知的財産ニュース SMART原子炉、特許技術によって安全性も確保

2015年3月30日
出所: 韓国特許庁

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中小型原子炉技術分野の特許出願が相次いでいる。特にサウジアラビアに輸出する予定の中小型原子炉「SMART(System-integrated Modular Advanced ReacTor)」は、韓国のオリジナル技術によって開発された上、安全性確保にも韓国の特許技術が施されている。

3月3日に締結された「韓国‐サウジアラビアSMARTパートナーシップおよび共同の人材育成に向けたMOU」により、SMART原子炉に対する関心が高まっている。小型化・モジュール化が可能で、大型原発に比べて建設の工事期間およびコストを大幅に削減できるためだ。

※建設費用:約1兆ウォン、建設期間:3年(大型原発の建設費用:約5兆ウォン、建設期間:5年)

同技術は、原子炉システムを構成する主要機器を一つの圧力容器の中に配置することで、配管の破断による大規模の冷却材喪失事故(LOCA、Loss of Coolant Accident)を根本的に遮断できる。

このように経済性と安全性を兼ね備えているため、小型発展に適した中小規模都市のエネルギー供給システムとして脚光を浴びている技術である。

最近発行された報告書(Navigant Research Report、2013年6月)を見ても、2030年まで新規の中小型原子炉の需要は、18GWe(国内の発電設備容量の20%に該当)に上ると見られるほか、2050年まで500~1000基以上建設され、価格としては350兆ウォンに上る巨大市場が開かれる見通しだ。

※『2014原子力年鑑』、韓国原子力産業会議、2014.07.

そのため、米国、ロシア、中国、フランスなどの主な原子力先進国も競って自国のオリジナルモデルによる技術開発に乗り出している状況だ。

韓国特許庁の資料によると、2000~2009年まで約30件に止まっていた中小型原子炉の技術に対する特許出願がこの5年間で約100件に急増した。

主な出願人としては、SMART開発を主導した韓国原子力研究院が特許件数全体の5割を占めた。特に、韓国原子力研究院によるSMART関連特許のうち、福島原発事故のような自然災害によって発電所の非常用交流電源が完全に喪失された状況でも、運転員のいかなる措置なしで3日以上を耐えられるようにする受動的安全装置に係わる特許を相当数確保しているところが目立つ。

※商用原発の運転員の措置時間:30分

受動的安全装置は、事故による原子炉の炉心損傷頻度(CDF、Core Damage Frequency)を現行の商用原発の1/100の水準に引き下げられるもので、SMART原子炉の安全性を証明する中核技術として評価されている。

特許庁エネルギー審査課のオ・ジェユン課長は、「福島原発事故以降、原発の安全性に対する懸念が相次いでいる中で、サウジアラビアに輸出するSMART原子炉のように安全に関する中核特許を多数確保すれば、原発の安全に対する国民の信頼も取り戻せると思われる」と述べた。

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