知的財産ニュース 第13回韓国IPGセミナー(特許庁委託事業)を開催しました!

2014年12月5日

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第13回韓国IPGセミナー(特許庁委託事業)を開催しました!

去る11月5日、ソウルジャパンクラブ内会議室において、第13回韓国IPGセミナーを開催しました。今回のセミナーでは、畑谷圭志IPGリーダーから近年のIPG活動等について報告があったのち、セッション1,2で今回のメインテーマの2講義を行い、最後にIPG事務局より韓国の最近の知財状況等の説明を行いました。以下では、セッション1,2の講義の概要をご報告いたします。

セッション1

まず、1つ目のセッションとして、「韓国における企業内の知的財産管理」についてというテーマで、YOUME(ユーミ)特許法人パートナー弁理士の李元日(イ・ウォニル)先生にご講義いただきした。知財を巡るトラブルを防止するには、日頃からの管理が重要であり、前回IPGセミナーのアンケートでも、今後のテーマとして営業秘密流出防止に次いで関心の高かったものです。今回の講義は、2011年度にジェトロがYOUME特許法人に委託して作成した「韓国進出のための知的財産経営マニュアル(2012年3月ジェトロ発行)」をベースとし、最新のトピックを加えた内容となりました。具体的には、韓国への進出形態に応じた知財管理のポイントとともに、特許管理やブランド管理といった観点に加えて、営業秘密保護の問題についてもご講義いただきました。以下に講義内容の概要をご紹介します。

韓国において販売代理店契約を行ったり、OEMで製品の委託生産を行う場合は、商標の無断使用や模倣品の発生を予防するために、ライセンス契約等を行うとともに、模倣品等のモニタリングを行う必要があります。また、R&Dを韓国国内で行う場合には、知財の権利化や権利維持の管理負担が加わり、その管理を日本で行うか韓国で行うかが問題となりますが、韓国法人が主導して韓国市場に適した技術開発を行っている場合には、やはり韓国において知財の専門部署を設置して管理を行うことが必要となります。模倣品被害については、商標やデザインは比較的発見しやすく、証拠集めも易しい傾向にありますが、特許については模倣品の発見も証拠集めも難しく、特許侵害の立証資料についても原告が具体的に提示しなければならず、訴訟手続きを通して証拠資料を集める場合も制限されているため、特許模倣品に対する対応は難しい状況です。そのため、模倣品に対する証拠集めが容易でない場合には、ディスカバリー制度を通した証拠資料の確保が可能な米国の訴訟制度を利用する傾向にあります。また、韓国での商標権の取得に関しては、他社の不正使用を防止するため、韓国語や英語の発音でも商標権を取得しておく戦略が必要となります。営業秘密については、退職者による情報流出が問題となるケースが多いため、退職後一定期間は競合他社に就職しない契約(競業避止義務契約)を使用者と従業員の間で結ぶことが多いが、制限期間はあまり長くは認められないことに加えて、フリーランスとして競業他社の仕事をするという抜け道もあるため、やはり秘密情報の管理を万全にすることと、特許として保護するもの、営業秘密として秘匿するものの区別を戦略的に行うことが必要となります。

セッション2

2つ目のセッションでは、「韓国の職務発明制度」というテーマで、金&張法律事務所弁理士の尹瑄根(ユン・ソングン)先生にご講義いただきました。今年は青色LEDの発明により、元日亜化学工業の中村修二教授がノーベル賞を受賞したことで、200億の賠償金が認められた約10年前の職務発明判決が再び脚光を浴びましたが、韓国でも高額の賠償金判決が最近出ており、職務発明を巡るトラブルが社会問題になっています。そして、今年の1月には職務発明に関する法改正が行われました。この法改正は企業側により大きな責任を求める内容のものであったため、今回新しい法律の下で企業側が取るべき対応についてご講義いただいた次第です。以下に講義内容の概要をご紹介します。

今年1月に行われた法改正は以下の3点を狙いとしています。

  • 大企業の職務発明補償制度の導入を誘導
  • 職務発明補償に関する従業員の交渉力と手続的権利を強化
  • 従業員が適当な職務発明補償を受けるようにして技術開発を誘導

法改正の背景としては、企業における発明補償規程の整備状況が良くなく、発明者の権利が十分に保護されていないため、発明の振興が促進されないという危惧があったようです。改正法では、企業側が職務発明に関して特許を受ける権利や通常実施権を得る条件として、企業が前記権利を承継することの規定を事前に整備すること、職務発明完成後に権利承継意思の通知をすること、及び従業員に対する補償を行うことといった、いくつかの条件が定められています。また、企業は職務発明に関する異見の調整のために、従業者の要求に応じて職務発明審議委員会を設置、運用する必要があるなど、日本の制度と比べて企業側の義務が多くなっています。この新しい法律の施行後は、まだ裁判例も出ておりませんが、韓国企業からも疑問の声が出ているということであり、これからの運用状況等により、意外に早いうちに再度法改正が行われるのではないかという話もあります。なお、職務発明補償については、出願・登録時補償は数万~100万ウォン程度、実施補償は発明による収益に発明者貢献度を掛けて算出しますが、これまでの最高額は2012年12月6日にソウル中央地方法院がサムスン電子に支払いを命じた60億ウォンとなっています。

本セミナーには、40名以上の方に参加していただいて質疑応答も活発に行われました。また、交流会にも20数名の方に参加いただき、多くの意見交換をしていただけたものと存じます。
当日のセミナー資料の一部、その他参考資料は、ジェトロソウル事務所知財チームのホームページから入手できますので、ご利用ください。

ジェトロソウル事務所ホームページ:http://www.jetro-ipr.or.kr/
セミナー資料:「韓国IPG」→「韓国IPGセミナーの概要」→「第13回韓国IPGセミナー資料」
参考資料 :「ライセンス、事業進出、調達など」→「韓国ライセンスマニュアルなど」→「2011年 韓国進出のための知的財産経営マニュアル(2012年3月発行)」

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
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