知的財産ニュース 韓国特許庁、「知的財産基盤の創造経済実現戦略」を発表

2013年6月26日
出所: 韓国特許庁

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図:知的財産基盤の創造経済実現戦略 ビジョン、目標など

主な推進課題

1. グローバル市場で生き残る「高品質の知財権(STAR特許)を創出

制度の背景

(1)従来の断片的な「審査品質」向上努力から脱し、「出願-審査-登録の全過程における総合的な知的財産権品質」の向上に政策を転換、「STAR※特許」を創出する。

※STAR:優秀な出願(Superior Application)、迅速な審査(Timely Exam.)、正確な審査(Accurate Exam.)、信頼される特許(Reliable Patent)

これは、国内外における特許紛争の増加の影響により、グローバル市場でも生き残る、強くて品質の高い知的財産権の創出が何より重要な問題として台頭したためである。

すなわち、これまでは、供給者観点から特許の拒絶を判断することに重点を置いていたが、
これからは、発明家の立場に立ち、審査前後段階まで考慮して審査官と出願人の間でコミュニケーションを拡大し、強い知的財産権を創出するポジティブな審査に政策方向を切り替える。

図:審査品質追求から知的財産権品質追求へのParadigm Shift

例えば、出願段階で特許明細書の形式的・手続き的な誤りを自動的に点検し、出願人の失敗を回避する「スマート明細書作成・診断システム」を導入する。
審査段階では積極的な面談を通じて明細書の補正方向を提示し、出願人の単純な失敗の救済を拡大し、
登録後には発明の欠陥を訂正する手続きを簡素化し、訂正が許される要件を緩和して優秀な発明の無効を最小化する。

(2)同一製品群などに対する多数の知的財産権出願を、顧客が求める時点に一括で審査する「一括審査制度」を導入

(2013年:一括審査制度を設計→ 2014年:テスト実施後、拡大を検討)

現在は、一つの製品に多数の特許が出願される場合、個々の特許・商標・デザイン出願を別々に審査していたため、審査時期がそれぞれ異なっていたが、
一括審査制度が導入されることによって、特許・商標・デザイン出願に対する審査を同時に一括進行することになる。

そのため、企業は、ある製品における多数の知的財産権を同時に取得することができ、事業戦略確立と新製品発売に役に立つと期待されている。

(3)技術が融合・複合されている現状に効率的に対応するため、特許審査組織の融合・複合審査組織への改編を推進していく。

現在は、技術分野別に特許審査組織が編成されているが、技術分野を統合して再配置する。これは、1977年に特許庁の開庁以後、初めて試みられることである。

(4)早急な権利獲得を通じて、企業の迅速な事業化を支援するための審査処理期間の短縮努力も引き続き行う計画である。

特許・実用審査処理期間は2015年まで10ヶ月で短縮し、
商標は2017年まで3ヶ月、デザインは2015年まで5ヶ月で短縮する
※(特許・実用)審査処理期間(ヵ月):(2013年) 13.3 → (2015年) 10 → (2017年) 10
 (商標/デザイン)審査処理期間(ヵ月):(2013年) 8.3/8.3 → (2015年) 5/5 → (2017年) 3/5

2. 国民の創意的アイデアの事業化、および国家研究開発システム革新

(1)国民の創意的なアイデアを商品化し、知的財産権獲得まで支援する「国民幸福技術」事業を推進する。

国民を対象に公募を行い、生活密着型アイデアを改善・発展させ、特許などで権利化し、これを事業化することができるように部署、または地方自治体と協力する支援体制を設ける。

まず、アイデアを受け付けて実現性を検討し、特許および技術分析を通じて、該当技術の存在有無を調べた後、技術の組合やR&Dを通じて技術を開発し、創業・事業化まで支援する手続きを構成する。

  • アイデア受付検討

    国民のアイデアをOnofflineチャンネルを通じて受け付け、専門家評価などを経て、アイデア実現有無を検討

  • 特許技術分析

    アイデアの実現に必要な特許技術要素を分析して、先行特許および従来技術を探索し、該当技術存在の有無を判断

  • 技術確保段階

    技術の組合融合を通じて、最終実現技術を確保するか、政府民間R&D等を通じて技術開発

  • 創業事業化支援

    初期創業および事業化から成長段階まで金融投資、経営方法などを支援して、雇用創出を企画

※産業部、中小企業庁と連携または地方自治体・地域中小企業・大型流通業者などと連携

(2)付加価値の高い知的財産権創出を支援するため、知的財産権中心の研究開発を政府と民間に拡大する。

先に、特許分析と未来技術予測に基づき、2015年まで18大産業分野を対象にR&D戦略を提示する「国家特許戦略青写真」を設け、国家研究開発効率性を向上する。
※(2012~2013)バイオ、移動通信などの7大産業分野→ (2015) 18大産業分野(累積)

現在は、主に専門家の知識と経験に基づいた直観的な判断によって確立された研究開発戦略が行われていたが、
これからは、「国家特許戦略青写真」を通じて導き出された有望な技術分野を、未来部や産業部などR&D部署と産官学などに提供し、R&D初期段階からR&D投資を集中させる。

1. 推進基盤

2. 戦略技術体系

3. 特許分析

4. 特許戦略青写真

産業分野特性、およびニーズ分析総合

特許戦略確立のため、技術体系構築

出願、占有増加率など定量・定性分析を通じて有望技術導き出し

産業別有望R&D課題および技術特性にともなう特許確保戦略提示

韓国の中小・中堅企業を対象に「知的財産権中心のR&D(IP-R&D)戦略」を拡大し、未来のグローバル市場をリードできるよう、核心・源泉特許確保を積極的に支援する。
IP-R&Dを通じて、新規特許創出の戦略、競合会社の特許戦略情報、新規R&D課題発掘などを中小・中堅企業に提供し、中小・中堅企業に対する支援規模を2012年ベース376社に、2017年まで総1,500社に拡大していく。

R&D、標準、特許を相互で連携※し、研究開発段階から標準制定までの全過程において、韓国が4大標準特許国を達成できるオーダーメードR&D戦略を支援する(2013~)。

※初期段階の研究開発時における標準化活動と特許獲得作業を連携し、標準特許を創出
※標準特許順位(2012):米国→日本→フィンランド→フランス→ドイツ→韓国(6位)

3. 雇用創出のための知的財産事業化および企業育成

(1)優秀な知的財産権を保有している中小企業、知的財産サービス企業などに対し、金融支援を拡大していく。

ファンド・オブ・ファンズ特許アカウント特許事業化ファンド規模を民間と協力して8千億ウォンまで発売し、これを優秀特許保有企業、知的財産(IP)サービス企業などに事業化資金として支援する。
※ファンド・オブ・ファンズ特許アカウントファンド結成総額:(2012) 5,736億ウォン→ (2017) 8,000億ウォン

技術保証基金・ベンチャキャピタル(VC)、知的財産権担保貸出し(回収支援ファンドなどリスク分散方式を活用)などと関連した技術価値評価などを拡大して、中小企業に対する知的財産権金融拡大を図る。
※金融連携評価を通じたVCの事業化資金連携:(2012) 505億ウォン→ (2017) 2,000億ウォン

(2)知的財産サービス業成長基盤を設け、知的財産サービス分野の専門企業200社を集中育成する。

「発明振興法」に知的財産サービス業に対した支援根拠を設け、韓国標準産業の分類に「知的財産サービス業」を独自分類し反映させ、同業種に対する税制上の支援※も推進していく。
※R&D税額控除対象に特許情報調査も費用に含める、投資税額控除対象にIPサービス業を推進

潜在成長力のある知的財産サービス企業に投資を強化して、現在100社を割り込んでいる知的財産サービス専門企業を2017年まで200社水準に育成※すること
※IP活動とサービス、IPサービス間の融合を通じて新しいIPサービスビジネスモデルを発掘(2013~)
※IPサービス業投資ファンド新規発売(2017年、約250億ウォン規模)、中小企業創業支援事業との連携など

(3)地域の有望な中小企業1,500社をIPスター企業で選定し、韓国型のヒドン・チャンピオンに育成する。

全国の主要地域別に潜在成長力が大きい中小企業を「IPスター企業※」として選定し、強い知的財産権で身を固めた、グローバル強小企業に育成する。

選ばれた企業には、3年間、知的財産権獲得戦略、知的財産権紛争予防戦略など、段階に合わせたオーダーメード型支援を行う。

IPスター企業支援規模は2012年ベース468社だが、これを、2017年まで1,500社に拡大する計画である。
※IPスター企業支援規模(累積):(2012) 468社→ (2017) 1,500社

IP経営能力を兼ね備えた有望な中小企業に対し、知的財産経営認証制度の導入を通じて政府支援事業におけるインセンティブを提供することによって、産業界全体において知的財産経営拡大、および標準化を図る。
※産業部の「グローバル専門企業育成」、中小企業庁の「World Class 300」等

4. 健全な知的財産の環境造成及び知的財産の保護強化

(1)大・中小企業が共存する公正な知的財産環境を造成します。

下請け業者など中小企業に対する技術漏えいを防止するために、関連部署と相互協力し、技術漏えい防止One-Stopサービス体系の構築を推進します。

  • 公正委員会(調査及び行政処置)、中小企業庁(調査、技術任置制度)、特許庁(営業秘密原本証明制度コンサルティング)、検察警察(技術奪取捜査)などと連携

中小企業の知財権紛争解決を支援するために、紛争発生可能性の高い企業群を対象に、大企業-中小企業間の知財権紛争の共同対応協議体を拡大し構築します。

  • 紛争情報の共有及び共通の競争企業分析などにより紛争予防機能を強化する。

(2)企業の職務発明補償制度の導入割合を先進国のレベルに引き上げます(2012年43.8% → 2017年70%)

大企業の職務発明補償制度の導入義務化を推進し、知財権に対する被雇用人の法的権利を強化すると共に、企業の技術流出を防止する共存基盤を整えます。

  • 大企業は、現在は職務発明補償制度の導入とは関係なく、無償で職務発明を実施できるが、今後、大企業に対しては職務発明補償制度を導入しないと、無償の通常実施権を行使できないようにする制度改善を推進する。
  • 職務発明の優秀企業として認証された企業は、特許庁、中小企業庁などの政府支援事業において加算点が付与される。

今後、産業部など関連部署と協力して政府支援事業に対するインセンティブを拡大することにより、職務発明補償制度の導入の割合を高めていきます。

  • 特許庁

    民間IPR&D連携戦略支援事業、特許技術の戦略的事業化支援事業、地域の知的財産創出支援事業、年次登録料の減免

  • 中小企業庁

    中小企業の技術革新開発事業、中小企業の商用化技術開発事業、中小企業の創業成長技術開発事業及び製品工程改善技術開発事業

(3)国内知財権保護を強化し、法執行の実効性を高めます(2013年~)

模倣品根絶のため、商標権特別司法警察隊の組織・人材などを拡大し、関税庁・自治体などの他機関との協力体系を強化します。

迅速で専門化した知財権紛争解決のため、関連機関と協力して特許訴訟の管轄集中及び訴訟代理制度の導入を引き続き推進します。

  • 現行

    (1審)地方法院(18)、地裁支院(40)→(2審)高等法院(5)、地方控訴部(18)→(3審)大法院

  • 改善案

    (1審)ソウル地法、大田支法→(2審)特許法院→(3審)大法院

  • 特許侵害訴訟

    (現行)弁護士単独代理→(改正案)弁護士弁理士共同代理許可

先進国に比べ高い特許無効率を下げ、特許侵害損害賠償額の現実化を推進し、特許の実効性を向上します。

  • 韓国と日本の特許無効率(2011):韓国53.4%、日本35.1%
  • 2009年~2011年間の特許侵害損害賠償額平均値は、韓国が56百万ウォンであり、米国の同期間の特許侵害損害賠償額平均値は9百万ドル(約10,200百万ウォン)の170分の1に過ぎない(国家知識財産委員会2012年)

(4)海外進出企業に対する知財権紛争支援を強化します。

海外進出中小企業などに対し国・地域罰の知財権環境に合わせ、侵害に対する保護戦略又は紛争対応戦略を策定します。

  • 輸出段階別(輸出準備→現地進出→市場定着)紛争特性に伴う総合対策構築(2013年)

海外知識財産センター(IP-DESK)を拡大し、韓国企業が海外の現地において直接オーダーメード知財権紛争情報を受けられるようにします。

  • IPDESK:(2012年)8ヵ所(中国5、タイ1、ベトナム1、米国1) → (2013年)9ヵ所(米国1追加)、今後ヨーロッパまたは日本に新設を推進

韓国中小企業が開発した技術を海外において正当な保護を受けられるよう、海外出願費用支援拡大など積極的な方策を講じます。

5.創造経済の革新、知的財産に強い創意人材の育成

(1)知的財産マインドと起業家精神を備えた創意人材を育成します。

既存の断片的な知的財産素養中心の教育から離れ、知的財産素養+創意的思考+起業家精神を養成する融合教育へと転換し、知的財産マインドと起業家精神を備えた創意人材を養成します。

特に、工科大学生を対象に特許明細書作成教育を履修するよう推進し、知的財産に強い実践型人材に育成する方針である。

企業に対しても、企業別の特許保有件数と企業規模を考慮し、企業別・水準別で理論・事例・実習を融合した実務教育を提供します。

(2)軍将兵に対する発明振興及び知的財産教育を拡大します。

軍将兵を対象にする発明競争大会、発明サークル活動などの知的財産教育を実施し、これを基に兵役を終えた後も自然に創業・就業と連携できるよう、軍兵役期間をより価値あるものにします。

特に、軍兵役中に終了した知財権教育を、大学において正規の学点として認められるよう推進します。

  • 知的財産教育の先導大学(2013年、ソウル大学、檀国大学、仁荷大学など6大学)などとまず協力を推進します。

(3)アイデアから特許創出・創業まで支援するIP創造ZONEを運営します。

地域住民らがアイデア創出により知財権獲得、活用及び創業に至るまでの支援を一括して受けられるIP創造ZONEを設置し、知的財産基盤の創造経済実現に向けた地域の中心的な役割を果します。

  • アイデア広場→創造教室→特許研究室→創業センターなどで公正し、地域住民のアイデアを3Dプリンター工作機具などで具現し、特許出願及び創業まで一括支援する。
  • 未来部が推進する「無限想像室」プロジェクトと連携し、特許庁、自治体、地域企業などが協力して運営を推進する。

今後の推進計画

今回の実現戦略は、朴・グンへ政権の創造経済青写真である「創造経済実現計画(6月5日)に対する知的財産分野の細部計画です。
国政課題「知的財産の創出・保護・活用体系の先進化」を体系的に推進するため、特許庁の今後5ヵ年マスタプランの性格を含んでます。

今後、ここに含まれる革新的な事項などは、
未来部、産業部などの関連部署との緊密な協議を経て政府レベルの政策として具現化していき、
施行課程においても、部署間、産・学・研の関連機関との緊密な協業を経て効率的に推進していく方針であります。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
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