知的財産ニュース 商標法・デザイン保護法・不正競争防止法・特許法改正(2021年4月施行予定)

2020年9月25日
出所: 韓国特許庁

商標・デザインの侵害、アイデア奪取に対する3倍賠償制度の導入などの知的財産保護法が国会で可決

◆商標・デザイン権侵害およびアイデア奪取に対する3倍賠償制度を導入
<商標法・デザイン保護法:パク・ボムケ議員代表発議(2020年7月)、不正競争防止法:チェ・インホ議員代表発議(2020年6月)>
- 商標・デザイン侵害、アイデア奪取:故意的な侵害の場合、損害額の最大3倍まで賠償
- 商標・デザイン:ロイヤリティの算定基準を改正(「通常的」→「合理的」)
- 商標:法定損害賠償額の引き上げ(5,000万ウォン→1億ウォン、故意の場合3億ウォン)

◆特許侵害罪を親告罪から反意思不罰罪(被害者告訴不要)に変更
<特許法:イ・ジャンソブ議員代表発議(2020年7月)>
※特許侵害の刑事告訴期間(6ヵ月)に限らず、捜査機関が職権捜査して処罰することが可能

◆不正競争行為の是正勧告を不履行する際に是正勧告の事実を公表、不正競争防止・営業秘密保護に向けた実態調査の根拠を設けるなど
<チェ・インホ&ソン・ガブソク議員代表発議(2020年6月)>

韓国特許庁は、商標・デザイン侵害およびアイデア奪取において、「3倍賠償」を導入する「商標法」、「デザイン保護法」、「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下「不正競争防止法」)など、知的財産保護法律が9月24日(木曜)に国会の本会議で可決されたと発表した。

商標法・デザイン保護法の一部改正法律案は、故意に商標権やデザイン権を侵害した場合、損害として認められた金額の最大3倍まで賠償させる懲罰賠償制度の導入を骨子としている。2018年の特許法と不正競争防止法に導入された特許・営業秘密侵害に対する懲罰的損害賠償制度を商標とデザイン分野まで拡大するものである。

また、商標権とデザイン権が侵害される際に、ロイヤリティによる損害額算定基準を「通常的に受けることができる金額」から、「合理的に受けることができる金額」に改正した。従来の判例では、「通常的に受けることができる金額」を取引業界で一般に認められているロイヤリティで判断するため、実際の損害額を算定するには不十分であるという指摘があった。なお、日本でも同様の理由で、「通常」という単語を削除した後、ロイヤリティの認定料率が上昇(※)した。

※1998年、日本の特許法改正によるロイヤルティ率:(改正前)3~4.2%→(改正後)7〜10%

さらに、2011年商標法に導入された法定損害賠償制度の最高限度を5,000万ウォンから1億ウォン(故意的に侵害した場合には3億ウォン)に引き上げた。これは、制度を導入した以降、韓国国内での商品取引市場の拡大、物価上昇の要因などを考慮し、3倍賠償制度とともに商標権保護の実効性を高めるためのものである。

[法定損害賠償制度]

‣(概念)一般の損害賠償請求は、商標権者が侵害と損害額を証明しなければならないが、法定損害賠償は、侵害さえ立証できれば、法院が法定額以内で損害額を算定することができる制度であり、商標権者の立証責任を減らす
‣(必要性)懲罰賠償制度の導入とともに、損害賠償額の上限も一緒に引き上げ、商標権侵害に対する損害賠償額の適正化を図る

アイデア奪取行為による損害として認められた金額の最大3倍まで賠償させる懲罰賠償制度の導入、不正競争行為における是正勧告の事実を公表するなどの内容を骨子とする不正競争防止法の一部改正法律案も可決された。アイデア奪取行為により、中小企業などの被害が深刻化するにつれ、既存の営業秘密の侵害行為に導入された懲罰賠償をアイデア奪取行為にも適用することになった。また、不正競争行為に対する是正勧告に従わない場合には、違反事実を公表することができるようにし、行政調査および是正勧告の実効性を高めた。

それとともに、不正競争行為に対する行政調査の実施中に当事者が発明振興法上の産業財産権紛争調停委員会に紛争調停を申請した場合には、行政調査を中止し、紛争の調停が成立した場合には、行政調査を終結して早期に紛争を解決できるようにした。そして、不正競争防止および営業秘密に対する実態調査、基本計画および施行計画の確立に対する法律的な根拠が新たに設けられた。

被害者の告訴がなくても、特許権の侵害行為を処罰することができる特許法の一部改正法律案も可決された。特許権者の告訴があってこそ、侵害捜査が可能な「親告罪」を特許権者の告訴がなくても職権捜査が可能な「反意思不罰罪」に改正し、特許権の保護を一層強化した。今後、特許権者は、告訴期間(6ヵ月)に限らず、刑事告訴をすることができるようになった。

※反意思不罰罪:権利者が侵害者の処罰を求めない場合、起訴不可

これまで知的財産の侵害が根絶されなかった理由について、知的財産に相応の価格を支払うより侵害行為から得られる利益がさらに大きいためであるという指摘が多かった。知的財産の保護の実効性を強化するため、特許侵害に先行導入された「懲罰賠償」制度を商標およびデザイン侵害、アイデア奪取行為にまで、あらゆる方面で適用すれば、韓国の知的財産全般に対する保護レベルが一層高まると予想される。

特許庁長は、「今回の改正で知的財産権侵害対する厳正な法執行が可能になることによって、これから知的財産が市場で適正な価格で公正に取引される土台が整えられた」とし、「今回の改正を後押しできるよう、特許法に先行導入された『損害算定方式の改善』はもちろん、「中小企業における特許保護の証拠収集制度の導入」も速やかに推進していきたい」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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