知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)「国民のアイデア・知識が確かな資産となる国」を作るための4つの戦略
2026年01月14日
The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.208)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)
2025年12月17日に韓国の知識財産処は、知識財産処昇格後初の大統領業務報告を行いました。キム・ヨンソン処長は最近の経済成長議論の中心には「知識財産」があると述べ、「国民のアイデア・知識が確かな資産となる国」を作るための4つの戦略と詳細課題を報告したと発表されました。今回はこの大統領への報告においてどのような点が報告されたのか解説を行います。
1.業務報告のポイント
知識財産処の発表によると、今回の業務報告では、以下の5つのポイントが含まれているとのことです。
- 国民全体のアイデア発掘システム「みんなのアイデア公募プロジェクト」を推進
- 知的財産取引所の改編、知的財産収益化専門企業20社の育成など知的財産取引の活性化
- 海外技術流出およびK-フード、ビューティー等のK-ブランド模倣品に対する全方位対応
- 「人工知能特許戦略マップ」構築、審査待機期間の画期的な短縮、人工知能核心技術確保支援
- 国家遺産・郷土文化遺産と知的財産を結合、地域における新たな成長力の創出
これらの具体的な観点を以下4つの戦略に分けて解説を行います。
2.アイデア・知識がお金になる社会の構築
国民の日常的なアイデアを活用して、企業・社会・公共分野の課題に対する解決策を導き出し、市場性のある知的財産へと発展させ、国家政策や研究開発にまで繋がるよう多角的に支援するため、「みんなのアイデア公募プロジェクト」を推進すると報告されました。また、知的財産取引所の取引専門官を2030年をめどに100名まで拡充することも報告されました。知識財産権は、単なるアイデアとして存在するのではなく、社会課題を解決し、ビジネスに用いる最強のツールであるべき重要な権利です。今後は、知識財産処の主導により、国民全体のアイデアがさまざまな場で活用されることが期待されます。
3.韓国企業と技術を守る盾
現在海外において、韓国企業の製品が流通し、またK-ブランドも人気となっています。この状況を維持・発展させるためには、不当な技術流出を防ぐ必要等があります。これらの観点を踏まえて、海外技術流出と中小企業の技術奪取、国内外の知的財産紛争に対する支援を強化すると報告されました。国家先端戦略技術の流出対策強化や、技術警察に先端技術海外流出特別捜査チームを新設するなどの対応も行い、韓国型証拠開示制度の導入にも力を入れるとのことです。K-ブランド輸出企業保護のため、食品、美容、ファッションなど商標権侵害頻発業種を対象に、紛争リスクを事前診断する「IP紛争ドクター」を新規運営し、人工知能(AI)ベースの「商標抜け駆け出願警報システム」も構築するとのことです。さらに、「知的財産紛争危機対応センター」、「知的財産法律支援センター」の新設・機能集約も行うとのことです。
4.人工知能の大転換、知的財産が先導
現政権では、韓国が世界3大人工知能強国となるという目標が掲げられています。世界的にも人工知能が注目を集めており、知的財産分野でも重要性が増しています。これに対して、人工知能中核特許を分析し「人工知能特許戦略マップ」を構築し、人工知能インフラ・応用人工知能分野の課題について産業戦略を提示するなど、効率的な人工知能技術開発を支援すると報告されました。また、人工知能を活用して審査能力を強化し、人工知能基盤の知的財産行政システム構築など全方位的に活用することによって、審査待機期間を2029年までに(特許)10カ月台、(商標)6カ月台に短縮すると報告されました。
5.知的財産で地域の未来を開く
地域特色を反映した郷土文化遺産基盤の商品を知的財産と結びつけて事業化し、伝統市場・特産品などから「地域代表K-ブランド」を発掘し、名品ブランド化することで、地方の新たな成長動力創出を支援すると報告されました。これを実現するため、5極3特の区域別に知的財産取引・事業化・金融全般を統括する総合支援センター(仮称:知的財産革新スクエア)を構築する点も報告されました。
まとめ
今回の大統領への報告は、知識財産処昇格後初であり、また、キム・ヨンソン処長就任後初の報告である点で意義のある報告となります。今後の韓国における知識財産を通じた国政運営の方向性や、技術に基づく経済発展が今回の報告の戦略に基づいて進められることとなります。今後の進捗(しんちょく)を注視したいと思います。
今月の解説者
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT知財人材部長等を経て現職。
本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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担当者:大塚、徐(ソ)、權(クォン)(いずれも日本語可)
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