知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)2020年度国家知識財産施行計画 ―素材・部品・設備分野におけるIP競争力の向上―

2020年05月13日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.140)
ジェトロ・ソウル事務所 副所長 浜岸 広明(特許庁出向者)

3月30日、第26回国家知識財産委員会(日本の知的財産戦略本部会合に相当)が開催され、「2020年度国家知識財産施行計画」(日本の知的財産推進計画に相当)が審議、確定されました。本施行計画には韓国政府の知財政策の方針が示されており、2020年度は素材部品設備分野の競争力強化や、中小ベンチャー企業の創業成長支援などに、7,151億ウォンを支出することが掲げられています。本稿では、この「2020年度国家知識財産施行計画」の概要についてご紹介します。

1. 市場の需要を反映したIP戦略資産化

素材・部品・設備分野における戦略品目のR&Dの集中支援および中央政府機関との協業を通じたIP戦略―R&Dパッケージ支援により、技術の自立およびコア・基盤IPを確保します。また、第四次産業革命技術分野におけるR&D・特許・標準連携戦略および標準開発支援など、標準化能力の強化を支援します。

さらに、中小・中堅企業に対して、公共研究機関の有望技術を移転および官民共同出資を通じて事業化およびIP創出の促進を行います。また、優秀特許保有のスタートアップ企業などにIPファンド支援を行うことにより経営を安定化させるとともに、IP担保融資のための回収支援機構を発足します。

2. 中小・ベンチャー企業に対する創業・成長および保護強化

中央行政機関との協業や実験室特化型の創業先導大学指定の拡大により大学発ベンチャーを支援するとともに、中小企業の成長段階別に特許戦略・投資・R&D連携を支援します。

また、中小企業の営業秘密保護を強化するために、被害立証責任の緩和や秘密維持協約の導入拡大のための法令改訂を推進するとともに、中小企業の技術保護に対するコンサルティングや共同捜査体系の構築を通じて、技術侵害・奪取の根絶を図ります。

3. 国内IPグローバル進出支援の強化

海外パートナーの発掘・契約締結・技術取引拡大を支援してグローバルIP企業を育成するとともに、フィリピンにおけるIP―DESK開所など、現地対応体系を強化します。

また、特許共同審査の拡大やIP5―PCT協働調査の改善、特許審査ハイウェイ(PPH)拡大など国際審査協力を強化し、WIPO(世界知的所有権機関)との協力を強化してWIPO地域事務所の誘致を推進します。

4. デジタル環境の創作に対する公正・共存エコシステムの造成

政府支援事業に対する標準契約書の事前コンサルティング、コンテンツ公正共存センターにおける被害申告相談、デジタル著作権保護のための総合対応体系の構築を通じて、創作者の保護およびデジタル著作権侵害対応体系の先進化を図ります。

5. 人と文化中心のIP基盤構築

創業保育センター連携型の企業教育を拡大し、IP専門人材を養成するとともに、「産学連携のIP採用プログラム」およびIP講座の開設などを通じて大学IP教育の活性化を行います。

また、特許審査における3人協議審査を拡大、機械翻訳サービスの高度化、非特許文献に対する検索サービスの提供、特許審判における迅速・優先審判の支援および審判遅延防止のための証拠提出時期の制限を推進します。

さらに、地域特産品や伝統産業などに対するIP観点から見た主力特化産業の育成や、地域観光資源に対する固有ブランドの開発を通じて、地域産業を育成します。

本施行計画は「第2次国家知識財産基本計画(2017-2021年)」の5カ年計画の4年目に当たり、同基本計画の目標達成に向けて国内外の知的財産政策環境の変化や新規需要を反映したものとなっており、これらの政策が実際に成果につながるか、注視していく必要があります。

今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 浜岸 広明(特許庁出向者)
98年特許庁入庁。情報処理分野の審査官・審判官、国際課課長補佐、審判課課長補佐、知的財産活用企画調整官などを経て、17年6月より現職

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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