知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)知財管理を安くするコツ

2012年12月12日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.51)
崔達龍国際特許法律事務所 弁理士 崔達龍

企業における知財管理が重要な必須業務であると認識され、定着してきている。しかし、特許などの出願、審査、登録後の権利維持には、相当の費用が発生する。そこで、知財管理に掛かる費用を少しでも節減するコツについて、出願から権利維持の段階にわたってご紹介したいと思う。

出願段階

日本企業が韓国に特許出願する場合、現行法では、明細書の韓国語訳が必須となります。もちろん、翻訳プログラムも利用できますが、韓国での審査に耐え、さらに後に権利書となるものですから、明細書の翻訳は、費用節減を考えるより、質的な面に重点を置いた方が結果として安くつくでしょう。
また、明細書・特許請求の範囲を作成する際、日本の制度と違う点として、特に請求項の多重従属の記載が問題となるケースが少なくありません。そのため、韓国の制度に合致しているか否か代理人とあらかじめ確認して出願することで、後の審査時に不必要な手続き補正を回避することができ、費用の節減になります。

審査請求段階

韓国特許庁における審査請求料は、請求項数によって計算されます。そのため、出願時に韓国での権利行使に不必要な請求項がないか確認しておきましょう。また、韓国は、審査請求期間が5年間ありますので、他国での審査結果も考慮し、拒絶されそうな請求項をあらかじめ削除してもよいでしょう。

審査段階1(意見書提出通知書への対応)

審査着手後は、大体1回は意見提出通知書(拒絶理由通知書)が送付されます。その際、字句修正程度の簡単な拒絶理由は、代理人に、「その事実を出願人に通知し、具体的な手続きは代理人に委任する」旨あらかじめ指示しておけば、意見提出通知書の全文翻訳等の無駄な費用を削ることができます。また、新規性・進歩性違反など、先行技術文献(引用例)とともに通知される拒絶理由は、請求項と引用例の技術的な理解・対比等に多くの時間がかかります。
しかし、代理人は、発明内容について発明者ほど詳しくない場合が多いため、出願人側技術者が技術的サポートを行うと対策が効率的に行え、それだけ費用節減につながることがあります。
たまに出願人側が審査官の拒絶理由に対する反論案(意見書案)を弁理士に求めてくる場合がありますが、韓国の代理人は、意見書案をハングルで作成することになるので、これの翻訳に多大な費用が必要となります。特別な場合を除いて、単なる検討のためにこのような費用を使うのは無駄遣いになりかねません。韓国の審査官に対する反論のノウハウなどもあるでしょうから、出願人側は、補正や反論、主張したいポイントの要点のみを正確に代理人に伝え、後は代理人に任せた方がよいと思われます。

審査段階2(分割出願の活用)

審査官は、意見提出通知書に登録可能な請求項と拒絶対象とする請求項を明示してきます。そこで、分割出願を活用し、登録可能な請求項のみ先に登録を受けておくことを考慮すべきです。拒絶対象となる請求項が残っていると、登録可能な請求項があっても出願全体が拒絶決定されてしまいます。そして、拒絶決定に対し再審査請求や審判請求を行うことが可能ですが、この場合、すべての請求項を対象としてあらためて請求することが必要となり、結果として多くの費用が必要となる可能性が少なくありません。
また、この場合、一般に、登録請求項を原出願に残し、拒絶対象となっている請求項について分割出願を行いますが、分割出願に対する審査請求料を再び納付する必要があるため、請求項数が少ない方を分割出願とすると費用の節減になりますので検討してみましょう。

審判段階

拒絶決定の後、再審査または拒絶決定不服審判の請求、審理には、審査時よりも多くの費用がかかることが通例です。そこで、再審査等を行う場合、上述の分割出願や補正を行うことにより、必要最小限の請求項のみ残すようにした方が費用が節減できます。また、再審査で再び拒絶決定を受けた場合には、補正が不可能な状態で拒絶決定不服審判請求を行わなければならないので、特別な場合を除き、拒絶決定不服審判請求をせず、必要な請求項について分割出願を行い、再び審査から進行した方が効果的であり、費用節減にも役に立つと思われます。

登録、権利維持段階

特許決定後、登録料も、請求項数によって決まりますので、不必要な請求項は、削除することが望ましいと思われます。さらに、登録後、4年次分以降からは権利維持料が年次によって上昇するので、必要な特許権であるか否かを毎年点検しましょう。

今回の解説者

崔達龍国際特許法律事務所 弁理士 崔達龍
1945年生まれ。1974年漢陽大学電子工学科卒業、1982年弁理士試験合格、1999年崔達龍国際特許法律事務所を開所。日本企業の出願等を専門に扱い、韓国知財関連法令の和訳等をHP(崔達龍国際特許法律事務所)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに掲載。現在、日本特許庁新興国等知財情報データバンク外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの「韓国」原稿作成担当。
(監修:日本貿易振興機構=ジェトロ=ソウル事務所 副所長 岩谷 一臣)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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