知的財産ニュース WIPO、国立農業科学院を特許微生物「国際寄託機関」に指定

2015年4月30日
出所: 韓国特許庁

4998

農村振興庁傘下の国立農業科学院が「特許手続き上微生物寄託の国際的承認に関するブタペスト条約(以下、ブダペスト条約)」に基づいて特許微生物を保存・管理する「国際寄託機関」に指定された。

農村振興庁と特許庁は、国立農業科学院が世界知的所有権機関(WIPO)から特許微生物の「国際寄託機関」として承認を受け、5月1日から業務を開始すると発表した。

微生物に関する発明の特許出願の際、当該微生物を「特許法」および「ブダペスト条約」に基づいて公認された機関に寄託しなければならないが、国内特許出願の場合は特許庁が指定した「国内寄託機関」に、国際特許出願の場合はWIPOが承認した「国際寄託機関」に寄託しなければならない。

これまで計23カ国43機関が「国際寄託機関」として承認を得ており、国立農業科学院は今回世界44番目に指定された。国内においては韓国生命工学研究院の微生物資源センター、韓国微生物保存センター、韓国細胞株研究財団に次ぐ4番目の指定で、国家機関としては初めてだ。

これまで国立農業科学院は、「国内寄託機関」に指定されているのみで、発明者が国内に寄託された微生物を活用して国際出願するには難点があった。

今回、国立農業科学院が「国際寄託機関」に指定されたことを受けて、国立農業科学院に微生物を寄託した発明者が国際特許出願に向けてその他国際寄託機関に重複費用を負担して追加寄託するという不便が解消されるほか、国内の南部地域にも国際寄託機関が設置され、地域間の均等配置(首都圏2カ所、忠清圏1カ所、南部圏1カ所)によるアクセシビリティも大いに向上される見通しだ。

一方、特許庁は災害時に備えた国家安全管理体系の整備の一環として2013年、国内4カ所の寄託機関に分散保存されている特許微生物の複製を統合保存する機関として、国立農業科学院を指定している。

しかし、「国内寄託機関」に過ぎない国立農業科学院が国内特許出願の微生物だけでなく、国際特許出願の微生物まで統合保存するには限界があった。

国立農業科学院の「国際寄託機関」の指定により、その他寄託機関が有している国際特許微生物の移動制限が解消されたことで、複製の制作および統合保存が本格化する予定だ。

国立農業科学院は、2015年から2016年にかけて国内4カ所の寄託機関に保存されていた微生物、種子、細胞株など約1万点の特許微生物に対する複製を統合保存し、2017年からは毎年約600点以上の新規寄託微生物に対する複製を安全に長期間保存するとしている。

特許微生物は、氷点下196度の液体窒素を利用した保存と凍結乾燥の保存法によって特許微生物の最小義務保存期間である30年以上まで長期間保存することができる。

寄託された特許微生物は、新しい知識財産権の創出に向けて発明者以外にも第3者が分譲を受けて試験、研究などに利用することができる。また、農食品、製薬、環境、エネルギーなど様々な分野において活用できる。

その中でも、農食品分野では作物の生育を増進し、病気を抑制する環境にやさしい微生物、家畜に投与すると増体率を高め、畜舎の悪臭を減少させる微生物、醤油と味噌など伝統発酵食品の味を引き上げ、標準化する微生物など、様々な種類が活用されている。このような微生物は、農業の付加価値を向上させ、農業を高付加価値産業に育成する一翼を担うと見られる。

国立農業科学院の特許微生物「国際寄託機関」の指定を機に、農村振興庁と特許庁は、特許微生物に対する国の安全管理体系をさらに強化する一方で、これを活用した高付加価値の創出を支援することで、創造経済をリードしていくことができると期待されている。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195