知財判例データベース 韓国で国内未登録特許権の特許技術を使用し米国法人に支払った使用料については韓国に課税権があるとする大法院法理を適用し、原審判決を破棄・差戻した事例
基本情報
- 区分
- その他
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- 原告、被上告人(国内法人) vs 被告、上告人(永登浦税務署長)
- 事件番号
- 2022ドゥ35091法人(源泉)税拒否処分取消請求
- 言い渡し日
- 2026年01月08日
- 事件の経過
- 原審判決破棄及び差戻し
概要
韓国で物を製造・販売する韓国法人が米国登録特許権(すなわち国内未登録特許権)の使用料を米国法人に支払った場合において、当該特許権の特許技術が韓国で使用された場合、その対価として支払った使用料については韓国に課税権があると判断した(大法院2025年9月18日言渡2021ドゥ59908全員合議体判決に続く大法院判決)。
事実関係
原告は、米国法人Bとの間で米国特許権関連の訴訟等を終了し、原告が保有する4件の米国特許権と、B及びその子会社が保有する12件の米国特許権とを相互使用する対価として、原告がBに使用料を支払うこととする契約を2017年9月に締結した。原告は、2017年10月に上記契約による使用料をBに支払い、課税当局(永登浦税務署、被告)に源泉徴収分の法人税を納付した。その後、2018年3月に、原告は国内未登録特許権の使用料は国内源泉所得に該当しないことを理由として、それに該当する法人税の払い戻しを求める更正請求をしたが、被告はこれを拒否する処分を下した。これに対して原告は、拒否処分の取消しを求める行政訴訟を提起した。行政訴訟の1審(ソウル行政法院2020年12月10日言渡2019グハプ62093判決)と2審(ソウル高等法院2022年1月14日言渡2021ヌ30923判決)は、いずれも原告勝訴の判決を下した。
判決内容
韓国と米国間の「所得に関する租税の二重課税回避と脱税防止及び国際貿易と投資の増進のための協約(以下、「韓米租税協約」)は、第14条第4項で特許等の使用に対する対価として受け取る支払金を「使用料」と規定し、第6条第3項で「使用料は、ある締約国の同財産の使用に対して支払われる場合にのみ同締約国に源泉を置く所得として取り扱われる」と規定する。同協約第2条第2項は「この協約で使用されていても、この協約で定義されていないその他の用語は、異なる文脈によらない限り、その租税が決定される締約国の法律により内包する意味を有する」と規定する。韓米租税協約による「使用地」を確定するには、まず「使用」の意味を明確にする必要があるが、韓米租税協約は「使用」の意味を特に定義していないため、「使用」の意味は租税が決定される締約国の国内法により解釈すべきである。これに関し、旧法人税法第93条第8号(2017年12月19日に法律第15222号で改正される前のもの)は、国内未登録特許権が韓国で製造・販売等に使用された場合には、国内での登録の有無に関係なく国内で使用されたものとみなすと規定する。ここで「使用」とは、独占的効力を有する特許権自体を使用することではなく、その特許権の対象となる製造方法・技術・情報等(以下、「特許技術」)を使用する意味と解すべきである。したがって、国内未登録特許権の特許技術が国内で使用された場合には、その対価である使用料所得は、国内源泉所得に該当する(大法院2025年9月18日言渡2021ドゥ59908全員合議体判決)。
この法理に鑑みると、本件の使用料が、特許権の対象である特許技術を国内での製造・販売等に事実上使用することに対する対価である場合には、国内源泉所得に該当する。それにもかかわらず原審は、本件の使用料が国内未登録特許権に係るものであることのみを理由として、その特許技術が国内での製造・販売等に事実上使用されたかを判断しないまま、直ちに国内源泉所得に該当しないと判断した。このような原審の判断には、韓米租税協約上の国内未登録特許権に対する使用料の国内源泉所得の該非に関する法理を誤解し、必要な審理を尽くさずに判決に影響を及ぼした誤りがあるため、原審判決を破棄して事件を再度審理・判断するように原審法院に差し戻す。
専門家からのアドバイス
本判決は、大法院2025年9月18日言渡2021ドゥ59908全員合議体判決に続く大法院判決であって、同全員合議体判決の影響を考える上でも参考となるものといえる。
本件の争点は、韓米租税協約上の「特許の使用」の意味を、(i)いわゆる「国内未登録特許権の使用」も包括するように、当該技術を製造・販売に活用する「事実上の使用」とするか、あるいは(ii)特許権登録国での輸入・販売等の「特許発明の実施」とするかであった。従来、大法院は、特許権の属地主義原則を重視して1992年から2022年に至るまで(ii)の立場を取ってきたため、本件の1審及び2審はそれに従った判断をした。しかし、大法院は2025年9月18日言渡2021ドゥ59908全員合議体判決で(i)の見解に変更しており、本件大法院判決も同様の趣旨により判断した。
上記大法院全員合議体判決の内容については、ジェトロ判例データベース(2025年9月18日言渡2021ドゥ59908)をご参照いただきたい。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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