知的財産ニュース 塩水からリチウム抽出する技術の特許動向

2014年3月6日
出所: 韓国特許庁

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ノートパソコン、携帯電話端末、電気自動車などに搭載されるリチウム。2次電池のコア素材とされるこの素材を塩水などから抽出する特許技術が世界的に増加している。
※塩水:リチウムを包含する岩塩が解かれているもので、内陸に存在しており、チリやアルゼンチン、ボリビア、ブラジルなどの南米大陸に偏重(世界塩水の7割)している。

レアメタルであるリチウムの自然抽出原料には海水、鉱石、塩水が代表的だ。リチウムは、海水に最も多く溶存されているが、海水や鉱山におけるリチウムの抽出は、工程が複雑でエネルギーの消耗が激しく、環境汚染物質の放出量も多いため、経済性が劣る。一方、塩水からのリチウム抽出の費用は、1トン当たり2000ドルで、ほかの方式よりコストが安く、リチウム全体の7割を塩水から得ている。
※リチウム溶存量:海水(2,500億トン)、塩水(6,714万トン)、鉱山(1,844万トン)
※※リチウム抽出費用:海水(8,000万ドル)、鉱山(4,000万ドル)、塩水(2,000ドル)

韓国特許庁が主要5カ国のリチウム抽出関連の特許を分析した結果によると、1975年に初めて特許出願が行われ、1990年代から出願が増加し始め、2009年39件、2010年58件、2011年59件と、最近になって出願が急増したとえいる。

リチウムの抽出と関連した主な特許技術約200件を分析した結果、日本が44%(87件)で最も多く、韓国は米国、中国に続いて4番目になっている。最多出願人は日本の工業技術院(24件)だ。

リチウム抽出方法としては、塩水からの抽出法が70件で鉱山(10件)や海水(5件)より多い。塩水からの抽出技術のなかでは、リチウムを直接抽出する技術が41%(29件)で最も多く、不純物の精製26%(18件)、その他リチウム化合物の製造14%(10件)、蒸発濃縮12%(8件)、炭酸リチウム製造7%(5件)の順となっている。

これまでは日本などの先進国がリードしてきたリチウム抽出分野に韓国企業の参加が拡大している。たとえば、塩水の自然蒸発方式では1年がかかっていたリチウムの生産期間を1ヶ月に短縮させる画期的な特許技術を有している韓国の会社がその技術に基づき、アルゼンチンの関連メーカーと炭酸リチウムの年間200トン生産規模の抽出パイロットプラント建設に合意した事例が挙げられる。

今後、全量輸入に依存しているリチウムを金属精錬技術分野で経済的に抽出できる技術の持続的な研究開発及び特許出願を促し、韓国のオリジナル技術を確保する必要があるだろう。

参考1:年度別における世界のリチウム抽出技術の出願現状(1975~2013)

参考2:国別における特許出願の割合及び件数

参考3:リチウムの供給源別における特許出願の割合及び件数

参考4:塩水からのリチウム抽出技術別の特許出願の動向

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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