知的財産ニュース 知的財産の専門人材不足、「お尻についた火」

2013年1月5日
出所: 電子新聞

3970

韓国電子情報通信産業振興会の特許支援センターが電機・IT企業の特許経営状況の分析を行った。電機・IT分野の特許紛争が激化している現状を受け、適切な支援策を設けるのがその目的だ。電子新聞は、2回にわたり、知的財産(IP)人材、投資、紛争の予防、紛争の実態と企業の要求事項を集中分析する。

専門人材の確保、「お尻についた火」

テレビを製造する中小企業A社は、テレビ通販専門企業にテレビを納品することにした。その条件として「ドルビー社」の技術が搭載されたテレビを要求された。A社は、ドルビー社に使用料を支払い、テレビ製造を準備したが、イニシャル使用料、銀行の信用状(LC)などの追加費用1億5000万ウォンを支払わなければならないことは知らなかった。特許専門人材が不在し、関連知識がなかったためだ。結局、会社はドルビー社の技術を諦めざるを得なくなった。その後、A社は、特許担当者を雇用し、特許の使用・ライセンス契約などのIP関連業務を任せた。特許担当者は、「中小企業では、IP関連知識がなく、特許紛争などの様々なリスクにうまく対処することが難しい」と述べた。

「平均3.7人」。韓国電子情報通信産業振興会の特許支援センターが電機・IT企業を相手に調査した業界が望むIP専門人材の人数だ。しかし、中小・中堅企業では、投資余力が無く、特許専門人材を雇用できていない状況だ。業界の関係者は、「中小・中堅企業で特許専門家を雇用している会社は僅かだ。海外輸出企業くらいが1人程度の特許担当者を持っているが、毎回特許問題が発生するのではないため、他の仕事も並行している」と実態を語った。

電機・IT業界における特許専門人材の保有率は35.4%だ。1000億ウォン以上の売上高を計上している企業では、約半分(54.4%)程度が特許専門人材を雇用しているが、売上高300億ウォンを下回る企業では、18.5%程度が専門人材を雇用しており、IP紛争への対応は不十分な状態だ。

IP関連部署がない電機・IT企業は、全体の60.8%だ。IP関連費用の支出を年間1000万ウォン以下にしている企業のうち、84.4%が専門部署を置いていないと調査された。

電機・IT企業が専門部署を置かない理由は、「必要がないため」だ。半分(48.4%)近くの企業が専門部署の必要性を感じず、潜在的な特許紛争の可能性を認識していない状態だ。特許支援センターは、「依然として多くの企業が特許紛争に露出されているが、特許経営に舵を切るには、経営陣の経営マインドがまだ低い水準であると言わざるを得ない」と説明した。

専門部署を運営・維持する予算が不足しているのも問題だ。特に、売上高300億ウォン未満の中小企業は、特許専門人材の維持予算の不足を最も大きな理由にあげた。2社のうち1社は予算不足により、特許紛争に対応できる条件を整えないと訴えている。業界の関係者は、「中小企業では、別の予算を投じてIPに対応することは難しい。特許関連の紛争に備えられることさえできていない」と語った。

業界の特許専門人材の不足は、特許紛争の可能性を高めている。技術開発や新製品の企画段階で特許紛争を事前に予防できる最も効果的な方法である先行技術調査さえ行われていない。特許支援センターは、「電機・IT企業の中で先行技術調査を必ず行うと答えた割合は22.4%に過ぎない。多くの企業が特許紛争に露出されている状態だ」と述べた。IP関連の紛争を経験した企業は、先行技術調査を実施し、今後発生し得る特許紛争に対応していた。紛争経験がない企業より2倍近く高い比率で先行技術調査を行っているという。

人手不足で特許関連の競合会社や市場モニタリングも難しい状況だ。アンケートに答えた企業のうち、「競合会社の特許や該当分野の市場モニタリングを行っている」企業は、18.5%にすぎなかった。売上高300億ウォン~1000億ウォンの間の企業のうち、「必ずモニタリングする」企業は10.7%にすぎず、多くの中小・中堅企業が特許紛争の可能性を潜めていることが分かった。

特許支援センターのイム・ホギセンター長は、「特許紛争が発生した際にだけ、専門人材が必要になるわけではなく、R&Dから製造・販売まで全段階でIPを管理する必要がある。企業の生き残り戦略として特許経営が重要視される時からIP人材・部署などに積極的に投資する必要がある。」と述べた。

クォン・ドンジュン記者

電機・IT企業の売上高別の知的財産投資費用(単位:%)

1千万以下

1千~5千

5千万~1億

1億~10億

10億以上

全体

35.9

25.2

13.4

20.4

5.0

売上高

300億未満

62.0

34.0

7.6

6.4

0.0

300億~1000億

20.0

34.7

16.0

29.3

0.0

1000億~1兆

7.7

28.2

25.6

32.1

6.4

1兆ウォン以上

3.0

3.0

9.1

45.5

39.4

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195