知的財産ニュース 韓国特許庁、知財金融政策をリードする

2013年2月1日
出所: 韓国特許庁

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2006年以降2650億ウォン規模の特許担保補償を連携、予算比40倍の効果
評価と連携した知財金融の多角化誘導及び本格支援

「知的財産権金融」が話題だ。最近、各部署及び公共・民間の金融機関から「知的財産を担保にする」、「知的財産の価値を基盤にする金融投資や貸し出しなどを拡大する」、「新しく推進する」などといったメディアの報道をよく耳にする。

雰囲気も悪くない。新たに発足した政府は、「創造経済」を政策基調の第一として掲げており、昨年6月からは、「動産・債権などの担保に関する法律」において新設された特例条項によって多数の知的財産権を担保できる基盤が整った。

専門家は、知財金融の活性化を実現するためには「知財に対する評価基盤の充実」と「知財の評価と金融を連携するモデル」が必須だと指摘する。知財の価値は、環境・条件・権利者などによって変動しやすく、変動性の高い資産で投資を行うためには、客観的な評価が先行されなければならないためだ。

韓国特許庁は、知財金融だけでなく、知財の評価も重要だと認識しており、知財の評価と金融を連携して知財を基盤にした金融投資が活性化できるよう、これまでも様々な支援を行ってきた。

2006年からは、技術補償基金と協力して中小企業の保有した特許を価値評価し、特許の価値内で補償を支援する「特許価値評価の連携補償」を推進している。韓国特許庁が特許価値評価に要される費用を支援し、技術補償基金は、価値評価の結果を中小企業の補償に反映する構造だ。

信用度や不動産・証券などの担保余力が低下している中小企業が特許権だけを担保に補償書を与えてもらい、市中銀行から通常9割補償率として認められて事業化のための資金を貸し出し可能となっている。(例:4億5000万ウォンの補償書を発給された場合、銀行は5億ウォン(4億5000万ウォン÷90%)の貸し出しを支援)

2006年から2012年までに計1355社の中小企業に約2650億ウォン規模の補償支援が行われた。政府支援の効率性の面からは、投入予算比の約40倍に達する資金調達効果が表れ、非常に効果的な支援として評価されている。

特許技術価値評価の連携補償支援の統計

区分

06

07

08

09

10

11

12

13

支援会社数(社)

110

211

388

119

120

146

261

1355

補償金額(億ウォン)

263

361

707

278

270

319

452

2650

支援を受けた企業の反応も非常に好意的だ。長引く景気不況により、中小企業の資金繰りの悪化に拍車がかかっている状況で、保有の特許権だけでも適時に資金のやりくりができるという同事業への満足度は高い。

一例として、車両向けブラックボックスの生産のために優秀な特許権を多く保有している(株)ジオクロス社は、売上の実績や担保能力が低下して資金調達が難しいところ、2009年に「特許価値評価の連携補償」を通じて約2億ウォンの補償を受け、事業化資金の調達が可能となった。それを利用して事業化に成功して2010年20億、2011年85億の売上げを達成するなど、著しく成長している。

韓国特許庁は、知財金融の新たな支援モデルとして、ベンチャキャピタルと連携した投資連携の特許評価支援を今年から本格推進する。「投資連携特許評価の支援」とは、評価期間を通じて中小・ベンチャ企業が有する特許を評価し、その結果をベンチャキャピタルに提供する。ベンチャキャピタルが中小企業に対する投資を決める過程でその結果を活用するという構図だ。投資決定時の企業の技術力と特許権の価値が正確に反映され、技術中心の優秀な中小・ベンチャ企業に投資資金を提供できるように支援する事業だ。

2012年に行われた投資連携の特許評価支援モデル事業で支援を受けた(株)elyzerの場合、特許評価の結果をもって保有の特許権と技術力の優秀性をあるベンチャキャピタルから客観的に確認を受け、10億5000万ウォンの投資契約を締結した。

しかし、韓国のベンチャキャピタルも全てを知財中心の投資はできていないため、現在と今後の需要を踏まえ、2013年には約30件を支援し、多くの成功事例を残して知財中心の投資の重要さを周知させていくと同時に、支援の規模も拡大していくというのが韓国特許庁の計画だ。

さらに、「動産・債権などの担保に関する法律」が施行されたことで、民間の金融機関が知財を担保に実際に金融支援を行えるよう、知財の評価、担保化策、知財担保を利用した回収策などについて研究を行う。そのほか、中小企業振興公団、産業銀行など、現在知財金融に対する支援及び投資計画を立てている公共・民間の金融機関とも協力して知財金融のモデルをさらに多様化し、知財金融が活性化できる基盤作りのための取り組みを行う予定だという。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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