知的財産ニュース 特許庁、素材・部品・設備技術の早期確保向けのIP-R&D強化策を発表

2019年11月21日
出所: 韓国特許庁

素材・部品・設備分野にIP-R&Dを全面的に拡大

(1)素材・部品・設備の中核品目に関わる課題に、R&DとIP-R&Dをパッケージで支援
(2)IP-R&Dでスタートアップの技術価値を高め、民間投資、R&Dに連携
(3)政府・民間にIP-R&D拡散基盤を構築

「特許基盤の研究開発(IP-R&D)」を通して、素材・部品・設備の中核技術を早期に確保するための方策が本格的に進められる。

特許庁は、今年8月に発表した政府の輸出規制対策(※)および「知的財産基盤の技術自立および産業競争力の強化に関する対策(11月14日)」の詳細な推進計画として、「素材・部品・設備技術の早期確保向けのIP-R&D強化策」を11月20日の「第2次素材・部品・設備の競争力委員会(経済副総理主宰)」にて、関係部処合同で発表した。

※素材・部品・設備競争力強化対策(8月5日)、素材・部品・設備の研究開発への投資戦略およびイノベーション対策(8月28日)

推進背景

今年7月の日本による3大素材の輸出規制で分かるように、韓国の主力産業の中核素材・部品は、依然として日本への依存度が高い。

さらに素材・部品分野では、日本などの外国が特許を先取りしており、特許障壁を乗り越え、代替技術を開発するためには綿密な特許分析が先行されなければならない。

過去には、R&Dにおいての特許が単純にR&Dの結果物であった反面、現在はR&Dパラダイムを、特許がR&Dの出発点で、道しるべの役割を担うようにするR&D方式、すなわち、IP-R&Dに転換しなければならないということである。

競争会社の技術開発の現状、産業の動向などを把握できる有用な技術資料(※)である特許を基に、研究開発戦略を策定することで、素材・部品に関するR&Dの効率性を大幅に向上させることができる。

※現存する最新技術の約80%は、特許文献にのみ公開されている(「why researchers should care about patents」、欧州特許庁(2006))

重点的推進課題

今回の強化対策は、(1)素材・部品・設備分野にR&DとIP-R&Dのパッケージ支援を全面的に拡大、(2)素材・部品・設備企業に対し、成長段階別にカスタマイズ型IP-R&Dを支援、(3)産・学・研のIP-R&D拡散基盤強化など、3大推進課題となっている。

第1課題は、素材・部品・設備における中核品目の政府R&D課題全体に、R&DとIP-R&D戦略をパッケージで支援する。

2020年主要部処の素材・部品・設備の中核品目に対するIP-R&D支援計画(案)

R&D部処 素材・部品・設備の中核品目に対するR&D事業 IP-R&D支援計画(案)
(R&D課題数)
産業通商資源部 素材部品の技術開発(戦略中核素材の自立化技術の開発) 200件前後
中小ベンチャー
企業部
技術イノベーション開発、購買条件付き技術開発など 280件前後
科学技術情報通信部 未来素材のディスカバリー、ナノ未来素材の源泉技術の開発 20件前後

IP-R&Dを通じて、各R&D課題に、i)従来の特許を勘案した代替技術の開発戦略、ii)先導企業の中核技術の把握による最適なR&D方向、iii)特許分析による海外業者M&Aなど、代案の技術確保方策を提供し、韓国の産・学・研の迅速な技術開発を支援する予定である。

R&D課題のみならず、産業および中核品目単位の特許分析も進める。1)素材・部品・設備産業分野の特許ビッグデータの分析で有望な技術と中長期的な投資戦略を導出し、関係部処に提供すると同時に、2)中核品目別に主要国・競争会社の特許動向を調査し、定期的に業界に提供する計画である。

第2課題は、素材・部品・設備のスタートアップおよび中小企業の成長段階別に、カスタマイズ型IP-R&D戦略を支援する。

まず、素材・部品・設備のスタートアップについては、「バリューアップ(Value-up)IP-R&D(※)」を通じて、保有技術の価値を高め、民間投資とR&Dへの連携を支援する(年20件)。

※ Value-up IP-R&D:特許分析機関、特許戦略専門家(PM)と価値評価機関が共に、IP-R&Dに参加し、技術(企業)価値の向上に向けた技術補完と特許ポートフォリオの確保戦略を提示

特許庁と中小ベンチャー企業部が有望なスタートアップを共同選定し、特許庁IP-R&D戦略と中小ベンチャー企業部R&Dなどを一括支援する(年30件)。

素材・部品・設備の中小企業にも、特許文献から素材組成物のDBなど、多様な情報(※)を選定し、中核品目別企業群に提供すると共に、海外市場別の知的財産権確保戦略および知的財産権融合戦略も支援する。

※中核品目別企業群IP-R&D支援による共通中核技術の情報提供の類型
用途 特許文献から導出できる共通中核技術の情報
研究開発(R&D) 1)素材造成物の情報(成分、配合割合、物性パラメータなど)、
2)製品設計などに自由に活用できる消滅特許(満了特許・未登録特許)の情報
生産活動 特許文献の素材・部品などの3)製造工程に関する情報
輸入の多辺化、
M&Aなど
全世界における4)中核特許技術の保有企業・機関の情報、
5)重要発明者の情報など

最後に、優秀な特許の保有企業に対する金融・投資および事業化支援を強化するために、特許庁が素材・部品・設備に関わる優秀な特許の保有企業とIP-R&D支援企業の情報を提供し、IP-R&D支援で優秀な特許を確保した企業には、中小ベンチャー企業部などの事業化資金まで支援する計画である。

第3課題に、特許庁などの直接支援なしにも、政府・民間でIP-R&Dを内在化していくよう、IP-R&D拡散の基盤を整える。

まず、特許庁とR&D部処に「IP-R&D実務協議会」を運営し、各部処別にIP-R&D支援計画を策定し、方法論も共有・拡散する。

また、中小企業などの産・学・研がいつでもIP-R&Dの実行方法についてのアドバイスを(オンラインまたはオフライン)受けることができるよう、特許戦略開発院内に「特許戦略拡散支援センター」を運営する。

産・学・研がより簡単にIP-R&Dを独自に実行することができる、カスタマイズ型特許分析ソリューションの開発を支援する一方、専門人材など必須要件を備えた特許分析会社をIP-R&D専門分析機関として育成する方針である。

また、知的財産先導大学など様々な機関との協業を通じて、IP-R&D実務人材を体系的に育成するための教育プログラムも拡大する。

特許庁長は、「IP-R&Dは研究開発を成功に導く地図であると同時に、羅針盤でもある。試行錯誤を減らし、早期に代替技術を確保するためにはIP-R&Dが必須である」と強調しつつ、「素材・部品・設備の競争力を向上させるために、関係部処との緊密な協力で今回の強化対策を履行し、政府・民間のR&DにIP-R&Dを拡散していきたい」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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