知的財産ニュース 特許庁、「2020年度業務計画」を発表

2020年3月11日
出所: 韓国特許庁

誰でも知的財産に直接投資する新IP投資市場を創出

韓国特許庁は3月11日(水曜)、知的財産で新たな産業・経済的価値を創出するための、「2020年度業務計画」を発表した。

今回の業務計画は、2019年の成果に至らなかった点に対する反省をもとに、知的財産市場を本格的に展開するための計画を含んでいる。

1.2019年度の主要推進成果

・(主要成果)2019年には、日本の対韓輸出規制という国家的危機を克服し、技術自立を達成するための特許庁の役割が目立った。

‐ 輸出規制の3大品目に対する速やかなIP-R&Dにより、中核・代替技術の確保および特許回避の設計方法を提示して技術国産化を支援し、特許ビッグデータ分析を通じて産業分野別に有望な技術を発掘し、政府の産業政策とR&D事業に反映するなど、有意義な成果が得られた。

※日本の3大輸出規制素材および中核品目(20+α)の35課題における迅速なIP -R&Dの支援

・(バイオヘルス)「ゲノム分析基盤の精密医療サービス」の場合、主要国のなかで韓国出願のみ大幅に減少する異常信号を発見 → 規制が産業発展を阻害している状況
・(次世代電池)「リチウムイオン二次電池」分野における中国の出願件数が急増し、2021年に韓国を逆転すると予想 → 特許分析で全固体電池など、将来の有望な電池分野を発掘

・知的財産市場分野でも、IP投資・融資支援を大幅に拡大した結果、「IP金融1兆ウォン(※)時代」を切り開き、特許共済事業を成功裏に立ち上げる(※※)など、知的財産市場の活性化に向けた礎を築いた。

※IP金融規模:(2017年)6,871億ウォン→(2018年)7,632億ウォン→(2019年)13,504億ウォン
※※事業開始(2019年8月)約2ヵ月ぶりに年間目標(1,040社)突破(2019年1,409社)

‐ さらに故意的な特許侵害の際、3倍賠償制度を施行(2019年7月)し、知的財産の保護への新しい道を開き、韓流に便乗する企業、商標ブローカーなどといったK-ブランド侵害にも積極的に対応するとともに、五庁長官会合(IP5)(2019年6月、韓国松島)および韓-ASEAN特許庁長会合(2019年11月、韓国釜山)の開催、UAE・サウジアラビアへ特許行政サービスを輸出するなど、グローバル協力と新韓国型知的財産環境づくりのために努力してきた。

・国民の立場に立った高品質な審査のために、開庁して以来、初めて融合複合技術審査局を新設するなど、審査インフラも拡充した。

・(改善すべき点)IP担保融資など初期段階であるIP金融は、ある程度は形を整えてきているが、本格的な知的財産投資への拡散はまだわずかであり、損害賠償額の実質化に向けた法律案改正が不発に終わったことにより、まだ真の知的財産保護の時代を迎えてはいない。

2. 主要推進課題

・2020年度には、
1)特許ビッグデータの活用を産業全般に拡大
2)知的財産に直接投資する新IP金融投資市場を開拓
3)真の知的財産保護に向けた法令整備
4)スタートアップのクリエイティブなアイデアを保護する制度の新設など産業革新支援に集中し、
知的財産市場の花が満開するよう取り組んでいきます。

ア.知的財産で国家技術競争力を強化する

(1)特許基盤の研究開発(IP-R&D)を行い、技術自立の方向を提示する。

‐ 日本の対韓輸出規制の中核品目に関わるR&D(500課題)に、IP-R&Dを全面的に実施し、一定規模以上の素材・部品・設備のR&Dに対するIP-R&Dの制度化を推進する。

‐ それとともに「特許戦略の拡散支援センター」を運営し、企業自らのIP-R&D遂行に向けたソリューション開発・教育などへの支援を強化する。

(2)政府・民間のR&Dに4億3,000万件の特許ビッグデータの活用を拡大する。

‐ 関係部処と協力し、企画・R&D・管理など政府が行うR&Dの全過程に特許ビッグデータを活用する体系を構築する。

‐ また、「国家特許ビッグデータセンター」を設置し、政府・民間のニーズに合わせた分析結果を随時提供する。それにより、業界別の有望技術を発掘(※)し、感染性疾患など社会懸案に対する技術的な解決策も提示する。

※(2020年)5大産業分野分析→(2022年)27大産業分野に拡大

(3)産業トレンドと技術発展の方向を分析して、審査品質を向上する。

‐ スタートアップの事業に必ず必要とするクリエイティブな発明・アイデアを権利として速やかに保護するために、特許とは異なる新たな制度を導入する。

※特許取得が難しい小発明・アイデアを保護するために、実用新案制度の全面改編

‐ 審査チーム単位で産業・特許動向を分析して審査政策(※)を確立し、 産業イノベーションを支援するために、1)Free-Type出願サービスの実施、2)特許一部分割出願制度、3)商標部分拒絶制度の導入(※※)などの制度を改善する。

※(例)特許技術の水準、商標トレンド分析などに従って審査基準を柔軟に適用
※※1)出願日先取りのための論文・研究ノートなどを形式の制限なしに、そのまま出願
2)審判の審決後訴えの提起期間内の登録可能な部分だけを選別・出願
3)商標出願時指定商品のうち、拒絶理由がない商品のみ先に登録

‐ 融合複合技術の3名での協議審査の拡大、難易度の高い技術・事件種類別の専門担当の審判部を指定するなど、審査・審判の品質を高め、AI画像検索(※)・機械翻訳などの人工知能を審査に積極的に活用する。

※ AIが図形商標およびキャラクター画像の特徴を学習し、類似度の高い先行画像を検索

イ.新しい経済的価値を創出する知的財産の市場を造成する。

(4)知的財産を投資資産とする、新しいIP金融投資市場を開拓する。

‐ 民間公募型のIP投資ファンドやIPクラウドファンドなど、投資家の投資スタイルに合った新しい形態のIP直接投資ファンドの組成を支援し、民間資本の冒険投資を誘導するために、2020年に2,200億ウォンのファンド・オブ・ファンズを造成して、IP直接投資ファンドへの支援などに活用する。また、専門知識を持ったIPサービス企業が収益化を代行するIP信託業の新設、知的財産金融センターの設置など、民間IP投資インフラも強化する。

‐ さらに、回収専門機関(※)の発足、IP担保融資の取扱銀行の拡大、ベンチャー企業向けIPファンドの組成(2,200億ウォン)など、IP基盤の資金調達支援を強化し、民間IP取引機関の信頼性・自立力を高めてIP取引市場を活性化することができるよう、「官民協力型知的財産取引プラットフォーム」を構築する。

※銀行の担保回収リスクを軽減するために、債務不履行の際には担保IPを買取・収益化

(5)知的財産保護体系を強固にし、侵害と不当利用を根絶する。

‐ 3倍賠償制度を商標・デザイン侵害に拡大し、権利者の生産能力を超える損害についても賠償を受けられるよう損害賠償額を現実化する。さらに、侵害発生の際には権利者立証の負担を軽減し、紛争を早期終結するために「韓国型ディスカバリー」制度を導入する。

‐ 不正競争行為での職権調査を拡大して技術奪取に積極的に対応し、K-POPなど韓流エンターテイメントの知的財産保護活動(※)を強化しつつ、商標使用料の騙取などのような知的財産を不当に利用する慣行を防止するために制度的な改善方策を設ける。

※協会・エンターテインメント会社のIPに対する認識向上、偽造商品の合同取り締まり・指導および企画捜査など

(6)誰でも知的財産で創業できる段階別の支援体系を構築する。

‐ 特許審査官、市場専門家がイノベーション的な特許のスタートアップを発掘し、官民協業によるスタートアップ保育(インキュベーター)、投資誘致機会などを提供し(約100件)、創業(IPディディムドル(礎)、930件)・成長(IPナレ(翼)、643社)・苦情解決(IP即時支援、ウリ産業団地特許チーム)などの段階別の支援体系を構築する。

‐ IP基盤の創業を支える、IPサービス業を育成するために、ビジネスモデル・コンサルティングおよびIPサービスの開発を支援(IPサービスR&D、10課題)する。

ウ.知的財産により韓国の輸出企業保護を強化する。

(7)韓国輸出企業のための海外知的財産保護体系を高度化する。

‐ 韓流関連の侵害が多く、知財権保護レベルが低いフィリピンにIP-DESKを新設し、政府間知財権保護協議体(※)を拡大・定例化する。

※(2019年)韓-越→(2020年)韓-泰、韓-印尼など

‐ 中国・ASEANなどでの侵害行為モニタリング(※)を強化し、「海外K-ブランド侵害申告センター」を設置して被害届および対応を支援する。

※(偽造商品)東南アジアの電子商取引業者と協力し、偽造商品の掲示物を削除
(商標無断先取り)中国(月2回)、ベトナム・タイ(隔月)に対するモニタリング対象・頻度の拡大
(韓流便乗企業)店舗・営業形態のモニタリング(年2回)後、被害企業の共同対応を支援

(8)グローバル市場進出に向けた海外特許確保を積極的に支援する。

‐ 中小・ベンチャー企業の海外特許に対する費用負担を軽減するために、IPプロジェクト投資など、IPファンドを拡大(※)して特許バウチャーの規模も拡大する。

※ IPプロジェクト投資ファンド:(2019年)125億ウォン→(2020年)200億ウォン
IP創出・保護費用義務割当の対象のファンド:(2019年)450億ウォン→(2020年)2,200億ウォン

‐ 知的財産競争力を持つ有望な輸出中小企業のなかで、「グローバルIPスター企業」を選定して3年間知的財産総合サービスを支援し、グローバルヒット商品を創出するためにブランド・デザイン・特許融合戦略および海外進出に特化されたIP-R&Dを支援する。(21課題)

※グローバルIPスター企業育成:(2019年)570社→(2020年)、700社

(9)韓国企業に友好的なグローバル知的財産環境を造成する。

‐ 新南方国家、中東など新興国を対象にしたIPコンサルティング、特許行政情報システムの構築、審査官教育などを行い、韓国型知的財産システムを拡散し、速やかな海外特許取得ができるよう特許効力認定協力(※)も積極的に推進する。

※韓国で登録した特許は、当該国で別途審査をせずに、すぐ登録する制度:(2019年)カンボジア→(2020年)ラオス、ブルネイ→(2021年)その他のASEAN

‐ 先進国とともに特許共同審査、第四次産業革命分野の審査基準の国際調和などを通じて共助を強化しながら、商標・デザイン分野の国際会議(※)を開催してグローバル懸案に対する議論をリードする。

※日韓商標専門家会合および高官会合(3月)、中・日・韓デザインフォーラム(10月)

3.期待効果

‐ 今回の業務計画に基づき、全ての政策能力を結集すると、

・政府および民間のR&Dに特許ビッグデータを積極的に活用することにより、R&Dの効率を高めて国家技術競争力を効果的に強化し、
・知的財産が新たな金融投資対象として浮上することにより、市場の流動資金が知的財産を通じて、産業界に流入され、新しい経済的価値と雇用を創出することになると期待しており、
・海外特許確保および海外知的財産保護を強化し、知的財産で武装した韓国輸出企業のグローバル市場への進出が、より活性化すると期待している。

‐ 特許庁長は、「2019年は、知的財産市場の活性化に向けて礎を築いた年であり、2020年は知的財産生態系のイノベーションを通じて知的財産の産業・経済的価値を最大化する一年になる」とし、「新型コロナウイルスなどのため不安な経済状況が続いているが、知的財産からイノベーション成長の道を探し、IP金融投資など新知的財産市場を推進エンジンにして、韓国がグローバル技術大国に飛躍できるよう最善を尽くしていく」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
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