知的財産ニュース 家畜伝染病の対応に向けた診断技術に関する特許出願が増加

2019年10月14日
出所: 韓国特許庁

9月17日、韓国で初めてアフリカ豚コレラ(ASF)(※)が発生し、家畜伝染病に対する国民の関心と懸念が高まっている。特に、アフリカ豚コレラは治療薬やワクチンの開発がいまだに進められておらず、拡散を防ぐために防疫と迅速な診断が求められる状況である。

※アフリカ豚コレラ(African Swine Fever、ASF)は、ウイルス性出血性豚伝染病のことで、人や他の動物は感染せず豚系(Swine)の動物にだけ感染するが、その致死率が100%に至る。現在は治療薬やワクチンがなく、家畜伝染病予防法上の第一種に指定し管理している。(農林畜産検疫本部)

特許庁によると、主要家畜伝染病(※)の診断技術に関する特許出願の件数が、2000年の6件から2018年には24件と、着実に増加していることが明らかになった。

※家畜伝染病予防法上の第一種として指定された15法定伝染病の中、韓国内で発生した口蹄疫、豚コレラ、高病原性鳥インフルエンザなど3種類の家畜伝染病を対象とする。

特に、全体の特許出願の中、家畜伝染病の発病可否を速やかに診断するための技術に関する出願件数が増えている。これは家畜伝染病の対応において、疑似患畜の発病可否を速やかに診断することは最も重要であり、これに対する研究開発の拡大に起因しているものと判断される。

家畜伝染病を診断する技術は大きく(1)症状検査や解剖などの臨床病理学的な診断、(2)体液に含まれている抗原や抗体を検出する免疫化学的な診断、(3)体液や組織に含まれているウイルスや抗原のDNAを分析する分子診断などに分けられる。この中、免疫化学的診断は抗原-抗体キットを利用しており、比較的簡単であるが正確度が低い反面、分子診断はDNA分析を利用しており、正確度は高いが検査が複雑であるため、正確な診断が必要な場合には、二つの方法をともに使っている。そのため、技術別出願では免役化学的および分子診断技術が(※)、全体出願件数の90.3%程度と、相当な部分を占めている。

※家畜伝染病診断に関する出願の中、特許分類(CPC)のG01N以下は「免疫化学的診断」、C12N、C12Q以下は「分子診断」として分類。

家畜伝染病の診断に関する出願を伝染病の種類別にみると、過去10年を5年単位にして、2009年から2013年には、鳥インフルエンザ診断に関する出願の割合が最も高い一方、2014年から2018年には、豚コレラに関する出願の割合がさらに高いことが分かる。2006年から2011年までは鳥インフルエンザが主に発生していて、最近は豚コレラがアジア諸国で広がっており、特に、ワクチンや治療薬がなく、疑似患畜の迅速な診断が必要だということが、出願の割合が増加した主な原因とみられる。

最近10年間の出願人では、内国人による出願の割合が60%ほどで、全体平均の77.9%(※)より低い技術分野であることが分かった。内国人を出願人別にみると、政府機関(47%)、学研(36%)、企業(17%)の順であり、検疫部署といった現場の必要性により、研究開発が進められていることが分かる。一方、内国人による出願の中で海外でも出願されたのは3.7%程度だけで、グローバル知財権の確保に対する努力が不足していることが明らかになっているが、その理由は、技術事業化に繋げられていない初期研究段階の出願が多いためとみられる。

※2018年の全体の特許出願件数21万6,224件の中、内国人の出願は77.9%、外国人の出願は22.1%である。

特許庁計測分析審査チーム長は「アフリカ豚コレラなどの家畜伝染病は、迅速な診断を通じて拡散を防ぐことが、ワクチンが開発されていない現在の最善の方法である」としつつ、「韓国の家畜伝染病の現場診断分野の技術は初期成長段階であり、重要技術の確保を通じて韓国内外の知財権を先取りし、製品の商用化に向けて政府と業界が努力しなければならない」と強調した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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