知的財産ニュース 電力問題の解決は建物から
2012年7月17日
出所: 韓国特許庁
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建築一体型ソーラー発電システムの特許出願が増加
建物から電気を生産・供給する「建築一体型ソーラー発電システム」関連特許の出願が増加しているという。建築一体型ソーラー発電システムは、建物の外壁や窓に太陽電池1)を取り付けて電気を作り出す技術として電力問題の解決に大きな役割を果たすと期待されている。
韓国特許庁によると、建築一体型ソーラー発電システム関連の特許出願は、2007年から増加し始め、2008年29件、2009年55件、2010年55件、2011年41件と、ここ3年間毎年40件以上の特許が出願されている (資料1を参照)。
これは、再生可能エネルギー設備の設置義務制度2)が施行されたことで、関連業界が建築一体型ソーラー発電システムの需要の増加を見込み、市場を先取りするため技術開発に力を入れた結果だと分析できる。2011年度に出願件数がやや減少したのは、欧州経済危機のあおりで、太陽光産業の全般的な低迷が影響したためだとみられる。
技術分野別の特許出願の動向をみてみると、支持構造技術が54件(27.0%)、染料感応の太陽電池3)技術が26件(13.0%)、視野確保技術が25件(12.5%)、光経路変更技術が19件(9.5%)、美観改善技術が15件(7.5%)の順となった(資料2を参照)。
建築一体型ソーラー発電システムは、一般的に支持構造技術、染料感応太陽電池技術の出願が多い。視野確保技術と美観改善技術の出願が一定の割合を占めている理由は、ソーラー電池が建物の外壁や窓に設置されるため、採光性と美的な部分も重要な要素のためである。
韓国特許庁の関係者は、再生エネルギー設備の設置義務制度、グリーンホーム100万世帯普及事業、ソウル・ソーラー都市建設など、様々な政策的取組みと電力問題解消の一環として建物一体型太陽光産業は、市場規模がさらに大きくなると予想している。そのため、技術競争力を確保するための特許出願がさらに重要になると予想した。
注記
1) 太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変える半導体装備。光を照らすと電荷が移動して電気が発生する。
2) 新エネルギー及び再生エネルギーの開発・利用・普及促進法第12条第2項に基づき、2004年の3月から施行された制度であり、公的機関が真・増・改築する延べ面積1,000m2以上の建築物を対象にエネルギー消費予想量の10%以上を再生エネルギー設備の設置に投資する事を義務付けた制度
3) 太陽電池の種類、太陽の光に露出された染料が酸化還元反応を起こし、電子の流れを生成して電気が発生する。
資料1:建築一体型ソーラー発電システムの年度別特許出願件数(単位:件数)
年度 |
2004 |
2005 |
2006 |
2007 |
2008 |
2009 |
2010 |
2011 |
合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
出願件数 |
1 |
1 |
6 |
12 |
29 |
55 |
55 |
41 |
200 |
資料2:建築一体型ソーラー発電システムの細部技術分類
技術分類 |
細部の技術内容 |
出願件数 (比率) |
---|---|---|
支持構造 |
太陽電池を建築物に堅く固定させるために太陽電池と建築物の間の連結構造に特徴がある |
54 (27.0%) |
染料感応太陽電池 |
多様な色の表現が可能で、建築物の曲面にも適用可能な染料感応太陽電池を使用 |
26 (13.0%) |
視野確保 |
太陽電池によって外部のビューが遮られることを防止するために太陽電池に光が通過できる穴を作る方法で外部からの視野を確保 |
25 (12.5%) |
光経路変更 |
太陽電池周りの光を反射させて太陽電池に向けるなどの方法で太陽光の経路を変化させて効率を向上 |
19 (9.5%) |
美観の改善 |
太陽電池の模様や色を変えて美観を改善 |
15 (7.5%) |
冷却 |
太陽電池が高温で誤作動することを防ぐために太陽電池の温度を下げる |
14 (7.0%) |
造成物 |
耐久性や結合力などの特殊な機能を向上させるために特別な物質を使用 |
12 (6.0%) |
その他 |
その他の様々な技術 |
35 (17.5%) |
合計 |
200 (100%) |
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