知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国の電子訴訟について

2017年09月13日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.108)
チョン・ジンソプ(弁護士、弁理士、元慶熙大学法学部教授)

外国企業が他国の裁判所で訴訟を進めることは容易ではない。多くの時間や費用がかかる上、手続きも複雑である。訴状を出した後、数多くの書類を作成し、郵送あるいは直接訪問して提出する必要があるが、言語の障壁などにより、一般的に訴訟結果を予測することは非常に難しい。
しかし、韓国裁判所では他国とは異なり、電子訴訟を行っており、紙の書類ではなく、裁判所が運営する電子訴訟システムにアクセスして提訴し、訴訟手続きを進める裁判方式を採択している。そこで、韓国に進出している外国企業が紛争に直面した時、電子訴訟について詳しく知っていれば、心配と時間や費用を減らすことができる。
今号では韓国裁判所で施行している電子訴訟制度の概要と外国企業が知っておくと有意義な情報をまとめて紹介したい。

電子訴訟の導入沿革

韓国裁判所が電子訴訟を始めて導入したのは、2010年4月である。当時、特許法院に提起された事件を対象に、初めての電子訴訟サービスを開始した。その後、2011年5月には民事翻案事件へ電子訴訟を拡大し、2013年1月には家事訴訟及び行政事件、2013年9月には保全処分、2014年4月には回生・破産事件、2015年には市郡裁判所事件、2015年3月には民事執行及び非訴事件に至るまで、電子訴訟を拡大するなど、刑事訴訟を除くほぼ全ての事件に電子訴訟を導入した。
こうして数年前から韓国裁判所は、世界的に最も優秀な電子訴訟システムを構築し、裁判の能率と国民の司法府への信頼度を画期的に高めた。このように韓国裁判所は果敢な情報化を進めることで予算投入比、国民の満足度を最大限に引き上げ、透明性や迅速性、清廉性など、あらゆる分野でOECD内の司法府信頼度1~2位となっている。

電子訴訟の長所

韓国裁判所の電子訴訟は、ペーパーレス訴訟を通じて社会経済的費用を画期的に抑えることを目指す。電子訴訟の長所としては4つ挙げられる。第1に、非常に迅速である。インターネット(オンライン)経由で事件処理や電子文書を送ることで時間を短縮し、裁判期日をより早く指定することができる。第2に、当事者や弁護士にとって極めて便利な制度である。裁判所を訪問することなく、インターネットで訴訟書類を提出することができ、記録閲覧、コピー手続きも簡単だ。第3に、訴訟中の情報をインターネットで共有することで裁判手続きが透明になり、手続きの公正性に信頼をおける。第4に、裁判所に提出した書類や個人情報が先端技術で保護されるため、書類の紛失や外部流出の心配がない。

電子訴訟の準備

電子訴訟を準備するにはまず、最高裁判所の電子訴訟サイトに加入する必要がある。会員加入の手続きはオンラインで本人の身分を確認した後、会員情報を入力すれば、直ちに電子訴訟のユーザーに登録できる。
実際、電子訴訟を利用するには、ユーザーの実名確認と裁判所に提出する電子文書に電子署名をするための公認認証書が欠かせない。電子文書に公認認証書を使うのは、インターネットでの実名確認、提出書類の偽造・改ざん防止、取引事実の否定防止などの効果を得られるためである。
公認認証書とは、電子署名の生成と実名確認のために利用された情報が、該当の加入者にだけ属しているという事実などを確認し、これを証明する電子的情報として公認認証機関が発行した認証書のことを指す。公認認証書には、加入者名、加入者の電子署名の検証情報、電子署名方式、公認認証書の一連番号、公認認証書の有効期間、発給機関名などがインプットされている。

模擬事件を通じて電子書類の提出、送達文書の確認、事件進行の管理などの体験サービスを提供する。

電子訴訟の使い方

一般の訴訟事件は全て電子訴訟で進めることができ、電子訴訟ホームページの「電子訴訟事件登録」を通じて利用可能である。しかし、電子訴訟と言っても公判中心主義及び口頭弁論主義の例外にはならないため、弁論期日の運営や証拠調査など一般的な訴訟手続きは従来の民事、特許訴訟の手続きと同様に進められる。
家庭や事務室でインターネットを通じて直接、訴状や証拠など訴訟書類を提出することができ、相手が訴訟書類を提出した場合は、電子郵便と携帯電話のショートメールで書類が提出されたという事実の通知を受け取って直ちに大韓民国裁判所電子訴訟ホームページにアクセスして確認できる。
自分の事件の進捗状況をリアルタイムで確認でき、自分のパソコンで記録閲覧及び発給もできる。電子訴訟に同意した当事者及び代理人は該当事件の訴訟記録をいつでもオンライン上で閲覧及びプリントアウトすることができる。進行中の事件について大韓民国裁判所電子訴訟ホームページで閲覧する際、手数料はかからない。

最後に

このように7年前、韓国特許法院に初めて導入された電子訴訟システムは、ITやバイオ関連特許紛争時における裁判手続きの公正性や透明性、判決の予測可能性の向上に大きな貢献をしてきた。
現在、民事訴訟の8割以上はペーパーレス電子訴訟が占めている。特に、事案が複雑で重大な企業間による紛争事件は、ほぼ100%電子訴訟で行われており、韓国裁判所の最大の特徴・長所として定着している。
そこで、外国企業が韓国の法廷で訴訟を進める場合は、提訴する前に該当事件の電子訴訟の手続きについて事前に調べて、対応の負担を減らしてはどうだろうか。

今月の解説者

弁護士 鄭陳燮(チョン・ジンソプ)
法律事務所SOUL代表弁護士、弁理士、法学博士、前慶煕大学校法大教授、大韓仲裁人協会知識文化産業フォーラム委員として活動中
(監修:日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 浜岸 広明)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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