知的財産ニュース 国家知識財産委員会、30大の中心知的財産事業に集中支援

2012年7月27日
出所: 国家知識財産委員会

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2013年の知的財産に関する財源配分の方向を審議・議決、集中投資事業及び分野を提示

大統領所属の「国家知識財産委員会」(共同委員長:国務総理・民間委員長の伊ジョンヨン、以下、知財委)は、27日、金ファンシク総理の主催で第5回会議を開き、
“2013年度の知的財産資源配分の方向"を審議・議決して国家知的財産戦略の推進に必要な財源を円滑に確保し、知識財産事業を効率的に運用するための案を提示した。

知財委は、4月に発表した“2013年度の知的財産集中投資の方向"に基づき、知的財産事業を約300分野に分類し、
そのうち、来年に投資が急がれ、特に重要だと判断される“海外における知的財産権の保護活動の強化"など30大中心事業(8大分野)を選定(添付1を参照)すると同時に、個別事業に対する財政運用における改善策などを知的財産の観点からの政策コンサルティングを提供してきた。

同財源配分方向は、(1)2013年度の知的財産主要投資方向との整合性、(2)各部署の政策的な判断への十分な考慮、(3)財政事業運用を改善するためのコンサルティング推進という原則の下、まず関係部署と協議して82の事業を審議対象に選定し、

7月の初めに専門家で構成された6組の審議組(33人)により、さらに審議を行ない、30大の中心事業を選定したものであり、本日に国家知識財産委員会で最終確定したものだ。

8大分野別の30大中心事業における予算規模の現状

8大の集中投資分野

予算(単位:百万ウォン)

12年予算(A)

13年要請(B)

増減

B-A

%

1. 競争力のある知的財産の創出及び管理強化(6個)

344,982

352,435

7471

2.2%

2. 知的財産の紛争対応支援及び侵害物取り締りの強化(5個)

35,828

37,025

1197

3.3%

3. 知的財産の事業化を促進(5個)

77,003

66,965

10035

13.0%

4. 知的財産の専門人材の育成及び認識の向上(4個)

20,252

20,103

149

0.7%

5. 新たな知的財産の育成に向けた基盤構築(4個)

85,147

122,935

37788

44.4%

6. 国家知的財産のガバナンスを構築(4個)

17,412

14,819

2593

14.9%

7. 地域の知的財産の活動基盤を強化(1個)

24,244

24,744

500

2.1%

8. 知的財産における公正な社会を実現(2個)

6,822

1,232

5590

81.9%

今回の知的財産の財源配分方向は、“第1次国家知的財産基本計画"のビジョン・戦略目標の達成における財政的な土台を構築するため、(1)投資の戦略的な強化、(2)主要知識財産事業(30件)の重点的な支援、(3)各部署の知的財産事業の財政運用の改善などの基本方向にしたがって決められた。

来年度の財源配分方向の総論で、国務総理室の林ジョンリョン室長は、「雇用創出や中小企業及びサービス産業の活性化等、知的財産の経済への貢献度を積極的に考慮し、来年度の知的財産事業の財源を戦略的かつ積極的に維持・強化すべきだ。」と強調した。

そして、8大の集中投資分野のうち、投資が戦略的に拡大されるべき分野として、重要度に比べて投資が不十分だった(1)知的財産の紛争対応への支援及び侵害品の取締り※1の強化、(2)地域の知的財産の活力基盤を強化※2及び、(3)知的財産の専門人材の育成等、知的財産の政策基盤作り分野への投資拡大が求められているということを明記した。

※中小・ベンチャー企業のうち、12.5%が知的財産権から保護されず、技術の流出及び侵害による被害は、年間売上高の約12%に上る(12.1、中小企業庁)。
※※中小企業の場合、資金難が優秀な知識財産創出の足かせとなっており、一部の市道では2012年に145件の海外特許出願費用の支援要請があったが、予算不足の問題で56件だけを支援して早期に締め切られた(慶尚南道等)。

また、各部署所管の知的財産事業の財政運用改善案として、

  • 優秀な知的財産の創出に向けてR&D管理を強化(企画段階からの知的財産戦略の反映、国内外への特許出願登録・維持に別途の費目化を誘導)
  • 個別の部署が推進している事業の連携・調整を強化し、財源投入の効率を向上、
  • 非R&D事業のうち、保護・執行、国民及び企業の認識向上等、小規模な予算を投入しても高い政策効果が得られる個別事業の改善需要を見出す
等を提示した。

2013年度の知的財産における財源分配の方向

金ファンシク国務総理は、「本日議決された知識財産の財源配分方向は、国家知的財産戦略を財政的に後押しする重要な投資戦略だ。」とコメントし、
「委員会が発足1年目を迎えるこの時期にこれまでの過程を振り返てみると、各部署や自治体が政策の樹立と執行の過程で知的財産を考慮する動きが見られ」、
「大学、研究機関、企業等の民間においても知的財産の重要性に対する認識が拡大するなど、知的財産が国のアジェンダとして位置付けられつつある」と評価し、知財委発足(11.7.28)1年目を迎えての所感を述べた。

一方、この日に知識財産研究院の金ウォンジュン院長は、「主要国の知的財産戦略:最近の政策動向と示唆点」を発表し、日米中等の主要国は知的財産政策の推進においての確固たるエンジンを構築するために財政投資を持続的に拡大しているという分析を発表した。

米:2013年の知財権創出R&D予算の5%(158.2兆ウォン)、特許審査予算9%を増額
日:2012年の知的財産4大中心戦略(国際標準化等)予算29.3%増額(848億円→1,097億円)
中:知財権の創出R&D投資をGDP比1.7%(09')→2.5%(20')に拡大、約1億人民元の海外特許支援特別資金など

韓国政府も知的財産の重要性を認識し、財政的な支援を増やしてはいるものの、知的財産政策の初期動力を十分に確保するにはまだ足りない状況である。

※2012年の知的財産における予算増加率は、3.4%と平均予算増加率(5.3%)より低い
※※知的財産予算の総額増加推移:7.1兆ウォン(2010年)→8.2兆ウォン(2011年)→8.4兆ウォン(2012年)
(2013年の予算要請額は、8.1兆ウォンとなり、これは2012年事業を基準にした推計である。R&Dなどの2013年度新規知的財産事業を含めると2012年の水準を上回ると予想されている。)

知財委は、この日に確定した「2013年度の知的財産財源の配分方向」を直ちに企画財政部、国家科学技術委員会及び事業を行なう各部署に報告し、来年度政府予算編成(案)に反映する計画であり、
今年末に樹立する「2013年度の国家知的財産の施行計画」にも反映して知的財産戦略と財政投入計画との連携を強化する予定だ。

一方、委員会は、案件審議に続き、「財源の配分と知的財産事業の効果的な運用」をテーマに関係部署の長官及び民間委員の間で活発な討論を行なった。

財源配分方向のうち、(1)投資強化が急がれている分野として明記された保護分野は黄ウィイン弁護士(法務法人太平洋)が、(2)著作権人材育成は文化部の郭ヨンジン次官が、(3)地域の知的財産活動の基盤強化に対しては特許庁の金ホウォン庁長等がそれぞれ討論に参加し、
(4)知的財産という立場からの中小企業の育成及び技術流出の防止と関連しては、知識経済部の趙ソク次官と公取委の鄭ジェチャン副委員長がそれぞれ政府政策の方向を示した。

伊ジョンヨン民間委員長は、「国家知的財産戦略を有効に推進するため、予算の反映とともに各部署別の事業の充実した運用と、たゆまぬ改善努力が必要だ。」と指摘し、
「知財委は、今後、政府予算編成と各部署の事業執行改善を持続的にモニタリングし、戦略と財政投資がきちんと連携されるように取り組みたい。」と述べて討論をまとめた。

金ファンシク総理は、会議を終えるにあたり、「国家知識財産の基本計画及び施行計画、そして財源配分の方向を定めたことで、中長期的な骨太戦略が整っただけに、
知財委は、今後、知的財産生態系の円滑な循環においてネックとなり得る現場での障害要因を見極め、積極的に解消してほしい」と要請した。

一方、今回の財源配分方向の樹立において実務を総括した知識財産戦略企画団の髙キソク団長は、「これからは韓国も、その質を高めることで知的財産を若者の持続可能な雇用創出政策の中心軸として積極的に活用すべきであり、持続的な政府による投資とともに、民間部門との協力を広げていくべきだ。」と述べた。

資料:2013年度知識財産財源配分方向の30大中心事業

2013年度政府知的財産
8大の中心投資方向

中心的な知識財産事業

2013年の
予算要請
(100万ウォン)

所管部署

R&D事業の
可否

1.競争力のある
知識財産創出及び管理強化

3Dコンテンツ産業の育成

8,000

文化部

非R&D

著作権技術及び標準化支援

1,875

文化部

非R&D

産業融合技術産業における基盤技術の開発

86,600

知識経済部

R&D

中小企業の技術革新の開発

244,823

中小企業庁

R&D

標準特許創出を支援

2,115

特許庁

非R&D

民間のIP-R&D戦略を支援

9,040

特許庁

非R&D

2.知的財産の
紛争対応への支援及び
侵害物の取締りを強化

国内知的財産権保護活動の強化

5,770

特許庁

非R&D

著作権保護活動の活性化

10,081

文化部

非R&D

海外における知的財産権保護活動の強化

8,818

特許庁

非R&D

著作権保護及び利用活性化技術開発

5,150

文化部

R&D

密輸取締り

7,206

関税庁

非R&D

3.知的財産事業化の促進

特許技術の戦略的事業化を支援

8,993

特許庁

非R&D

技術拡大の支援(主要・新産業)

17,750

知識経済部

R&D

国家技術士さんの活用を促進

32,475

知識経済部

非R&D

大学・政府系研究機関の知的財産専門人材を育成

5,497

特許庁

非R&D

自由利用の著作物創造の資源化

2,250

文化部

非R&D

4.知的財産の専門人材の
育成及び認識向上

需要者中心の知的財産専門人材を育成

6,306

特許庁

非R&D

文化コンテンツの専門人材を育成

7,000

文化部

非R&D

著作権の教育・公報

4,154

文化部

非R&D

知的財産人材養成のe-learningを運営

2,643

特許庁

非R&D

5.新知的財産の育成基盤
構築

Golden seedプロジェクト

34,520

農食品部

R&D

次世代のバイオグリーン21

70,000

農村振興庁

R&D

品種審査及び栽培試験

10,915

農食品部

非R&D

伝統的な発酵食品の育成

7,500

農食品部

非R&D

6.国家知的財産ガバナンス構築

特許情報活用のインフラを構築

5,008

特許庁

非R&D

著作権情報管理及びサービス

1,324

文化部

非R&D

知的財産の研究活性化

6,384

特許庁

非R&D

デザイン審査支援

2,103

特許庁

非R&D

7.地域の知識財産活動の
基盤強化

地域の知的財産創出を支援

24,744

特許庁

非R&D

8.知的財産の公正社会を
実現

産業技術の流出防止及び保護基盤構築

1,232

知識経済部

非R&D

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