知的財産ニュース 高齢者の生活支援技術に関する特許出願が活発

2017年1月24日
出所: 韓国特許庁

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韓国は急激な高齢者人口の増加によって高齢化社会から高齢社会※へと移行しつつある。高齢者の暮らしの質※※が高くない中で、一人暮らし高齢者の孤独死といった高齢化による社会問題が浮上している。

※65歳以上の人口の割合が7%以上は高齢化社会、14%以上は高齢社会
※※韓国高齢者の生活水準は96ヵ国のうち60位(Global agewatch index、UN、2015年)
このような高齢化時代の状況を反映して、高齢者の安全な生活を保障する様々な技術の特許出願が活発に行われている。

特許庁によると、過去5年間(2012年~2016年)高齢者の生活安全支援技術に関する特許出願は年平均153件で、その前の5年間(2007年~2011年)の年平均出願件数の72件に比べて2倍以上増加した。

高齢者の生活安全支援技術は大きく、(1)高齢者の身体や室内に監視センサーを装着して生活をモニタリングして、危険な状況を感知して保護者に知らせる「救急安全管理技術」、(2)社会福祉士や医師が遠隔で高齢者とやり取りしながら健康状態を診断・処方し、相談を進める「遠隔介護技術」、(3)認知症の高齢者を主な対象としてリアルタイムで位置を把握し、指定された範 囲を離れれば警報を鳴らす「失踪防止技術」などに分けられる。

過去5年間(2012年~2016年)分野ごとの特許出願をみると、救急安全管理技術が425件(56%)、遠隔介護技術が132件(17%)、失踪防止技術が125件(16%)となっており、特に出願の半分以上を占める主要分野である救急安全管理技術はモノのインターネット(IoT、Internet of Things)やウェアラブルデバイス(Wearable Device)と結び付けられ高度化されている。

例えば、以前は一人暮らし高齢者の住宅の電力使用量を遠隔で検針・分析して、一人暮らし高齢者に異常があるどうかを推定する程度(2007年出願)だったが、最近では、一人暮らしの高齢者の手首につけるスマートバンドで体温や脈拍、血統などを測定し、管理センターでその測定値を分析して健康に異常が発生すると、消防署や保護者に警報することで健康状態をリアルタイムで精密に確認できる技術が出願(2015年)されている。これによって一人暮らし高齢者が安心して暮らすことができるものと期待される。

また、高齢者の生活安全支援技術においては、企業の出願の割合が増加傾向にあり、この5年間(2012年~2016年)の平均増加率は52%と、その前の5年間(2007年~2011年)の平均増加率41%を上回る。これは、韓国が早いペースで高齢化社会に入ることに伴い、高齢親和産業分野の市場が拡大しているためとみられる。

韓国の高齢者親和産業※の規模は2012年の27兆ウォンから2020年の73兆ウォンへと急激に成長すると見込まれ、このうち、通信警報機器、健康測定用品など高齢親和用品の産業規模は2012年の1兆7千億ウォンから2020年の2兆3千億ウォンへと成長するものとみられる。

※高齢親和産業振興法(2006.12.28.制定、保健福祉部)では、高齢親和産業について高齢親和製品などを研究・開発・製造・建築・提供・流通又は販売する業として定義している。

特許庁の関係者は「世界各国の高齢人口が増加している中、高齢親和産業の規模は増加し続ける見通しであり、市場の先取りに向けた努力が必要な時だ。先端技術を積極的に取り入れて高齢者のニーズを満たせる、差別化した製品・サービスを開発して、特許を確保することが肝要である」と話した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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