知財判例データベース デザインとしても使用される商品の立体的形状が立体商標の権利範囲に属すると判断された事例

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
A (請求人、被告、上告人) vs B (被請求人、原告、被上告人)
事件番号
2023フ11012判決
言い渡し日
2026年02月26日
事件の経過
破棄差戻し

概要

 被告は指定商品を「牽引可能なレジャースポーツ用空気注入式水上器具(チューブ)」等とする登録商標の商標権者であるところ、被告は原告を相手取って、原告の「牽引チューブ」商品の形状を確認対象標章として、それが被告の登録商標の権利範囲に属すると主張して積極的権利範囲確認審判を請求した。特許審判院は被告の請求を認容する審決を下したが、特許法院である原審は、原告の確認対象標章が商標として使用されたものではないとして審決を取り消し、これに対して大法院は確認対象標章が商標として使用されたものとして原審を破棄・差し戻した。

事実関係

 被告は、指定商品を「牽引可能なレジャースポーツ用空気注入式水上器具(チューブ)」等とする立体商標を2019年7月に出願して2020年8月に登録され、当該登録商標は、その前面及び側面に「Flyfish」、「この図は、登録商標の側面に表示されている文字です。」等の文字が表示されており、立体的形状と文字が結合されて構成された標章である(以下、「本件登録商標」という)。
 原告の確認対象標章は、その使用態様等で確認されるように前面に「Aqua festa」が表示されている。
 一方、被告は本件登録商標の出願前である2004年1月にレジャー用ボートに関するデザイン出願をして登録を受け、2019年12月までデザイン権を維持している。当該デザインは、登録商標とは一部異なる点があることを除いては同一である。

区分 本件登録商標 被告の登録デザイン
正面図 この図は、本件登録商標の正面図を示したものです。 この図は、被告の登録デザインの正面図を示したものです。
平面図 この図は、本件登録商標の平面図を示したものです。 この図は、被告の登録デザインの平面図を示したものです。
右側面図 この図は、本件登録商標の右側面図を示したものです。 この図は、被告の登録デザインの右側面図を示したものです。
斜視図 この図は、本件登録商標の斜視図を示したものです。 この図は、被告の登録デザインの斜視図を示したものです。

原告の確認対象標章 原告の使用態様
この図は、原告の確認対象標章を示した写真です。 この図は、原告の使用態様を示した写真です。

判決内容

 原審判決では、原告の確認対象標章は装飾用デザインに過ぎず、商品の出所表示又は識別標識として使用されたものではないとして、被告の本件登録商標の権利範囲に属さないと判断した。
 これに対して大法院は、まず従来の見解を以下のとおり説示した。
「デザインと商標は排他的・選択的な関係にないため、デザインになり得る形状や態様であっても、それが純粋にデザインとしてのみに使用されたものではなく、商標の本質的な機能である自己の商品と他人の商品との識別、即ち、自他商品の出所表示のために使用された標章であると認められる場合には、こうした標章の使用は商標として使用されたものと解すべきである。このとき、その標章が商標として使用されたか否かは、標章と商品の関係、商品等に表示された位置や大きさ等、当該標章の使用方式、登録商標の周知著名性及び使用者の意図と使用経緯等を総合し、実際の取引においてその表示された標章が商品の識別標識として使用されているか否かを基準として判断すべきである。」
 続いて大法院は、被告の登録デザインは一部を除いて立体的形状と同じであり、デザイン権の存続期間満了時まで独占的・排他的権利があり、被告商品の販売前後からデザイン出願・登録時までこのような立体的形状を帯びている他の牽引チューブが存在せず、独特の形態的特徴、販売された期間と紹介・広告された程度、取引の実情等を総合してみると、本件審決当時、需要者に被告商品の出所表示として十分に知られていたとみることができると判断した。これに対し、原告の確認対象標章の使用方式は独特の形態的特徴を有する登録商標の使用方式とさほど変わらず、原告は需要者に被告商品の出所表示として知られている登録商標の名声等に便乗するために、登録商標の形態とさほど変わらない確認対象標章を使用したと認められるという点で、原告の確認対象標章における商品の形状はデザインとなり得る形状でありながらも、実際の取引において他の商品と区別する識別標識にも使用される標章であることから、純粋にデザインとしてのみに使用されたとはいえず、確認対象標章は商標として使用されたものと認められると判示した。

専門家からのアドバイス

 本件における原告の確認対象標章、すなわち空気注入式水上器具のような立体的形状は単に物品のデザインとしてのみ認められるのか、それとも商標としても認められるのか。
 これに関して大法院は、従来の見解を示した上で、デザインと商標とは排他的・選択的な関係にないため、商標の本質的な機能である自己の商品と他人の商品との識別機能があれば、商標として使用することができるということを判決で再確認している。
 加えて本件では、デザイン権による保護期間が終了した立体的形状であっても立体商標として商標権により保護が可能であることが示唆されている点で、韓国で商品の販売を展開する企業にとっては、長期間の権利保護を受けるための知財ポートフォリオの構築を検討する上で参考になる判決といえる。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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