知的財産ニュース デジタル・フォレンジック関連技術の特許出願が急増

2015年7月27日
出所: 韓国特許庁

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犯罪捜査における現場鑑識は、事件の糸口を探す上で欠かせないプロセスである。しかし、デジタル時代である今、犯罪捜査において非常に重要な役割を果たしているものがもう一つある。それはデジタル鑑識1)だ。デジタル機器が生活に欠かせないものとなり、犯行の痕跡がデジタル情報に記録されている場合も多いからだ。また、デジタル情報は、削除された過去の記録まで復元できるため、現場鑑識では得られない特別な証拠を提供することもできる。

特許庁によると、2001年から2014年までの間、デジタル鑑識関連技術の特許出願は計135件に上る。2006年までは年平均3件にすぎなかったが、2007年以降年平均15件に急増した。

このような特許出願増加の背景は、現在、デジタル鑑識の活用範囲が捜査機関だけでなく、関連機関2)や民間企業にまで拡大している上、国内外の関連市場の規模が急速に成長3)していることがあると分析される。

出願人別に見ると、国及び公共研究機関が40%、韓国企業が20%、外国企業が16%、個人と大学がそれぞれ16%、7%を占めている。今のところは、政府主導の下、犯罪捜査のような公共分野を重心に技術開発が活発化しているものと分析される。

デジタル鑑識の対象別に分析してみると、コンピューター・サーバーを対象にした出願は46%、モバイル・組み込みシステムは33%、インターネット・ネットワークは18%、データベースは3%となっている。ここ4年間のコンピューター・サーバーを対象にした出願が減少傾向にあるのに対し、モバイル・組み込みシステム対象の出願が急増しているのが特徴だ。この背景には、スマートフォン等モバイル機器の普及により、いわゆるモバイル鑑識の割合が高まっていることがあるとみられる。

特許出願の主な技術としては、原本データから証拠になる資料を収集する技術、収集した資料を検索・分析する技術及び削除された資料を復元する分野がある。最近の情報技術動向により、クラウドコンピューティングとビッグデータから犯罪証拠を探し出す技術も出願されている。鑑識対象の代表例として、フェースブック、ツイッター、カカオストーリ等ソーシャルネットワークサービス(SNS)にある情報等が挙げられる。

国別にみると、米国は最先端の技術でデジタル鑑識の世界市場をリードしており、国際舞台で特許の保護を受けるためのPCT4)国際出願件数においても、約70%を占めている。これに対し、韓国は4%、欧州及び日本、中国もそれぞれ7%未満に止まっており、米国に比べ相対的に技術競争力が弱いことが分かった。

特許庁の関係者は「デジタル鑑識技術は、かつて、コンピューターやインターネット

すでにクラウドコンピューティングやモバイルSNS環境にまで拡大した。近いうちに、情報技術が融合されたモノのインターネットとフィンテク環境にまで拡大すると予想される。従って、未来の情報技術環境変化に適用されるデジタル鑑識技術開発に関心を持つ必要がある」と述べ、「デジタル鑑識技術の国内市場を外国企業が掌握している現状5)を乗り越え、成長するグローバル市場を先取りするためには、特許競争力の確保が欠かせない」と指摘した。


注記

1) デジタル鑑識は、コンピューターや携帯電話のようなデジタル機器及びインターネット上に残っているデジタル情報を収集・分析し、犯罪と関連のある証拠を探し出す捜査方法のことをいう(デジタル・フォレンジックともいう)。代表的にコンピューターの記録媒体、電子メールのアクセス記録、携帯電話の通話記録、ソーシャルネットワークサービス(SNS)の情報が対象となる。
2) 国税庁(脱税等の調査)、関税庁(密輸等の調査)、特許庁(偽造商品等の調査)、中央選挙管理委員会(違法・脱法選挙事犯の調査)、韓国著作委員会(著作権違反事例の調査)、公正取引委員会(カルテルの調査)等
3)デジタル・フォレンジックの世界市場規模:2013年度約14億ドル→2018年度23億ドル(KISTI MARKET REPORT 2014年9月号)
4)特許協力条約(Patent Cooperation Treaty):一つの国際出願書の提出により、条約加盟国全体に同時に特許出願する効果を持つ国際条約
5)電子新聞2014年10月21日、キム・ジョングァン代表は「PCとサーバー、ネットワークのデジタル・フォレンジック市場は、外国企業のシェアは95%以上」と指摘。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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