知的財産ニュース 特許庁、中小企業の知財競争力強化に向けた政策討論会を開催

2015年10月22日
出所: 韓国特許庁

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特許庁と中小企業中央会は、10月23日ソウル汝矣島の中小企業中央会の本館にて中小企業の知的財産競争力強化に向けた政策討論会を共催する。

今回の政策討論会は、政府支援が行き届かない中小企業のあい路事項を聴取し、解決策を官民共同で模索することを目指して設けられた。この場には、チェ・ドンギュ特許庁長、パク・ソンテク中小企業中央会長を始め、政府、中小企業関係機関、業種別中小企業代表等、約70人が出席する。

主な内容

最近、国内外で特許紛争は増加し続け、紛争対象企業も大企業から中小企業へと拡大していることを受け、チェ・ドンギュ特許庁長は、中小企業が特許・商標紛争を事前に予防し、効果的に対応するための方法として「知的財産(IP)経営」の重要性を強調する。

同討論会では、中小企業中央会が今年8月、会員社を対象に実施した「中小企業特許経営のあい路に関する調査」の結果に基づき、喫緊の「8大中核課題」を選定し、今後官民共同で重点的に推進することで合意する予定だ。

「8大中核課題」は、業種別中小企業特許プールの構築、産業別特許動向譲歩の提供、中小企業CEOの知的財産に対する認識向上、特許出願・登録・維持費用に対する税額控除支援、大企業開放特許の活用促進、中国市場進出に向けた知財権保護支援、中小企業IP金融の拡大、職務発明補償制度の中小企業への拡大である。

  1. 業種別中小企業特許プールの構築

    米国・欧州・日本等、技術水準が相対的に高い国で特許紛争に巻き込まれる場合、特許を多く保有した大企業とは違って、個々の中小企業が保有した特許だけでは対応できないのが現実だ。この場合、中小企業の保有する特許を共有し、特許プールを構築すれば、紛争で競争優位を確保できる。こうしたことから、特許庁と中小企業中央会は、業種別共同組合を中心に共同の特許プールを構成することで、中小輸出企業が特許紛争に共同対応できるよう支援する計画だ。そのために、2016年度には照明業種における特許プール構築にまず取り組み、その後次第に対象業種を拡大していく方針だ。

  2. 産業別特許動向譲歩の提供

    国別・産業別・技術別の特許動向等、最新のIP分析情報を定期的に中小企業に提供し、中小企業の知的財産対応能力を向上させる計画だ。特に、LED照明・太陽電池等、特許問題の多い業種については、国内外の特許情報を分析して技術・商品開発戦略を策定・提供する事業を2016年から試験的に行う予定だ。また、発明振興会・知識財産保護協会・特許情報院等、特許関連専門機関の様々な支援情報をまとめ、中小企業が一カ所で利用できるよう、「IP-Bizワンストップサービス」を提供する予定だ。
    ※IP-Bizワンストップサービス:2015年から韓国知識財産戦略院が運営中の中小企業知識財産サービス

  3. 中小企業CEOの知的財産に対する認識向上

    中小企業が知的財産(IP)経営戦略を構築し、特許紛争に効果的に対応するためには、CEOのマインドが最も重要だ。しかし、中小企業には知的財産(IP)は依然として専門性を必要とする難しい分野という認識があり、専門人材を育てようとするより、弁理士等の代理人や外部の専門家に依存しているのが現状だ。こうしたことから、「CIPOセミナー」を開き、知的財産に対する中小企業CEOの認識を改善すると同じに、大・中小企業家間での協力ネットワークを構築できるよう支援する予定だ。なお、中小企業の実務者を対象に、現場で必要な知識・素養・能力の向上を目指す実務教育を行う計画だ。
    ※CIPO:Chief Intellectual Property Officer、知的財産最高責任者

  4. 特許出願・登録・維持費用に対する税額控除支援

    最近特許費用の増加による中小企業の負担は膨らんでいるが、現行の租税特例制限法では、特許費用に対しては税額控除が適用されず、これに関する法改正の必要性が指摘され続けている。これを受け、特許庁と中小企業中央会は、中小企業の特許費用に対する税額控除の導入に向け、中長期的な観点から関係機関と協議を進めていく方針だ。

  5. 大企業開放特許の活用促進

    サムスン・LG・SK等の主要大手は、地域別にある創造経済革新センターを通じて10万件に上る特許を民間部門に開放している。特許庁と中小企業中央会は、中小企業に移転された開放特許が新製品開発につながるよう、積極支援する方針だ。このために、特許を開放した大企業に対しては特許料を減免する一方、中小企業の開放特許の活用を促すために、全国の開放特許情報を知識財産取引システム(IP Market)を通じて提供する予定だ。また、特許取引専門館は、開放特許の需要企業を発掘して技術移転交渉を仲裁するだけでなく、中小企業に移転された特許が早期に事業化できるようIP金融、特許-研究開発戦略コンサルティング、移転技術開発事業等も支援する計画だ。

  6. 中国市場進出に向けた知財権保護支援

    特許庁は、中国進出企業の知財権保護に向け、北京・上海・靑島・光州・瀋陽の5つの地域に海外知識財産センター(IP-DESK)を設置・運営している。最近、中国で韓国企業の知財権紛争が増加していることを受け、中国西部の拠点都市である西安市にIP-DESKを新たに設置(2016年)し、中国進出企業に対する現地支援を強化するつもりだ。中国商標ブローカーの商標先取り登録や模倣品のオンライン流通現況等に対するモニタリングに加え、紛争対応コンサルティングの支援も強化する。

  7. 中小企業IP金融の拡大

    優秀技術を保有した中小企業が知的財産を担保に資金を円滑に調達できるよう、多様な金融商品を開発する等、IP金融をさらに拡大していく。従来のIP担保貸出では、IP価値評価額の60%だけを担保価値として認められたが、2016年からは、残りの40%に対しても資金を調達できるIP担保貸出+IP保証、IP保証+IP投資等の複合商品が発売される予定だ。一方、中小企業の債務不履行時に債務を代理返済し、IP担保回収して第3社に売却する「回収支援ファンド」の運営により、IP金融への民間金融機関の参加が拡大するものと期待される。
    ※知的財産(IP)金融:企業の保有する知的財産(IP)の価値評価結果に基づく担保貸出(銀行)、保証(保証機関)、投資(民間投資会社)等の金融支援

  8. 職務発明補償制度の中小企業への拡大

    現行の「職務発明補償制度」では、従業員が職務を行う過程で開発した特許を企業が承継ためには、従業員に対する正当な補償をしなければならない。これは、企業の技術及び人材流出を防止するとともに、労使の利益バランスを図るための制度であり、政府の国際課題として管理されている。しかし、中小企業における制度導入率は2014年12月時点で34.1%に過ぎず、企業内で所有権紛争が起きたり、中核人材が流出する問題がたくさん発生している。これを受け特許庁と中小企業中央会は、制度拡大に向け、教育・説明会等を共同で行う計画だ。
    ※中小企業中央会所属の教育機関である家業承継支援センター及び中小企業人材開発院のカリキュラムに「職務発明補償制度」を組み込む

今後の計画

近年、国内外で知的財産紛争が頻発し、知財関連の政策需要が急増している。今回の政策討論会は、その延長線上で中小企業の要望により設けられたもので、これをきっかけに官民共同で現場のあい路事項を体系的に管理・対応するようになると思われる。

特許庁と中小企業中央会は、今回採択された8大中核課題が問題なく推進されるよう、持続的に点検する予定であり、中小企業が知的財産を基に成長できるよう、多角的な関心と努力を注ぐ方針だ。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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