知的財産ニュース 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名、ASEANなどの15ヵ国で韓流便乗の根絶が期待できる!

2020年11月16日
出所: 韓国特許庁

・韓国製ではない製品に韓国国名を使用、原産地を誤認・混同させる行為の禁止→韓流に便乗する企業の営業活動を制限する。

・現地の商標ブローカーなどによる韓国企業商標の悪意的な出願に対する拒絶や登録の取消→商標の盗用被害を予防する。

韓国、ASEANの10ヵ国、オーストラリア、日本、中国、ニュージーランドの15ヵ国が第4回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳会議(2020年11月15日)で、RCEPに署名(注1)した。これにより、世界GDPの30%(26兆3,000億ドル)、世界人口の30%(22億6,000万人)、世界貿易規模の28.7%(5兆4,000億ドル)に相当する巨大市場に韓国企業の特許・商標・デザインを保護する知財権の保護基盤が設けられる。

ASEAN市場は韓国からの輸出割合が高い市場(注2)で、韓国企業にとって非常に重要である。今回のRCEP署名により、具体的な知的財産権の条項がASEAN市場に適用されれば、その地域に進出しているか、または進出する予定である韓国企業の知財権を効果的に保護できるようになると見込んでいる。

韓国とASEAN間のFTAは、2007年に発効された。しかし、同協定は、知財権分野の情報および経験の共有、知財権保護に対する意識向上などを宣言的に規定しているだけで、韓国企業の知財権を効果的に保護するには限界があった。

今回のRCEPでは商標、特許、デザインなどの分野別に計83個の条項が具体的に規定されることで、ASEAN地域での知財権保護が一層強化されると予想される。

[韓‐ASEAM FTAとRCEPの知財権条項比較]
韓‐ASEAN FTA RCEP
1条項 83条項
協力義務の付与、情報共有などの協力分野 商標(10)、特許(12)、デザイン(4)、
不正競争防止(4)、地理的表示(7)、執行(18)、
一般保護規定(9)、著作権(9)、
植物新品種(1)、その他(9)

主な内容は次のとおりである。

□(商標分野)現地で韓国企業の商標を先取りするのが目的である商標ブローカーなどの悪意的な出願を拒絶するか、または登録を取り消すことが可能になる。それにより、韓国企業の商標が盗用される事例は大きく減少すると期待される。

出願を電子的な方法で受け付けて処理できるシステムと大衆が出願・登録情報を検索・活用できるデータベースを構築する義務も付与された。

また、商標出願・登録を世界知的所有権機関(WIPO)の分類システムに基づいて処理するように義務付けることで、韓国企業がASEANなどの現地で国際分類システムを利用して簡単に商標を出願し、関連情報を容易に検索できる環境が整えられた。

□(不正競争分野)韓国製品でないにもかかわらず、韓国の国名を使用して原産地を誤認・混同させる行為が禁止される。それにより、これまでASEANなどで問題視されてきた韓流に便乗する企業の営業活動が大きく制限されると期待している。

現地で他人の商標と同一・類似のドメインを第3者が先取りした場合、それに対する適切な救済手段を設ける義務が与えられた。

□(特許分野)特許出願後に18ヵ月が経過すると、該当の特許出願を大衆に公開しなければならない。これにより、同制度を導入していない一部のASEAN諸国に韓国企業が特許出願した場合には、公開されないか、または公開時点が一定ではないという理由で第3者の類似特許が出願・登録された事例が大きく減る見込みである。

特許出願・登録を世界知的所有権機関の分類システムに基づいて処理するために努力しなければならないという義務が付与されることで、今後、同分類システムがASEANに導入できる基盤が構築された。

□(デザイン分野)物品を構成する各部分についても、デザイン権に出願・登録することができる制度(部分デザイン)を導入できる根拠が規定された。

デザイン出願・登録を世界知的所有権機関の分類システムに基づいて処理するために、努力しなければならないという義務が付与されることで、今後、同分類システムがASEANに導入できる基盤が構築された。

RCEPの署名により、各条項が2021年から各国家別の国会批准と発効(注3)手続きを経た後に、本格的に施行される予定である。

特許庁の産業財産保護協力局長は、「今回のRCEP署名を通じて韓国企業が活発に進出している、ASEAN市場に韓国と同じような知財権システムを構築するための一歩を踏み出すことができた」とし「今後、特許庁は、両国・多国間協力により韓国企業が必要とするRCEP条項がASEANなどで早速施行されるように積極的に取り組んでいきたい」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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