知的財産ニュース 「オープン審査」の促進で特許の無効化を早期に遮断

2015年4月3日
出所: 韓国特許庁

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特許庁は、今年4月から年末まで生活産業の9分野に対して、産業界と協力して審査する「オープン審査」を試行的に実施した後、来年度からは、生活産業分野全般を対象に「国民参加型のオープン審査」を本格的に推進することにした。

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「オープン審査」は、審査官が触れ難い産業現場の技術情報(主に非特許文献:設計図面、カタログ、論文など)と産官学の専門家の知識・意見を受けて特許審査に活用する制度のことだ。従来は、特許の無効審判と裁判の過程においてこのような資料が提出され、特許が無効とされるケースが多数発生したが、「オープン審査」が活性化すれば、特許が無効となる可能性を早期に遮断できると思われる。

米国などの先進国でも特許品質向上の一環として「オープン審査」の活性化に向けた様々な対策を打ち出している。米国の場合、初めてのオープン審査ウェブサイトのPeer-to-Patent('07~ '11)とQ&A方式の開放型オープン審査サイトのAsk Patent('12.9.~)が米特許庁の支援で立ち上げられたほか、民間のオープン審査専門企業が立ち上げたAOP(Article One Partners、'08.11.~)なども積極的に活動している中、昨年、オバマ政権が「特許品質の向上に向けた大衆の参加」プロジェクトを発表するなど、オープン審査制度の発展をリードしている。

韓国特許庁は、無効訴訟が多く発生し、産業現場における非特許文献情報が多い9の生活産業分野を優先的に試行実施分野として選定した。これは、当該産業界が参加に対する意志が強く、審査過程において産業現場で使われる技術情報の活用のニーズが高いという点を考慮したものだ。

「オープン審査」に外部の専門家が負担なく参加できるよう、オン・オフラインの審査協力チャンネルも設けた。出願人、産官学の専門家などが参加する「オープン審査協議体」を構成して2~3カ月の周期で審査官が提示する特許の争点について産業界の意見を収集して審査に活用する。オンラインではSNSを活用して議論の対象となる特許の中核技術情報を提供してから、追加の議論が必要となる場合、電子メールを利用して詳細情報を提供する。

このような審査協力の過程を介して、産業界の専門家と審査官の議論、コミュニケーションが活性化すれば、特許品質が向上するだけでなく、特許権の付与基準において産業界と審査官の見解の温度差が縮まり、審査結果に対する産業界の不満が減るほか、これまで専門家の領域とされてきた審査行政のハードルが低くなり、開放型特許行政が促されるきっかけになると期待されている。

特許庁は、産業界の専門家が提供する情報が審査に活用される場合、所属機関に対する手数料の減免、外部の諮問に対する手当支給、褒賞などのインセンティブの提供により、オープン審査に対する参加を活性化していく計画だ。何よりも「オープン審査」への参加によって与えられる最大の特典は、中核特許のトレンドを持続的に観察できるため、研究や市場対応などの活用はもちろん、紛争や無効の可能性が高い特許に早期対応することで企業経営の不確実性を除去できるという点だ。

特許庁は、「オープン審査」が産業発展と企業経営に貢献する制度として定着し、その参加対象も「産業界の専門家」から「一般国民」に拡大されるよう、年末まで試行的に実施する過程において見出されるメリットおよびデメリットを総合分析し、韓国産業の現状に応じた「オープン審査の最適モデル」を構築した後、来年からは生活産業分野全般にわたる「国民参加型オープン審査」に拡大していく計画だ。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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