知的財産ニュース 特許訴訟控訴審、特許法院に一本化

2015年11月15日
出所: 電子新聞

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来年1月から特許関連控訴審の管轄機関が大田(テジョン)にある特許法院へと一本化される見通しだ。

これにより、過去20年間特許関連業界が提起してきた特許法院の専門性及び効率性が強化できると期待される。世界3大特許大国とされる韓国が特許訴訟のハブ国として発展するチャンスも広がる。


来年から特許侵害訴訟2審を専属管轄する大田特許法院

11月15日、大田市とイ・サンミン議員(大田市儒城区)によると、イ議員が去年9月に代表発議した「民事訴訟法及び法院組織法改正案」が11月12日、国会の本会議を通過した。

同改正案は、特許法院への管轄集中を主な骨子としている。特許法院への管轄集中とは、一般法院と特許法院に分かれている現行の特許訴訟体系を特許法院に一本化することを意味する。同事案は第15代国会の時に議論が始まり、特許法院がアクセスしにくい大田地域にあるという理由から法務部と大韓弁護士協会等の反対にぶつかって20年近く棚上げされてきたが、今回やっと通過したのである。

現在、特許侵害訴訟1審裁判は全国の地方法院58カ所で、2審(控訴審)は一般高等法院でそれぞれ担当している。改正案には、1審裁判機関を高等法院所在の地方法院5カ所(ソウル、光州、大田、大邱、釜山)に縮小し、2審は特許法院に一本化することで管轄を集中するとの内容が盛り込まれている。[1]これまで特許法院は、特許審判院から上がる審決訴訟に限って扱い、特許侵害事件には関与できなかった。

現在

改正案

特許侵害訴訟1審

全国58カ所の地方法院及び支院

来年1月から高等法院所在の地方法院5カ所(ソウル、光州、大田、大邱、釜山)に縮小

特許侵害訴訟2審

一般高等法院5カ所

地方法院控訴部

来年1月から特許法院に一本化

改正案の持つ意味は大きい。まず、特許訴訟が特許法院に一元化し、法院の専門性が向上する見通しだ。裁判官はもとより、弁護士や弁理士、陪審業界の専門性を強化させるきっかけになると予想させる。これにより、産業財産権の紛争解決がより専門的且つ効率的に行われるとの予測だ。これまで業界では、一般法院で特許訴訟の裁判が行われることから裁判官の専門性が欠如しているとの指摘が相次いだ。

韓国が特許訴訟のハブ国として飛躍できるチャンスも広がる。

イ・サンミン議員は、「米国等、主要先進国は、知的財産紛争の専門家・国際化を受けて訴訟管轄体系を集中化している。米国、欧州連合、日本、台湾、中国はいずれも控訴審を特許法院に集中しており、特許訴訟1審も2~3カ所の法院に集中している」と述べた。韓国はこれらの国より遅れて特許法院の管轄集中が進んでいるが、特許出願件数では世界で4番目である上、アジア圏では最も公正な司法システムを備えている国と評価されており、特許訴訟ハブ国として成長できる可能性は非常に高いと考えられている。イ議員は、「特許法院の専門性が向上し裁判も速やかに行われれば、世界的法律会社はもちろん、各国のグローバル企業も韓国に進出する可能性が高まる」と強調した。

何よりも特許法院の所在地、大田が恩恵を受けると見込まれる。大田には、特許庁と特許審判院、特許情報院、特許研修院等、特許関係機関が密集しており、すでに特許中心都市となっている。改正案が施行されると、世界的な特許訴訟バフ国としてさらなる成長を成し遂げることができると期待されている。

イ議員は、米国の小都市、タイラー市の例を挙げ、「人口10万人に過ぎなかった小都市タイラーにはテキサス州の東部裁判所があるが、世界特許訴訟のハブを目指して専門性の向上に取り組んだ結果、特許訴訟件数が飛躍的に増えた。以降、タイラー市では他の裁判所をはるかに上回る件数の特許侵害訴訟が行われ、同市で下された判決が世界的に大きな影響力を持つようになった」と説明した。

大田にはもう一つの朗報がある。大田地検が16日、法務部から特許等知的財産重点検察庁として指定されたこと。イ議員は、「裁判所と検察の特許業務が大田に集中されることで、大德研究團地を構える大田が科学技術都市に加え世界的特許ハブ都市に飛躍できる基盤が整った」と強調した。またイ議員は「近い将来、特許刑事事件まで大田に管轄集中する法律案を発議する計画だ」と述べた。

シン・ソンミ記者 smshin@etnews.com


注記

[1]JETROソウル注) 対象となる事件は特許権、実用新案権、デザイン権、商標権、植物新品種保護法による品種保護権に基づく民事訴訟

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