知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国特許庁「発明の日60周年記念パンカー」全国ツアーイベントを実施

2025年06月11日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.201)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)

2025年は韓国において、「発明の日60周年」となる記念の年となりました。「発明の日」は世界初「測雨器(チュグギ、雨量計)」を発明した日(5月19日)を記念して制定され、今回、韓国特許庁と聖心堂(ソンシムダン)のコラボイベントとして、「発明の日60周年パンカー」全国ツアーイベントが行われました。

1.聖心堂と知的財産

今回、韓国特許庁とコラボを行った「聖心堂(ソンシムダン)」は、韓国特許庁が位置する大田市にある、全国的に有名なベーカリーです。聖心堂は、パンに関する知的財産権を数多く保有しています。具体的には、独自開発したシグネチャーメニューの製造方法特許や商標を複数保有しています。製造方法の特許としては、人気メニューである、ティギムソボロ(揚げパン):特許第10-1104547号や、プチュパン(にらパン):特許第10-1333291号を保有しています。また、商標権に関しても43件もの権利を保有しているとのことです。

聖心堂の登録商標の一例(KIPRISより取得)
商標登録番号41-0286039-0000

今回のイベントでは、知的財産が人工知能(AI)や半導体といった先端技術だけではなく、パンなど日常生活の中で身近に感じる分野でも有効活用されていることを示す事例を、聖心堂のパンに関する知的財産を通じて啓蒙活動を行い、多くの人に知的財産の重要性を認識してもらいたいという思いで開催されました。

2.パンカー全国ツアー

聖心堂のパンカーが、韓国各地をまわって、来場者に聖心堂のおいしいパンと「発明の日」のストーリーを紹介する冊子が配布されました。また、冊子の中のQRコードを読み取ってフォトイベントに参加してもらったり、クイズや福引イベントなども行われました。初回のイベントは4月30日(水曜)に、韓国プレスセンター前のソウル広場(ソウル市中区)にて午前10時からスタートしました。続いて5月7日(水曜)にアートスクエア(大邱(テグ)市中区)、さらに、5月13日(火曜)、全南(チョンナム)大学の後門周辺(光州(クァンジュ)市北区)を訪れ、最後は5月14日(水曜)、政府大田庁舎(大田(テジョン)市西区)で行われました。

  • イベントで配布された冊子とパン

  • ソウルでのイベント会場とパンカーの様子

ソウルでのイベントに自ら参加された韓国特許庁のジョン・デスン報道官は「『発明の日60周年』を迎えて聖心堂の事例のように日常生活の中でのクリエイティブなアイデアは『名品特許』につながる成果を多くの方々と共有したい」とし、「今回のイベントを機に、知財の重要性や価値について国民の皆さまが身近に感じてほしい」と述べられました。また、今回の知的財産を身近に感じてもらえる画期的な企画が成功し、100周年など今後の記念イベントへとつながることに期待したいとのことでした。

まとめ

上の写真は、発明の日60周年記念イベントで韓国特許庁が展示を行った「測雨器(チュグギ、雨量計)」です。この発明により、当時の気象観測に大いに貢献したそうです。古今東西、発明は我々の生活の質を高めるために次々と生み出されてきました。発明は最先端の科学技術製品に限らず、身の回りにも多くの発明が存在し、豊かな生活に貢献してきました。これからも知的財産を通じた社会の発展に期待したいと思います。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT知財人材部長等を経て現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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