知的財産ニュース 損害賠償額の現実化に向けた特許法の改正法を施行

2020年12月10日
出所: 韓国特許庁

損害額の算定方式を改善して3倍賠償制度の効果を最大化する見通し

中小ベンチャー・スタートアップが保有する革新的なアイデアの保護強化を期待

IP5の中で特許法上、唯一の特許侵害に対する損害賠償システムを構築

  • 特許権侵害に対する損害額の算定方式
‐(従来)特許権者の生産能力を超えない範囲での損害のみ賠償、結局は少額賠償になる(侵害者の利益>実際の損害賠償額)
→(改訂)生産能力の限度内での損害賠償+生産能力を超過する販売数量は合理的な実施料として追加賠償、(侵害者の利益<実際の損害賠償額)

韓国特許庁は、特許権者の生産能力を超える特許侵害者の製品販売も損害賠償させる特許法の一部改正法が12月10日(木曜)に実施されると発表した。

従来は、特許権者の製品の生産能力が100個である場合、侵害者が10,000個の侵害製品を市場に販売しても、特許権者は本人の生産能力(100個)を超える9,900個の製品に対するまともな損害賠償を受けることができなかった。

つまり、権利者の生産能力の範囲を限度に損害額を算定するため、正常的な使用許諾契約を締結することよりも権利を侵害するのが、むしろ利益になる不合理な状況が続いた。

特許法の一部改正法律が施行されれば、特許権者は、これまで損害賠償の対象ではなかった残りの9,900個についても、特許発明の合理的な実施料として計算して損害額に認められることができる。

※(現行)特許権者の生産能力の範囲×単位当たりの利益額
※※(改訂)(特許権者の生産能力の範囲×単位当たりの利益額)+(超過分×合理的な実施料率)

今回改正された算定方式は、米国、英国、フランスおよび日本などの主要先進国でも認められている方式である。ただし、世界の知的財産分野をリードするIP5(韓国、米国、欧州、中国、日本)の中で、改正した損害額の算定方法と3倍賠償を同時に特許法として明文化した国は、韓国が唯一である。

注目すべき点は、侵害者が販売した全ての侵害品について損害額の算定が可能となり、故意的な侵害の場合、最大3倍までの損害賠償責任が課されるという点である。これにより、悪意的、故意的に行われる大規模な侵害行為から特許権を強力に保護できると期待している。参考までに、同じ内容の商標法、デザイン保護法、不正競争防止法の一部改正案が12月1日に国会本会議を通過した。

特許庁の産業財産保護協力局長は、「特許法の一部改正法律の施行は、2019年から施行された3倍賠償制度とともに、本格的に民事的制裁が強化されるという点で意味がある」とし、「さらに訴訟過程における知財権侵害の損害賠償額を算定する際に、その実効性を高めるため、韓国型証拠収集手続きの導入を推進する計画」であり、「一部の半導体業界が懸念する事項について、関連業界などと幅広く疎通して補完策を設けるなど、韓国の事情に合わせた適切な制度になるように努力する」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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