知的財産ニュース 特許庁、第四次産業革命に関連する技術の特許統計集を発刊

2020年9月17日
出所: 韓国特許庁

人工知能分野の特許出願、10年間で16倍増加!

- 特許庁、第四次産業革命に関連する技術の特許統計集を新設
- デジタル経済への転換および非対面産業で加速化、特許でも確認
- 人工知能、デジタルヘルスケア、自律走行分野が特許急増をけん引 
- 新型コロナ時代、世界的なデジタル・非対面に関連する特許確保競争が激しくなると予想

[統計集発刊]

韓国特許庁は、第四次産業革命に関連する技術分野の出願統計をまとめた特許統計集を発刊すると発表した。

この統計集には、第四次産業革命時代に備えるため、2019年11月に新設された融合複合技術審査局が所管する8種の単一技術と7種の融合複合技術分野における過去10年間の出願統計情報が盛り込まれている。

※(単一技術分野)人工知能(AI)、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、バイオマーカー、デジタルヘルスケア、インテリジェントロボット、自律走行、3Dプリンティング

※(融合複合技術分野)AI-ビッグデータ、AI-モノのインターネット、AI-ヘルスケア、AI-インテリジェントロボット、AI-自律走行、ビッグデータ-ヘルスケア、インテリジェントロボット-自律走行

その他、第四次産業革命に関連する技術の説明、各技術分野と特許分類との対応関係、韓国・米国の特許出願現況および多出願人の情報などが含まれており、第四次産業革命に関連する技術の特許情報を一目で確認できるように構成されている。

[統計分析]

[主要統計]
◦特許出願の推移 
・全体:韓国(2010年)18万3,762件→(2019年)22万4,422件/米国(2010年)49万226件→(2017年)60万6,956件
・第四次産業技術:韓国(2010年)5,874件→(2019年)1万7,446件/米国(2010年)1万6,436件→(2017年)4万3,529件
・第四次産業の割合:韓国(2010年)3.20%→(2019年)7.77%/米国(2010年)3.35%→(2017年)7.17%

◦単一技術のうち、人工知能技術分野の出願推移
・韓国:(2010年)240件→(2019年)4,011件/米国:(2010年)1,887件→(2017年)1万252件

◦融合複合技術のうち、人工知能-モノのインターネット技術分野の出願推移
・韓国:(2010年)18件→(2019年)286件/米国:(2010年)114件→(2017年)656件

また、統計によると、韓国国内における第四次産業革命に関連する技術の全体出願は、2010年5,874件から2019年1万7,446件で、過去10年間、年平均12.9%の出願増加率を示した。

全体の特許出願に比べて、第四次産業革命に関連する技術の割合は、2010年3.2%から2019年7.77%と、10年で2倍以上増加した。

全体的には、人工知能、デジタルヘルスケアおよび自律走行の技術分野が第四次産業革命に関連する技術の出願をリードしていることが分かった。

技術分野 主要特徴 年平均増加率
(2010年から2019年、%)
人工知能 ■AIの話題が社会全体に広がり、全領域におけるR&D投資が集中
■言語障壁がなく、産業現場での活用可能性が高い視覚的知能技術が出願をリード
36.7
ビッグデータ ■スマート機器が速い速度で拡散し、IoT技術の発達により膨大な量のデータを生成
■政治、経済、社会、医療など、あらゆる分野でビッグデータ技術を活用
14.4
モノのインターネット ■人間中心のネットワークからモノ中心のIoTにパラダイム転換
■初期のモノとモノ間アクセスから、AIが結合されて意思決定が可能になったAIoTに進化
7.4
バイオ
マーカー
■癌などの病気の診断・治療薬開発のための中核技術
■新型コロナによるパンデミック状況の中でウイルス診断分野の出願が増加すると予測
7.9
デジタルヘルスケア ■測定装置の小型化とバッテリー技術の発展、またAIを活用した診断技術の発達により、ウェアラブルと生体計測機器分野の出願が活発 11.7
インテリジェントロボット ■AI・IoT技術が適用されたサービスロボット技術の出願が増加
■最近、素材・部品・設備の話題と相まって、ロボット部品の国産化が進行中
9.5
自律走行 ■周辺環境認識技術の分野でAI・IoTが融合された高度道路交通システム(ITS、Intelligent Transport System)分野に技術の中心が移動 8.2
3Dプリンティング ■米国のオバマ政権がその重要性を認めてから、R&Dなどの投資増加
■政府がスマート製造革新企画団を設立し、1,2次3Dプリンティング産業の振興計画などを推進
-(※)

※他技術と総合的に比較した結果、年平均増加率の算出が不適切であると判断(統計歪曲の可能性)

第四次産業革命に関連する技術の代表格である「人工知能」技術分野は、ここ10年間36.7%という爆発的な年平均増加率を示しており、これは、ほぼ同時期に米国の出願増加率である27.4%よりも高い数値である。

特に、2016年以降の年平均増加率(55.1%)が以前(23.6%)より2倍以上増加したのは、イ・セドル9段とアルファ碁との囲碁対局などで、AIの話題が社会全体に広がり、政府と民間のR&D投資が集中的に行われた結果であると判断している。

詳細な技術としては、医療・自律走行・製造工程などに活用されている視覚的知能(※)を実装した技術分野の出願が最も多かったが、どの国でも言語障壁なく使用することができ、産業現場ですぐに適用することができるため、技術開発が活発に行われたと把握される。

※視覚的知能:写真、映像で対象を認識するなど、視覚的データを処理する技術

これまで、多くの自動化研究が進んできた「自律走行」の技術分野は、AIおよびIoT技術と結合し、韓国と米国の両国で自動化から知能化への技術の進歩が行われており、単なる車両の走行技術から脱して高度道路交通システム(ITS、Intelligent Transport System)(※)による最適な移動サービスを提供する技術に、その中心がシフトしていると思われる。

※次世代交通システムで、公共交通機関のオペレーティングシステムに対するインテリジェント制御、交通情報検知、交通状況分析、交通情報を運転者に提供する機能などを通じて、インテリジェント移動サービスを提供する技術

「デジタルヘルスケア」技術分野では、韓国・米国の両国で計測装置の小型化とバッテリー技術の発展、そして個人の健康管理への関心が高まっているため、それと伴ってウェアラブル(※)などの生体計測機器分野の出願が活発であり、IBM社の「Watson」および韓国の「ドクターアンサー(Dr.Answer)」のようにAIを活用して、医師の判断に役立つ診断関連技術の出願も急激に増加していることが分かった。

※手首など、人の体に着用するタイプの生体計測機器

融合複合技術分野の中で、「人工知能(AI)- モノのインターネット(IoT)」分野では、従来のIoT(Internet of Things)技術がモノとモノとの間のアクセス技術にとどまっていたところ、最近では、モノとモノとの間のアクセスをもとにAIが意思決定をするAIoT(Artificial Intelligence of Things)(※)へ進化する傾向を見せている。

※(事例)脳卒中予測機器、既存のIoT技術では、センサーを通じて脳波などを計測した後、データのみを送信したが、AIoT技術は、計測したデータをAIで、脳卒中であるかどうかまで正確に判断する機能までを含む

世界で最も大きい最先端市場である米国でも、韓国と同じ傾向を見せており、デジタル経済へ転換する時代に世界中の企業が米国およびグローバル市場での競争優位を勝ち取るため、第四次産業革命に関連する技術分野の特許確保に向けた激しい競争を繰り広げていると判断される。

[総評]

ここ10年間、韓国の産業構造がAI・IoTなどデジタル関連産業に急速に転換されていることが今回の統計でも確認されており、このような傾向は、新型コロナ時代を迎えて、さらに加速化すると判断できる。

このような統計結果は、政府と民間が第四次産業革命に積極的に対応するための果敢な投資をした結果であると見られ、特に、最近5年間102兆ウォンを超える国家R&D予算(※)と大学および政府研究機関の研究戦略が国の産業構造をポジティブな方向へと変化させていると、今回の特許分析から確認するきっかけとなった。

※(2016年)19兆ウォン→(2017年)19兆3,000億ウォン→(2018年)19兆8,000億ウォン→(2019年)20兆6,000億ウォン→(2020年)24兆ウォン

特許庁もこのようなトレンドに合わせて知的財産の創出・保護・活用の好循環構造をさらに強固に構築していかなければならない。特に、より加速化していく異なる技術の融合・複合化に備えて3人協議審査を強化する予定であり、AI、IoT、バイオなどの基本技術分野は2020年、そして自律走行、インテリジェントロボットなどのAI応用技術分野は、2021年に新たな審査基準を確立する方針である。

今回の統計集は政府、公共機関、国会など500余りの機関に配布され、誰でも簡単に利用できるように、特許庁のウェブサイトでも、電子ファイルを提供する予定である。

特許庁長は、「今回の統計集が、新型コロナウイルスをきっかけに急激に加速化している非対面・デジタル社会に備えることができるよう、韓国版ニューディール政策の推進とデジタルエコシステムの育成に重要な基礎資料として活用されることを期待している」とし、「全世界がデジタル経済に転換している中、企業が関連分野の中核特許を確保することが何よりも重要であり、特許庁は、韓国企業における知的財産権の競争力強化のため、継続的に支援政策を推進していく」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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