知的財産ニュース (再掲載) 2014年度の特許審査政策を発表

2014年1月3日
出所: 韓国特許庁

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※同発表の添付資料を翻訳しましたので、全部再掲載します。

韓国特許庁は、特許審査処理期間の短縮を通じて、速やかな審査を求める企業のニーズに応えるほか、政府3.0の政策に基づいた様々な顧客中心の審査サービス、自国企業の迅速な海外特許支援の強化、創意的なアイデアの保護のための審査基準の見直し、特許法改正の推進などといった2014年度における特許審査政策の推進方向を明らかにした。

要約

  • 2014年には、特許審査処理期間を11.7月に短縮し、先行技術調査を強化した品質中心の特許審査を実現して強い特許創出を推進
  • 特許審査前に出願人と面談を行う予備審査など、ポジティブ審査を推進、新製品と関連した特許実用新案の一括審査、商標デザインにまで拡大施行など、顧客中心の審査制度を支援
  • 韓国で特許を受けた出願が海外で迅速に審査されるようにする特許審査ハイウェイの対象国を拡大(2013年14国→2014年21国)
  • コンピュータプログラム(スマートフォンのアプリ)及び建築設計の創作物の特許保護を強化できるよう、関連の審査基準を改正
  • 創意的なアイデアの特許獲得が容易になるよう、アイデア資料外国語論文出願の可能化、公知例外主張要件の緩和、分割出願の機会拡大など、特許法の改正を推進

キム・ヨンミン長官は、「特許審査の処理機関短縮が経済の活性化に貢献すると期待している。国民の創意的なアイデアが強い知財権として早期に権利化される一方、海外でも便利に特許が獲得できるよう、引き続き審査サービスを強化していく考えだ」と述べた。

細部内容

特許審査処理期間の11.7月短縮及び特許審査の品質強化

国民の創意的なアイデアが早期に権利化できるよう、特許審査処理期間を年平均2013年の13.2ヶ月から2014年には11.7ヶ月に短縮する。

韓国知識財産研究院による分析の結果(2013.12)、2014年の計画どおり審査処理機関を短縮できれば、国民総生産額1兆3,433億ウォン増加、雇用創出4,347人の創出効果をもたらすという。

また、中国の特許文献の検索強化、技術分野別の検索ガイド作成、審査官の検索大会の開催など、選考技術調査の強化を中心に、審査品質の向上を図る。

審査の全過程において顧客と疎通するポジティブ審査の強化

本格的な特許審査に先立ち、2014年1月から「審査官と出願人の面談による予備審査」を難しい技術分野から実施する。出願人は、審査官に技術内容を直接説明し、審査官は拒絶理由を詳細に説明できることで、正確な審査と拒絶理由が自然に解消できると期待されている。

また、代理人のない出願については、拒絶理由の補正方法を案内するなど、審査の全過程においてポジティブ審査を強化する。

新製品に対する特許・実用新案・商標・デザイン出願を受けたい時期に一括審査

新製品に対する1人企業・ベンチャー企業などの複数特許と実用新案の出願を新製品の発売に合わせて審査を行う一括審査制度が2014年1月から本格スタートする。2014年4月からは、商標及びデザイン出願まで一括審査を拡大施行する。

海外で特許を素早くて簡単に取得できるよう特許審査ハイウェイ対象国を拡大

韓国で特許を受けた出願が海外で迅速に審査できるようにする特許審査ハイウェイの対象国を2013年の14国から2014年1月から21国に拡大する。特に、欧州特許庁が対象国として追加されたため、世界で最も大きい市場の一つとされる欧州地域に進出する韓国企業の早期の特許獲得に役立つとみられる。

「コンピュータプログラム」及び「建築設計の創作物」の特許保護を強化

「記録媒体に保存されているコンピュータプログラム」を特許として保護する現行規定は、現実とはかけ離れていて、実際には、オンラインを通じて「コンピュータプログラム(スマートフォンアプリ)」そのものを取引する市場が活性化されている。こうした不一致を解消するため「特許要件を備えたコンピュータプログラム(スマートフォンアプリ)」が特許として保護できるように審査基準を2014年の上半期中に改正する。

また、空間要素的な特徴により、新規性・進歩性の特許要件の判断が難しかった建築設計の創作物を、特許要件の判断事例や権利範囲解釈の事例を補強して審査基準を整備することで、建築設計の創作物についての特許判断基準を明確にする。

創意的なアイデアの保護に向けた特許法改正を推進

創意的なアイデアの特許獲得を支援するため、アイデアの説明資料及び外国語で作成された明細書を提出しても、それで出願日を認められるよう特許法の改正を2014年の上半期に推進する。また、アイデアの正当な保有者が特許を容易に獲得できるよう、告知例外主張要件を緩和するほか、特許出願されたアイデアの追加的な権利化のために分割出願の機会を拡大できるよう改正する。

参考1:審査処理期間及び経済的な費用

韓国特許庁の審査処理期間(年平均、単位:ヶ月)

年度

特許・実用

商標

デザイン

2013年(実績)

13.2

7.7

7.3

2014年(目標)

11.7

6.5

6.5

特許審査処理期間及び経済的な費用

審査処理期間の短縮に伴う経済的な効果(2013.12、韓国知識財産研究院)
※2014年の処理目標(11.7ヶ月)を達成した場合の経済的効果:総生産額が1兆3433億ウォン増加、総付加価値が2837億ウォン増加、収入が385億ウォン増加、雇用は4347人創出

Economic Study on Patent Backlogs(London Economics, 2010)
※審査処理期間が1年遅延した場合、米国・欧州・日本特許庁を基準にして年間118億ドル(12兆3800億ウォン)の経済的費用が発生

参考2:ポジティブ審査

概要

本格的な特許審査の前に実施していた「審査官と出願人の面談による予備審査」を一部の高難易技術を対象に2014年1月から試行実施
これを通じて、出願人は、審査官に技術内容を直接説明し、審査官は、出願人に拒絶理由を詳細に説明できることで、正確な審査と拒絶理由が自然に解消できると期待

代理人のない出願については、拒絶理由の補正方法を案内するなど、審査の全過程においてポジティブ審査を強化

細部計画

審査段階

方策

内容

対象

施行

審査着手前の段階

予備審査

審査着手前の面談を通じて予備審査

  • 出願人(技術説明)
  • 審査官(拒絶理由説明)

拡大された優先審査出願のうち一部の高難易度技術分野

2014.1

審査着手段階

補正の方向を提示

補正を通じて適切な権利範囲を有するよう、補正方向を提示

全ての出願のうち

(新規性など)選考技術と明確に区別される発明がある場合

(記載不備)拒絶理由を正確に理解できるように誘導

既施行

補正マニュアルを提供

拒絶理由別の拒絶理由通知の趣旨及び補正方法を案内

代理人のない出願

2014.1

補正段階

補正案の予備検討

  1. 出願人が補正案を提示
  2. 審査官が検討意見を提示
  3. 出願人が最補正

全ての出願

※ただし、審査負担などを考えFA10達成後に推進

2015年以降

審査終結段階

意見提出再通知

  1. 拒絶理由の未解消
  2. 登録可能な発明が有
  3. 拒絶理由を再通知

再審査請求の出願(補正承認)のうち、特許性が認められた出願

2014.2

参考3:一括審査

概要

新製品に対する特許・実用新案・商標・デザイン出願などの複数の出願について、新製品の発売時期に合わせて一括審査する制度

施行時期

特許・実用新案:2013年12月
商標・デザイン:2014年4月

一括審査の対象

優先審査請求された出願として、

  • 自己実施出願
  • 輸出の促進に関する出願
  • ベンチャー/技術革新型の中小企業による出願
  • 1人企業の出願

一括審査の手続き

図:一括審査の手続きフロー

参考4:特許審査ハイウェイ

特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway)の概念

出願人が自分の発明を2国以上の国に出願した場合、先の審査で特許が可能と判断された国の審査書類を後で審査が進められる国の特許庁に提出すれば、その事実を参考にして該当出願を一般出願より先に審査する制度

PPHの概念図

特許審査ハイウェイの対象国を拡大

国民と企業が海外で迅速に特許を獲得できる特許審査ハイウェイの対象国を2013年14国から2014年には21国に拡大

特に、欧州特許庁が対象国として追加されたため、世界で最も大きい市場の一つとされる欧州地域に進出する韓国企業の早期の特許獲得に役立つと期待

特許審査ハイウェイの対象国(2014年に21国)

2013年施行(14国)

2014年に追加施行(7国)

日本、米国、デンマーク、英国、カナダ、ロシア、フィンランド、ドイツ、スペイン、中国、メキシコ、シンガポール、ハンガリー、オーストリア

ヨーロッパ特許庁(EPO) 、スウェーデン、イスラエル、ポルトガル、ノルウェー、オーストラリア、アイスランド

参考5:審査基準の見直し

コンピュータプログラム

  • 1984年

    コンピュータ関連発明の審査基準制定が施行

  • 1998年

    「記録媒体」に記録されたプログラムを保護するよう、審査基準が改正

  • 問題点

    最近、スマートフォンアプリのオンライン取引市場が活性化されるにつれ、「記録媒体」に限定された特許の保護は、現実とかけ離れている。

  • 解決策

    「特許発明の要件を備えたコンピュータプログラム(スマートフォンアプリ)」を特許法で保護されるような「物」として扱うよう、審査基準を見直す。

    図:権利範囲(請求項)の記載形式改善内容

  • 期待効果

    スマートフォンのアプリなど、プログラム発明を特許として保護が可能となる。

建築設計の創作物

  • 2008年

    建築設計分野の審査基準制定を施行

  • 問題点

    建築設計の空間要素的な特徴により、特許要件である新規性及び進歩性判断が困難

  • 改善策

    建築設計分野の新規性進歩性の判断事例及び権利範囲の解釈に関する審査基準を見直し、ガイドブックを発刊

  • 期待効果

    審査審判訴訟の一貫性と権利の信頼性を向上

参考6:特許法の改正

出願日の先取りのための明細書記載要件を明確化(2013.10国会提出)

  • 改正の必要性

    先出願制度の下では、早い出願日の確保が重要

  • 改正の推進

    アイデアの説明資料だけを提出しても、出願日として認められるよう明細書記載の要件を明確に規定

出願日の先取りのための明細書言語要件を緩和(2013.10特化委提出)

  • 改正の必要性

    米国、欧州、日本は、すでに外国語をもって出願日を先取りすることができるが、韓国は韓国語出願のみを認証
    韓国国内でも、英語の論文などが持続的に増加していることなどから、早い出願日を確保できる制度的な装置が必要

  • 改正の推進

    出願言語の範囲を韓国語以外に英語まで拡大

アイデアの公開者のために「告知例外主張」要件を緩和(2014年上半期に改正推進)

  • 告知例外主張制度

    出願前にアイデアが発明者により告知される場合、出願時に告知例外を主張したときのみ、特許獲得が可能

  • 改正の必要性

    告知例外主張が「出願時のみ」可能であるため、出願のときにミスなどによって告知例外主張を記入しなかった場合、特許登録が拒絶される。

  • 改正の推進

    アイデアの正当な保有者が特許などを簡単に獲得できるよう、告知例外主張の要件を「出願時の事前申告義務」から「事後立証方式」に緩和※し、関連期間も拡大

特許出願されたアイデアの追加的な権利化機会を拡大(2014年上半期に改正を推進)

  • 改正の必要性

    権利化されなかったアイデア技術であっても模倣品販売、標準決定などを考えて追加権利化が必要だが、特許決定後には不可能

  • 改正の推進

    市場に発売された後発模倣品、国際標準などを反映し、アイデアや技術の追加権利化が容易になるよう、分割出願の機会を拡大

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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