知的財産ニュース 大法院、「特許審判」任意の手続きへ転換検討中

2016年10月11日
出所: 電子新聞

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法院が特許の有効・無効を判断するためには、必ず経なければならない特許審判院の審決について、任意の手続きに転換する案を検討中であることが明らかになった。法院の関係者は、特許審判院を必ず経るようにとする「特許審判必須前置主義」の廃止による影響を分析する研究を発注したと発表した。実際に特許審判院の段階が任意の手続きに変わると、審判院の役割が縮小することはもちろん、関連業務を代理する特許業界への影響も大きいと予想される。特許庁にとっても嬉しいことではない。

法院「特許審判院段階、任意の手続きへの転換」を検討

大法院が先週「特許等産業財産権の行政審判の義務的前置主義の見直し」に関する研究を発注したことが明らかになった。法院の関係者は「今回の研究において、特許審判院の段階を任意の手続きに変える時に現れる長・短所と問題点等を総合的に検討する予定だ」と話した。

現行の行政訴訟法によると、特許の有効・無効性を判断し、または特許登録を拒絶した特許庁の決定が適法か否かを確認するためには、審判院の審決を受けた後、審決取消訴訟を特許法院に提起しなければならない。技術専門性という特殊性のため、特許紛争は3審裁判から例外となり、法院は控訴審・上告審のみを担当する。民事裁判である特許侵害訴訟においても特許の有効・無効を判断するためには、事実上審判院の審決を待たなければならない。侵害訴訟で活用する「無効の抗弁」は、相手との紛争にのみ制限的に影響を及ぼすためだ。

このため、法曹界の一部では審判院を必ず経なければならない現行の制度が国民の裁判官による裁判を受ける権利を侵害していると主張してきた。つまり、「行政審判は、行政庁の決定を自ら是正する、配慮という意味の制度であって司法機能はない。国民の裁判を受ける権利を保護する側面で行政審判前置主義を再検討しなければならない」という立場だ。

今年8月に特許訴訟制度の見直しに関する公聴会で、ある判事は「特許侵害訴訟の受付後、無効確認訴訟で反訴の提起ができるように制度を整備すれば、『ワンストップ紛争解決』が可能だ」と話した。専門的かつ迅速に特許紛争を解決するために、1998年に導入した特許審判院の審決がなくても速やかな紛争解決が可能という意味だ。必須前置主義が廃止されれば、審判院段階は任意の手続きに変わり、法院が行政処分取消訴訟等を受け付ける案等が予想される。

「一撃」を受けた特許庁

特許審判院機能の弱体化が含まれた研究を委託したということは、特許庁にとって嬉しいことではない。

「行政審判前置主義」問題はこれまで法院の内外から持続的に提起された問題だが、最近特許庁が法院段階の審決取消訴訟では新たな証拠提出を制限(制限説)しなければならない等、特許審判院の機能強化を推進してきたためだ。

現在特許庁は、無効審判・訴訟で法院が審判院に提出されていない証拠を受けて審理すると、審判院の審決の違法性を見極める「審決取消訴訟」ではなく、事実上「新しい事件」になるため、法院段階での新たな証拠提出を制限しなければならないという立場だ。

特に、法院での訴訟で審判院の審決が覆されれば、紛争が長期化し、資金力が足りない中小企業には不利になるため、制度を見直さなければならないと主張してきた。2012年特許法を改正し、審判院にすべての証拠を提出するようにした米国と同じように法律を変えるべきだとの立場だ。また、特許庁は特許審判院の審判官が判事より技術専門性が高いため、審判院の役割強化が特許紛争の解決に役立つとみている。

このため、特許庁は今年5月と9月「無効審判・訴訟制度の調和」というテーマで国際コンファレンスを2回開催し、制限説の導入を強く推進してきた。今年8月にはホン・ウィラクセヌリ党議員等と特許訴訟制度の見直しに関する公聴会を開いた。必須前置主義が廃止されれば、特許庁が大法院等と不便な関係を甘受してまでこれまでかけた努力がすべて水の泡となってしまう。

弁理士・弁護士業界の反応にも「温度差」

特許審判の任意の手続きへの転換を巡り、市場での反応は分かれた。

審判市場を主導する弁理士業界は、仕事が減ることを懸念している。オ・ギュフヮン大韓弁理士会長は「特許審判前置主義の廃止は弁理士業界に莫大な影響を及ぼすと思う。法院は特許審判前置主義の維持と廃止の中で何が法律消費者にとってプラスになるかを判断して決めなければならない」と話した。

それに対し、弁護士業界は歓迎している。キム・ハンギュソウル地方弁護士会長は「特許審判院は独立性と公正性が保障されていないため、行政審判前置主義を強制する現行法は、違憲の余地がある。国民が公正な裁判を受ける権利を保障するという目的からも廃止することが望ましい」と述べた。

イ・ギジョン記者 gjgj@etnews.com

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