知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)2025年度の特許出願件数

2026年03月11日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.210)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)

2026年1月29日に2025年度の韓国における特許出願件数について、知識財産処から速報が出され、韓国特許出願史上初めて26万件を達成したと発表されました。今回は特許出願件数から、韓国企業の動向について解説を行います。

1.特許出願の件数推移

韓国における特許出願件数は、2013年に20万件を突破して、着実に出願件数を伸ばし、2025年度に初めて26万件を突破しました。日本における特許出願件数は、2010年から2020年にかけて減少を続け、2021年から増加に転じている状況である一方、韓国では、増加が続いており、研究開発の活発化と知的財産権の重要性が断続的に高まっていることがみてとれます。

日韓の特許出願件数推移(日本の2025年度の数値は執筆時点で未公表)
2013 2020 2024 2025
日本 328,138 288,472 306,855 -
韓国 204,589 226,759 246,245 260,797

なお、知識財産処の報道によると、先進5カ国知的財産庁(IP5)における2024年の国別特許出願件数は、次のとおりとなっています。1位 中国(182万8,054件)、2位 アメリカ(60万3,194件)、3位 日本(30万6,855件)、4位 韓国(24万6,245件)、5位 欧州(19万9,402件)

2.産業別の特許出願件数

また、知識財産処の報告によると、2025年1~10月累計を産業別で見ると、2025年の国内特許出願上位10分野のうち、人工知能・量子技術などを含む情報通信技術(ICT)関連産業の特許出願は2万7,033件で、前年同期比で21.1%増加し、2次電池分野の特許出願も1万624件で、LGエナジーソリューション・サムスンSDI・SKオンなど国内2次電池代表3社を含む大企業を中心に出願件数が増加し、前年同期比14.4%増加したとのことです。人工知能(AI)関連技術が、著しい進歩を遂げ、世界的なニーズの高まりもあり、この分野における韓国企業の研究開発も活発化している点が、特許出願からもうかがえます。具体的な2024年1~10月から翌年同期間における累計の特許出願件数推移は次のとおりです。

  • ICT関連産業: 2万2,318件 → 2万7,033件
  • 2次電池関連産業: 9,285件 → 1万624件

3.外国出願

韓国企業の海外への特許出願については、IP5に出願された件数では、前年同期の5万6,989件から、6万7,025件へと17.6%増加したと報告され、このうち米国に出願した特許件数は3万2,976件で、主要国(米国、中国、欧州、日本)への海外出願の中で最も高い割合(49.2%)を占め、中国への特許出願は1万6,621件で最も高い増加率(72.3%)を記録したとのことです。韓国企業の海外への外国特許出願は、例年通り米国での出願が最多となっており、米国での知財活動の重要性が現れる結果となっています。訴訟に巻き込まれるリスクを低減し、万が一巻き込まれた場合においても、特許権等による防御を行うための備えを行っている結果と考えられます。また、特許権のみに限らず、K-ブランドが世界的な人気を得ており、この流れに歩調を合わせて、韓国製品も世界への輸出を増加させており、これに呼応して模倣品被害も発生しているため、その対応を行うためにも海外での知的財産権の取得が積極的に進められています。

また同じく知識財産処の報道によると、世界知的所有権機関(WIPO)データセンター(2024)などの統計によると、ベトナム(1,395件、31.4%増)、インド(3,826件、8.1%増)、台湾(3,365件、8.1%増)などへの韓国企業の海外特許出願も持続的に増加しており、韓国の特許出願対象国・地域が従来の米国、中国中心から拡大していることが明らかになったとのことです。この点について、韓国の最大貿易輸出国・地域(輸出金額基準)が1位中国、2位米国、3位ベトナム、4位台湾、8位インドであることを考慮すると、韓国の輸出対象国も特許出願と同様の方向で拡大していると分析される、と紹介されています。世界的に不確実性の高いVUCAの時代に入っており、企業活動も、少数の国への過度な依存に対するリスクが高まっており、韓国企業も、複数の国への貿易輸出を行うと同時に、それらの国への特許出願を行っていることが、今回の報告から分かります。

まとめ

着実に特許出願件数が増加している韓国の実態は、研究開発が断続的に進んでおり、その結果としての知的財産権の取得へとつながっていることが分かります。これらの知的財産権がビジネス戦略にどのようにつながっていくかが重要となり、AI等の有望な技術分野での出願が多いことは時流にかなった傾向であり、海外への分散した出願も同じく良い指標と考えられます。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT知財人材部長等を経て現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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