知的財産ニュース スマートフォン関連の特許訴訟合戦の第2幕、国内の対応策は?

2012年9月4日
出所: 韓国特許庁

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世界のLTE標準特許、2012年6月現在、前年比21.4%増加

欧州電気通信標準化機構(ETSI)に申請されたLTE[1]特許標準を韓国特許庁が分析した結果、今年上半期だけで前年比21.4%(1,139件)増加し、LTE市場の急伸とともにそれに伴う特許訴訟合戦が激しさを増すことが予測されると発表した。

今年上半期にLTE標準特許の申請件数が急増した理由は、2012年1月に国際電気通信連合(ITU)でLTE-Advancedが4G移動通信規格に承認されたことを受け、関連企業がLTE関連特許をETSIに多数登録したのが要因だと分析されている。

LTE標準特許の保有順位の動きを見ると、サムスン電子が前年比20.6%(140件)増加し、819件(12.7%)で首位となり、ファウェイが前年比32.5%(98件)増加して402件(6.2%)で5位にランクされ、アップルが318件(4.9%)で新しく10位にランクインした。
※資料1 LTE標準特許の動向分析を参考

特に、アップルは、2011年までLTE標準特許を1件も申請しなかったが、その確保が急増したほか、ファウェイなどの中国企業も急速に成長しているため、今後こうした企業と韓国企業とのスマートフォン市場における競争が加熱化すると予想した。

一方、アップルが申請したLTE標準特許318件を分析した結果、自社保有特許の44件と、2011年ノーテルから買収した無線通信分野特許の214件に加え、フリースケールから買収した56件の特許をLTE標準特許としてETSIに申請したと把握された。アップルが筆頭株主の特許管理会社(NPE)ロックスタービドコ(Rockstar Bidco)がLTE標準特許116件を保有しているため、実際にアップルが保有したLTE標準特許は、420件に上ると把握された。

これは、アップルがLTE対応スマートフォンの生産に向け、関連特許紛争に備えるため、知財権の確保に戦略的に取り組んでいることを示している。アップルは、ロックスタービドコを通じてLTEだけでなく、自社製品と関連のある様々な特許を積極的に買収している。

代表的な特許管理会社のインター・デジタルの場合、780件(12.1%)を保有して2位を維持しており、韓国企業に脅威となっている状態だ。

このように、グローバル外国企業と特許管理会社は、様々な方法で標準特許を確保し、活用している。こうした状況を受け、関連標準特許の政策方向を確立し、韓国企業間の標準特許情報を共有するため、韓国特許庁は、韓国産学研を中心に「標準特許戦略フォーラム」を9月18日に開催するという。

今回のフォーラムでは、「標準特許創出に向けた支援」を行なうため、現行政策を分析し、今後の方向設定と産学研、特に、中小・中堅企業による特許創出と活用に向けた方策について議論する。さらに、国際標準化機構のFRAND[2]条件などの知的財産権政策についても議論を行う。

韓国特許庁の関係者は、「今回の戦略フォーラムでは、標準特許に係る現場の専門家が集まる場であるだけに、国内の産学研のための標準特許支援政策について実質的な意見交換ができる良い機会になると期待している。」と述べた。

資料1:LTE標準特許の動向を分析※

※ETSIに提出された企業及び機関のマニフェストのうち、IPR Information Statement Annexに記載されたProjectまたは、Standard Name項目にLTE, E-UTRA, E-UTRAN, release8~10と記載された6,462件を分析(2012年6月基準)

年度別におけるLTE標準特許の申請推移

図:年度別におけるLTE標準特許の申請推移グラフ

国別のLTE標準特許の現況

順位

国家

特許件数

割合(%)

1

米国

2,493

38.4

2

韓国

1,315

20.4

3

中国

1,061

16.5

4

日本

581

9.0

5

スウェーデン

412

6.4

6

フィンランド

389

6.0

7

台湾

92

1.4

8

フランス

81

1.2

9

ドイツ

35

0.5

10

オランダ

2

0.1

11

イギリス

1

0.1

図:国別のLTE標準特許の現況グラフ

企業別のLTE標準特許の現況

順位

企業名

特許数

割合(%)

順位

企業名

特許数

割合(%)

1

Samsung

819

12.7

11

NTT DoCoMo

281

4.4

2

InterDigital

780

12.1

12

CATT

279

4.3

3

Qualcomm

687

10.6

13

Sharp

147

2.3

4

Ericsson

412

6.4

14

Texas Instruments

146

2.3

5

Huawei

402

6.2

15

Nortel※

116

1.7

6

Nokia

389

6.0

16

Panasonic

110

1.7

7

LG

385

6.0

17

Alcatel-Lucent

77

1.2

8

ZTE

380

5.9

18

ETRI

60

0.9

9

Motorola

374

5.8

19

Pantech

51

0.8

10

Apple

318

4.9

20

HTC

45

0.7

※2011年7月1日、ロックスタービドコ(アップル、MSなど6社により設立されたNPE)に買収された特許に含まれている。

図:国別のLTE標準特許の現況グラフ

アップルが申請したLTE標準特許の現況

元特許権者

変動事項

特許件数

Nortel Networks

Rockstar Bidcoから特許権を譲渡※

214

Freescale Semiconductor

2011年5月23日にアップルがFreescaleから200件以上の特許を買収し、買収された特許権の一部

56

Apple

アップル社が出願した特許及びスティーブジョブズが設立したNext Computerの特許まで含まれている

44

個人出願(イギリス)

イギリスの個人出願件をRockstar Bidcoが買収し、アップルが特許権に特許権を譲渡

2

Telia

スウェーデンのTeliaがInterllectual Ventureに特許を売却し、これをアップルが買収

1

Neocific

米国のNeocificの特許をアップルが買収

1

※現在、ノーテル特許の所有権がRockstar Bidcoからアップルに移転されていると把握している。


注記

[1] 本資料におけるLTE(Long Term Evolution)は、ETSIのE-UTRA, E-UTRAN, release8~10標準に含まれたLTE関連記述の全てを意味し、LTE-Advancedは、release10に該当する。
[2] FRAND(Fair, Reasonable And Non-Discriminatory)条件:

  • 公正(Fair):契約の内容及び手続き-ライセンス契約の内容が両当事者に公平で、その手続きが相互に理解できるものとしなければならない。
  • 合理的(Reasonable):契約内容の結果-ライセンス契約内容が両当事者に受け入れ可能で、その結果に応じて実施できるものとしなければならない。
  • 非差別的(Non-Discriminatory):ライセンス契約が他の標準契約関連のライセンス及び他の当事者と比べて差別してはいけない。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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