知的財産ニュース 無効審判・訴訟における証拠提出を巡る対立激化

2016年9月6日
出所: 電子新聞

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特許無効審判・訴訟において、法院段階での新たな証拠提出の制限をめぐって行政部と司法部間の対立が表面化している。法改正を準備する特許庁が立法部の国会議員と公聴会を開けると、特許弁護士会が反対を表明した。

特許庁は現在、米国や日本のように韓国も法院段階では新たな無効証拠提出を制限すべきだと主張しているが、特許法院は司法体系等を理由に現行制度を維持しなければならないという立場だ。すでに登録された特許の有・無効を改めて判断する無効審判・訴訟が今後グローバル特許紛争に占める割合は大きくなると予想される中、このような対立が浮き彫りになった。

特許庁「法院段階における新しい証拠提出は制限すべき」

特許庁は、無効審判・訴訟において特許審判院に提出していない証拠は法院段階で提出できないようにすべきだという主張を展開している。審判院に提出していない新しい証拠を法院が受け付けて審理すると、審判院の審決に違法があるか否かを判断する「審決取消訴訟」ではなく、事実上「新しい事件」になるためだ。

したがって、法院段階では審判院に提出された証拠だけをもって審理をしなければならないという立場だ。現行特許法によると、特許無効争訟は必ず特許審判院を経なければならないが、法院段階で新たな証拠提出を許可すれば、審決が無力化し紛争予測可能性が落ちると主張する。

特許審判院のリュ・ドンヒョン審判政策課長は、最近開かれたカンファレンスで、「一部の会社が制度の弱点を利用して審判院にわざと一部の資料を提出せず法院段階で勝負を争おうとしている」とし、改善策として「制限説」を提示した。審判院の審決に終わらず、紛争が長期化すれば、資金繰りが良くない中小企業が不利になるため、制度を整備しなければならないという内容も付け加えた。

こうしたことから、特許庁は、米国が2012年に審判院にすべての証拠を提出するよう特許法を改正したように、韓国も法律を変えようという立場だ。実際に、米国と日本、中国の特許法は証拠提出を制限している。法院訴訟段階で新たな証拠を発見した場合は、例外的に法院段階の提出を認め、又は重複審判をすればよいというのが特許庁の説明だ。

特許法院「かえって紛争の長期化が懸念」

特許法院は、現行のように法院段階でも新しい証拠提出を許容すべきだという「無制限説」との立場だ。訴訟で新しく発見した先行技術を無効証拠として提出できないように制限すると、また新たな無効審判を提起しなければならないために、紛争がかえって長期化する可能性が大きいと主張する。現在のように法院段階で新しい証拠を提出できるようにすることが紛争の早期解決につながり、特許法院管轄集中の趣旨にも合致するという立場だ。

特許法院のチャン・ヒョンジン公報判事は、5月のカンファレンスで、「米国のようにすべての証拠を審判院に提出するようにすべき」という主張につして「米連邦控訴裁判所は法律審だが、韓国特許法院は事実審であるため、両国の司法体系は違う。侵害訴訟は、証拠提出の制限がないのに審決取消訴訟でのみ新しい証拠提出を制限すると、両訴訟の間に不均衡が生じる恐れがある」と懸念の声を出した。

このような中、大韓特許弁護士会も特許法院側の主張に賛同している。特許弁護士協会は最近声明を出し「法院段階で証拠提出を制限すれば、審判院以後の手続きが事実上無力化し『裁判官による』裁判を受ける権利を侵害し違憲となる」とし、「これから特許審判を任意の手続きに変え特許審判院の職権審理を強化する等の措置が求められる」と主張した。

イ・ギジョン記者 gjgj@etnews.com

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