知的財産ニュース 電子金融詐欺の予防に関する特許出願が急増

2015年5月14日
出所: 韓国特許庁

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最近、スマートフォンを利用した金融詐欺の被害規模が拡大しており、これを懸念する声が高まっている。

去年、ボイスフィッシング[i]など金融詐欺の被害額は、2千165億ウォンと、わずか2年間で2倍にまで膨らんだ。2014年に発生したボイスフィッシング件数は7635件、ファーミング[ii]は 7101件、スミッシング[iii]は4817件だった。

一方、金融詐欺の手法がますます多様化・高度化するにつれて、これを予防するための犯罪類型別の関連特許の出願も変化を見せている。

特許庁によると、2014年のボイスフィッシングとファーミングに関する特許は、それぞれ13件と12件で、いずれも減少した。これに対して、スミッシングに関する特許はこの2年間で110件と、大きく増加した。

スミッシングに関する多様なセキュリティー技術の開発や関連特許の出願の増加により、2013年に29761件発生したスミッシング金融詐欺は2014年には4817件に急減する効果が表れた。

出願主体別に見ると、ボイスフィッシングに関する特許は、中小企業(47.7%)、個人(25.5%)、大企業(11.7%)の順となっており、ファーミングに関する特許は、中小企業(48.4%)、外資系企業(20.0%)、個人(11.6%)の順となっている。スミッシングに関する特許は、中小企業(65.5%)、大企業 (14.5%)、個人(11.8%)の順だった。

この調査から、同分野における特許の出願は中小企業が主導していることが分かったが、これは、国内情報セキュリティー業界のほとんどを中小企業が占めているためだと思われる。

注目すべきなのは、外資系企業によるファーミング関連特許の出願は多数あるが、ボイスフィッシングとスミッシングに関する特許の出願はないということだ。これは、ボイスフィッシングとスミッシングが韓国語の音声や文字を使うからだと見られる。

細部の技術分野別の出願動向を見ると、発信者確認や本人認証など認証に関連する出願が最も多く、次いで金融決済関連の出願、スミッシング探知に関する出願が多かった。

特に、認証関連特許の出願が相当部分を占めているのは、新種・変種の金融詐欺はいずれも犯罪者の身分を隠して他人を装うことで発生するということから本当の身分を確認する認証技術の開発が活発化しているからだと判断される。

一方、最近の金融詐欺は日に日に進化しており、今後被害がさらに拡大することが懸念される。金融詐欺の被害を防ぐには、速やかな対応措置を取るとともに、セキュリティー技術の持続的開発やセキュリティー業者の育成・支援など積極的な努力を傾ける必要がある。

特許庁コンピューターシステム審査課のパク・ジェヒョン課長は、「スマートフォンにおけるセキュリティーは、これから来るFinTech時代[iv]の成功を握るカギといえるほど重要である。新種・変種の金融詐欺の被害を減らすために、足早な技術開発に取り組むことが切に求められる」と述べた。


注記

[i] ボイスフィッシング(Voice Phishing)とは、電話等の音声案内を通じて金融機関や公的機関などを装って金銭を騙し取ろうとする手口のこと。フィッシング詐欺の一種としてビッシングとも言う。
[ii] ファーミング(Pharming)とは、インターネットの閲覧者を偽のウェブサイトに誘導することで、不正に個人情報や預金を騙し取る手口のこと。
[iii] スミッシング(Smishing)とは、携帯電話などのSMSを利用して権威あるサイトのふりをし、フィッシングサイトに誘導しようとするオンライン詐欺の手法のこと。
[iv] FinanceとTechnologyを合成した造語で、金融とITを融合させた新たな金融サービス、又はそのサービスを提供する企業のこと。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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