特許を取得できるかどうかが分からない。
  • 大学で勤務している乙教授は、CRISPR遺伝子編集技術を活用して、病虫害に強く人に有益な抗酸化成分が含まれている改良リンゴ、いわゆる紫色リンゴを開発した。しかし乙教授は、すでに一般に知られている紫色トウモロコシに使用された遺伝子をリンゴに適用しただけで、その遺伝子の機能は広く知られているため、特許登録は受けることができないと判断して特許出願を諦めた。

今後、デジタル新産業分野における特許申請と取得がよりしやすくなる。

韓国特許庁は1月19日、デジタル新産業分野における韓国企業が国内外で高品質の特許を取得し、将来の成長エンジンを創出できるように支援するため、「デジタル新産業分野の特許付与基準」を制定したと発表した。

デジタル新産業分野における特許の付与基準が収録された審査実務ガイドは、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)サービス、バイオなどの5大主要分野に対しての融複合技術を中心にした特許可否の判断要件、明細書の記載要件および多様な事例が含まれている。

主な内容を見てみると、人工知能の分野では、新産業の特性により企業が問題点を提起していた高品質の特許を取得するための明細書作成に関する指針とともに、類型別で特許を付与する基準および具体的な判断事例などを提供している。

モノのインターネットサービスの分野では、企業の市場参入を奨励し、ICT融合・複合技術に従来の製造業に基づく特許の付与基準を適用していた不合理を解決するため、発明に対するサービス分野別の特性および効果を十分考慮するように基準を整備した。

また、種子産業の分野では、CRISPR遺伝子編集技術で改良した種子の場合、適用する作物を変えて新しい効果があれば特許で保護できるように、特許の付与基準を緩和し、出願人のために明細書の記載要領とベストプラクティスを提示している。

一方、バイオ分野では、これまで不明確だった人工知能に基づいた新薬開発における特許の付与基準を補完することで、企業が人工知能を利用してドラッグリポジショニング技術を開発する際に段階別に最適の特許出願戦略を策定できるように支援する。

今回の基準制定は、韓国政府が推進するデジタルニューディールに歩調を合わせ、これまで特許庁が推進してきた「産業別の特性を考えた、カスタマイズ型審査政策の確立」の延長線上にあるものである。

また最近、デジタル新産業の急激な拡大(※)に先制的に対応し、デジタル融合・複合技術に関連する特許出願について、より明確かつ具体的な特許付与基準の確立を求める産業界の要求に応えたものでもある。

※特に、人工知能の分野の場合、ここ5年間年平均55.1%の爆発的な特許出願の増加率を見せている(「第四次産業革命に関連する技術の特許統計集」、特許庁、2020年9月)

米国、欧州、日本など主要国も第四次産業革命の技術を保護するために、関連する技術分野の審査事例を既存の審査基準に追加する改正を行っているが、韓国は人工知能の分野などにおけるデジタル新産業別の特許付与基準を別途制定した。

デジタル新産業分野において特許を付与する基準は、現場の声を十分に反映するために多数の特許を出願した企業を中心に構成した産業界のIP協議体と随時に意見を交わす過程および大韓弁理士会・韓国知識財産協会などの外部専門家の綿密な検証過程を経て制定された。

当該の産業別に特許庁内のTFを構成し、約1年をかけて多様な新産業の融合・複合技術事例などを研究し、海外特許庁の審査基準も分析して韓国だけでなく海外でも良質の特許取得が可能になるようにガイドラインを提示している。

デジタル新産業分野の特許付与基準は、特許庁のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで配布しており、今後関連団体と一緒に説明会を開催する計画である。

それに加えて特許庁は2021年に、既存の5大主要分野の他に自律走行、知能型ロボット、化粧品など、これから成長する可能性の高いデジタル新産業分野を追加で発掘し、企業が必ず必要とするカスタマイズ型の特許付与基準を提供する予定である。

特許庁の特許審査企画局長は、「デジタル新産業分野の特許付与基準は、これまで特許庁が推進してきた『産業別のカスタマイズ型審査政策』における主要成果であり、今後、韓国の先端・デジタル技術を用いて国内・海外の特許を確保し、新市場をリードする尖兵の役割を果たすことで、最終的には国の産業競争力の強化に大きく貢献すると期待している」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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