知的財産ニュース 特許における「臨時明細書」制度、産業界で活発に利用

2020年11月24日
出所: 韓国特許庁

研究開発後に論文、研究ノートなどをそのまま提出し、特許出願日の迅速な確保に利用

特許出願をする際に「臨時明細書」を提出できる制度が2020年初に施行されて以来、企業側はそれを活発に利用していることが分かった。

「臨時明細書」とは、特許を受けるために技術内容を記載した書類である明細書を決まった出願書式に従わず、研究開発した後の論文や研究ノートなどの自由形式で作成して提出するものをいう。

臨時明細書を2020年3月30日から施行


  • 臨時明細書制度を施行する前には、特許出願の際に明細書を規定された書式に沿って提出しなければならなかったため、論文などの研究結果を明細書の形式に従って再作成することに時間がかかり、迅速な出願が難しいという意見が多かった。
    • 標準技術の特許確保が重要である電子・通信技術業界では、国際標準化会議が行われる途中に、リアルタイムで特許を出願するなど、迅速な出願戦略が必要であるにも関わらず、明細書作成に力を入れなければならず、非常に苦労していた。
    • 特許庁は3月30日に特許法・実用新案法の施行規則を改正し、特許および実用新案を出願する際に、臨時明細書を提出することができるよう制度を策定した。

韓国特許庁によると、制度を施行した後、2020年10月まで臨時明細書を提出した特許・実用新案の出願件数は計2,534件で、月平均で360件が提出されていることが分かった。

特に臨時明細書を多く利用している技術分野は、電気通信技術(21%)、電算・データ処理技術(14%)、医療技術(9%)など、新技術が多く出現する分野であり、出願人の類型別では大企業(39%)が中堅・中小企業(30%)および個人(20%)に比べて、より活発に利用している。

2020年1月から9月まで出願された全体の特許・実用新案(15万8,725件)の中で、中堅・中小企業の出願(24%)および個人の出願(21%)が大企業の出願(17%)より多いことに比べると、大企業が臨時明細書を積極的に利用していると解釈できる。

大企業の場合、外国語の技術資料をそのまま提出する目的で臨時明細書を主に利用していると見て取れる。

特許庁によると、大企業が提出した臨時明細書(979件)のうち、外国語の臨時明細書は53%(514件)を占めている。

韓国は、2015年から特許出願の際に外国語で作成された明細書も提出できるようにしているが、臨時明細書制度を活用すれば、外国語で作成された発表資料や論文もそのまま提出することができるため、R&Dの割合が高い企業や研究所などで、簡単に特許出願できるメリットがある。

特許庁の特許審査企画局長は、「速度の経済を強調するデジタル社会では、わずかな速度差が結果に大きな影響を与える。特許の場合、出願前に同じ技術が他の人により公開されると、特許を受けることができなくなるため、特許出願を先にするのが何より重要であるが、韓国企業が外国企業に比べて最大限速やかに特許を出願するために臨時明細書制度が役に立つと判断している」とし、「特許庁は今後もイノベーション企業の発明を迅速に権利化できる政策を確立し、新技術の保護に乗り出す」と述べた。

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