知的財産に関する情報（The Daily NNA【韓国版】より）韓国特許庁のポジティブ審査基準は？

The Daily NNA【韓国版】掲載（File No.146）
崔達龍国際特許法律事務所
崔 達龍 所長・弁理士

特許制度が始まって以来長い間、審査官は審査の際に特許を受けることができない理由のみを提示していましたが、2014 年度から出願人へ補正の方向等も提示し、適切な権利を迅速に確保するのに役立つ方向の審査、すなわち「ポジティブ審査」をしています。「ポジティブ審査」の具体的な進め方については、特許・実用新案審査基準内に「第8部ポジティブ審査基準」として新設され、これまでに数回の追加等がなされてきました。その内容を要約すると以下のとおりです。

ポジティブ審査の一つとして、審査官は拒絶理由通知をする際に拒絶理由のほか、特許を受けることができる請求項があればこれを明示し「補正に関する参考事項」の項目欄に補正方向も明示しています。
また、記載不備の解消よりは、なるべく適正な権利範囲の提示に集中することが規定されています（特許・実用新案審査基準 第8部第1章を参照）。

出願人が意見書、補正書により、拒絶理由を解消するための補正意思を明確に表示したが、補正書で一部の漏れや抜けが見られる場合、審査官は既に通知した同一の拒絶理由であっても再び通知することができるようにしました（同審査基準第8部第3章を参照）。

審査官は特許決定をする際に、明細書等の記載が「明らかに誤っている場合」は職権で補正できます。
ただし、職権補正事項を特許出願人に知らせるように定めています。（特許法 第66 条の2を参照） 審査官の職権補正について出願人が同意しない場合、特許決定は取消されたものとみなされます（同審査基準第8部第2章を参照）。

補正案レビュー制度は、出願人が拒絶理由通知書に対応して補正書を提出する前に、審査官と面談を行って、補正案に対する意見を交換することによって、出願人は特許決定の可能性を高め、審査官は正確な審査を図ることができる制度です。
出願人は意見書提出期間満了日の1カ月前までに補正案の提出とともに補正案レビューを申請することができ、審査官が受け入れれば、面談を行います（同審査基準第8部第5章を参照）。

拒絶決定後の再審査請求をする前に審査官と面談を行い補正案の意見を交換することができます。この際にも補正案レビューと同じ基準が適用されます（同審査基準 第8部第7章を参照）。

予備審査は正確な審査と迅速な権利化のため、審査着手前に出願人が審査官と面談を行って意見を交換する制度です。
予備審査の申請対象は優先審査が決定された出願であって、当該出願の難易度が平均以上でなければなりません（同審査基準 第8部第4章を参照）。

一括審査は一つの製品に関する複数の特許、実用新案登録、商標登録、デザイン登録出願について出願人が望む時期に一括して審査する制度です。
申請対象は出願人が実施中または実施準備中である出願、新技術支援事業の結果に関する出願等です。
手続きは出願人が一括審査申請をすれば、特許庁は方式審査後に一括審査説明会を開催し、出願人から説明を受けて一括審査するかを決定することになります（同審査基準 第8部第6章を参照）。

韓国特許庁は「顧客満足、それ以上に顧客感動」というスローガンで、絶え間なく法改正および審査基準等の制度改善をしており、顧客の賛辞を受けてきました。
しかし、未だ制度改善の声は後を絶たず、今後の韓国特許庁の継続した改善も期待しています。

崔達龍国際特許法律事務所 所長・弁理士 崔 達龍
漢陽大学校電子工学科卒業、弁理士試験合格(1982 年)、前アジア弁理士会韓国協会会長、前大韓弁理士会副会長
（監修：日本貿易振興機構（ジェトロ）ソウル事務所副所長 土谷慎吾）