知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国知識財産処発足後、初めての国家知識財産委員会開催

2026年05月13日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.212)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)

2026年3月20日、キム・ミンソク国務総理の主宰により、第39回国家知識財産委員会が開催されました。知識財産処が発足してはじめての開催となり、次年度から開始される「第4次国家知的財産基本計画(2027~2031年)」の政策方針など、今後の韓国における知財行政の方向性が議論されました。今回は、この中から特に重要な部分を解説します。

1.国家知識財産委員会

今回の国家知識財産委員会は、国務総理(委員長)、知識財産処長(幹事)などの政府委員、民間委員から構成される合計24名の出席者により開催されました。主に審議された内容は、次の4点です。

  1. 第4次国家知的財産の基本計画(2027~2031年)の政策方針
  2. 技術主導の成長に向けた特許審査サービスの革新策
  3. 国家知的財産事務の総括・調整強化策
  4. 人工知能(AI)時代の未来型専門性を備えた創造・発明人材の育成基盤強化計画

特に、国家知的財産の基本計画は、国家的な中長期知的財産総合戦略であるとともに、関係省庁および地方政府の策定指針であり、新政府のビジョンと政策目標、戦略課題などが盛り込まれている重要な計画となります。

2.第4次国家知的財産基本計画(2027~2031年)の政策方針

今回、韓国政府は「アイデアと知的財産で飛躍する大韓民国」というビジョンを設定し、これを達成するための政策方針として以下の5大推進戦略と、さらにその内容を細分化した20の中核課題を選定しました。

(推進戦略1) アイデア・創作の創業・事業化の実現

「国家創業時代への飛躍に向け、アイデア・知的財産(IP)を基盤とするスタートアップを育成し、スタートアップのIP確保や競争力強化など、その成長を支援する。」、「企業がIPだけで容易に資金を調達できるよう、IP担保融資の支援手段を多角化し、知的財産仲介機関と取引基盤を強化して、IP取引の活性化を推進する。」

最初の戦略は、IPによって創業を支援する内容で、資金調達を容易とするために、知財金融も積極的に強化する内容となります。

(推進戦略2) 公正かつ強力な知的財産保護体制の構築

「スタートアップ・中小企業のアイデア・技術の盗用を根絶するため、損害賠償制度を改善し、海外への技術流出を防止するための官民協力体制を強化する。」、「また、IP侵害の取り締まりを強化し、知的財産事件を迅速かつ正確に処理するため、政府横断的な被害救済支援体制を構築する。」

特に、K-カルチャーによる持続的な付加価値を創出するため、派生商品・関連産業において知的財産権を確保し、K-カルチャーの知的財産権侵害に対して官民共同の防衛体制を構築するとされています。

(推進戦略3) 先導技術における圧倒的な優位性の確保

「IPデータと研究開発・産業・貿易データなどの異種データを統合的に分析し、経済・科学技術・安保政策への対応専門性を高度化する。」 、「先端・戦略技術における圧倒的な優位性を確保するため、研究開発の全てのサイクルでIP戦略を活用し、中核技術の海外特許および情報通信技術(ICT)分野の標準特許を確保する。」

この内容は、いわゆるIP-R&Dや標準化戦略についての支援強化の内容となります。

(推進戦略4) 地域の均衡ある成長およびグローバル協力の強化

「地域特産品・郷土文化遺産などを基盤として成長できるよう、地域代表K-ブランドを育成し、商品開発から事業化まで総合的に支援する。」、「5極3特において、地域のスタートアップ・中小企業にIP戦略および経営・技術コンサルティングを提供する地域知的財産支援拠点を構築する。」

この内容は、首都圏以外の地域における知財の活用支援に関する内容となります。

(推進戦略5)知的財産分野におけるAI大転換

「AI学習データの保護・活用、AIを活用した発明の認定可否など、AI大転換に伴い関連するデータ・IPの争点を検討し、基準を再確立する。」 、「AI能力とIP専門性を兼ね備えた創造的人材を育成し、大学(大学院)における特許研修や企業現場での知的財産分野における専門研修も強化する。」

世界的にイノベーションが起きているAIに関する支援強化の内容となります。

まとめ

次年度からの長期計画には、これまでの知財に関する内容を踏まえつつ、これからの重要性を勘案したバランスの良い方針が盛り込まれています。今後の韓国知財におけるこれらの実現手段も注視したいと思います。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT知財人材部長等を経て現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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