知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)2026年度予算に見る知財行政の展望

2026年02月11日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.209)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)

2025年12月2日に2026年度の知識財産処の予算が国会で議決され確定しました。前年比で742億ウォン(13.3%)の増額となり、政府における知財行政重視の姿勢がうかがえます。今回はより具体的な予算の内容を読み解き、今後予想される韓国知財行政の展望について解説を行います。

1.2026年度予算のポイント

2026年度の知識財産処の予算は、主に3つの大項目に分けて読み解くことができます。
1つ目は、迅速かつ適格な審査・審判サービスの提供のための予算。2つ目は、資金調達や輸出基盤整備、事業化や課題解決を支援するための予算。3つ目は、模倣品・偽造品対策や海外における韓国企業支援のための予算となります。
これらの具体的な観点に分けて、以下のとおりそれぞれ解説を行います。

2.迅速かつ適格な審査・審判サービスの提供のための予算

審査・審判に関しては、「先行技術調査を拡大し、人工知能審査技術開発、次世代審査システム構築など人工知能基盤の審査支援インフラを拡充する」、「主要輸出国の特許制度と審査傾向など実務情報を韓国企業に適時に提供する」と、プレスリリースされています。

より具体的な予算額は、以下のとおりで人工知能の活用を積極的に推進する点が分かります。

  • 国内特許・商標・意匠先行技術調査
    2025年:422億ウォン、2026年:513億ウォン(91億ウォン増加)
  • AI基盤特許行政革新
    2025年:20億ウォン、2026年:36億ウォン(16億ウォン増加)
  • 次世代知的財産行政システム構築 ISP/BPR
    2026年:11億ウォン(新規)
  • 海外特許審査制度分析
    2026年:8億ウォン(新規)

3.資金調達や輸出基盤整備、事業化や課題解決を支援するための予算

資金や基盤、事業化等への支援に関しては、「革新技術を保有する国内企業が知的財産を担保に安定的に事業資金を調達できるよう支援し、国際的競争力を有する中小企業がカスタマイズ型海外知的財産戦略を通じて輸出基盤を整備し、グローバル新興企業へ成長できるよう支援を強化する。また、優れた特許が埋もれることなく商用化されるよう『知的財産基盤技術事業化戦略支援』事業を新設し、国民の創造的アイデアで政策課題および技術問題を解決するためのアイデア公募も拡大する」とプレスリリースされています。より具体的な予算額は、以下のとおりで、知財金融も強化されそうです。

  • 担保産業財産権買取・活用
    2025年:23億ウォン、2026年:155億ウォン(132億ウォン増加)
  • グローバル知的財産スター企業育成
    2025年:120億ウォン、2026年:155億ウォン(35億ウォン増加)
  • 知的財産基盤技術事業化戦略支援
    2026年:100億ウォン(新規)
  • みんなのアイデア公募
    2025年:11億ウォン、2026年:63億ウォン(52億ウォン増加)

4.模倣品・偽造品対策や海外における韓国企業支援のための予算

模倣品等の対策については、「偽造品および模倣品による韓国企業の被害を根源的に遮断し、K―ブランドイメージを保護するため、新規事業を設置し積極的に対応する。知的財産保護全般にも人工知能技術を適用し偽造品鑑定を支援するとともに、企業の技術・アイデアが流出しないよう管理システムを構築する。また、最近増加する海外特許管理専門会社の知的財産訴訟から韓国企業を保護するための新規事業も編成した」とプレスリリースされています。より具体的な予算額は、以下のとおりで、模倣品対策が一層強化されるものとなりそうです。

  • 韓流便乗行為対応支援
    2026年:94億ウォン(新規)
  • 人工知能による偽造商品判定支援
    2026年:29億ウォン(新規)
  • 人工知能活用による営業秘密・技術流出防止支援
    2026年:12億ウォン(新規)
  • 海外特許管理専門会社危機対応基盤構築
    2026年:10億ウォン(新規)

まとめ

今回決定した予算を俯瞰(ふかん)すると、産業財産権の柱となる審査に関する部分では、特に先行技術調査に関連する予算が増加しており、世界で増大する技術文献への対応強化、特にAIを使った基盤整備が推進される点が分かります。また、いわゆる知財金融に関して、さらに積極的な展開が期待されます。そしてK―ブランドが世界的な人気を得ている現状での、模倣品対策も充実していく点も予算の増額から予想されます。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT知財人材部長等を経て現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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