知的財産ニュース サウジアラビアで「大宇」の使用権を巡り紛争

2015年4月20日
出所: デジタルタイムズ

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POSCOのクォン・オジュン会長が推進している中東プロジェクトに待ったがかかった。クォン会長は同プロジェクトを介して現代グループに対する依存度の軽減と中東における成長動力の確保を目指していただけに、この状況の打開に全力を尽くす見通しだ。

関連業界によると、最近POSCOの系列会社である大宇インターナショナルは、韓国GMに対して「大宇(テウ)」ブランドの使用権の返還を求める公文を発送した。しかし、韓国GMが強く抵抗しており、法的紛争に飛び火する可能性も浮上している。

今回のブランド紛争は、POSCOがサウジアラビアで推進している「サウジアラビアの大衆車プロジェクト」が発端となった。サウジアラビア政府は、国民に低価格の自動車を普及するために大衆車プロジェクトを推進し、POSCOが大宇インターナショナルを通して事業に参加した。同プロジェクトを担当する政府系投資ファンドのパブリックインベストメントは、中東において大宇に対する良いイメージが形成されているだけに、大衆車の名前を「サウジ・キング・テウ」に決め、大宇インターナショナルにブランドの使用を要請した。この過程で商標の所有権を巡る問題が発生した。

POSCOは、約10億ドルを投じた同プロジェクトにより2017年からサウジアラビアの自主ブランドの自動車を生産する計画を立てていた。大宇インターナショナルが大宇ブランドのサウジアラビア大衆車合弁法人に600億ウォン(15%支払い)を投資して車両の設計はPOSCO投資会社が、エンジンの供給は双龍自動車が担当し、早ければ来年度から2000~2400ccの中型車を年間15万台生産する内容で進める方針だった。

現在、サウジアラビアの内需市場は年間70~80万台の規模となっており、これから3~4年で100万台を突破すると見られている。ただし、輸入車が100%を占めているため、サウジアラビアでは以前から自国生産の自動車を望んでいた。一時期、現代自動車にも意思を打診したが、実を結ぶことはできなかった。

この状況の中で、サウジアラビアと手を組んだのがPOSCOだった。POSCOも現代製鉄の成長により、主な取引相手「現代グループ」の売上が減り続け、その対策を講じる過程で同プロジェクトに参加した。2014年度のPOSCO事業報告書を見ると、昨年の売上高全体において現代重工業が占める割合は3.8%、現代自動車は2.0%で、現代グループからの売上が5.8%を占めた。これはPOSCOが主な販売先を初めて公開した2009年、現代グループからの売上が10.6%を占めたことに比べると半分水準に過ぎない。POSCOの売上において現代グループが占める割合は、2010年に現代製鉄が高炉を稼働して以来、毎年減少している。

その中でも現代自動車が現代製鉄と現代ハイスコの鋼板購入量を増やしたことがPOSCOに直接的な打撃を与えた。現代製鉄の浮上により自動車の鋼板市場における立地が危うくなり、POSCOは新しい需要先を掘り起こすため中東の自動車産業に足を踏み入れた。

問題は、POSCOが直接自動車事業に手掛けた経験がないということだ。自動車事業の経験は、大宇インターナショナルを介して自動車部品本部を運営しているだけだ。自動車鋼板の供給はできるものの、自動車産業全般を率いる能力があるかどうかは疑問符がつく。さらに、POSCOに対する全方位の検察捜査が予告されている状況の中で、サウジアラビア側でこれを口実に事業における利権を握ろうとする動きも見られている。

業界の関係者は、「現代自動車を離れ、鋼板の需要先を確保するために中東に目を向けたのは、それだけPOSCOが危機意識を感じているとの証拠だといえる。自動車事業の経験が皆無だという点と国内における検察捜査の拡大、さらに大宇ブランドの所有権も失われると事業が中止となるおそれもある」と述べた。

ノ・ジェウン記者

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