知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)日本から韓国への特許出願動向

2023年04月12日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.175)
ジェトロ・ソウル 副所長 土谷 慎吾(特許庁出向者)

2022年4月13日の本欄で、外国から韓国への特許出願件数で、日本はずっと首位だったところ、2021年に初めて米国に首位を明け渡し、2位に低下したことをお伝えしました。
2022年の状況はどうでしょうか、気になるその後をお伝えします。

1.外国への特許出願の重要性

特許制度は、独占的な権利の付与と引き換えに出願から一定期間(出願から1年半)後にその内容が公開され、その技術は誰でも広く活用できるという、権利者の保護と技術情報の活用との調和を図る点にその本質があります。
一方、特許は国ごとに出願され、それぞれの国内で審査、登録され、特許権の効力は登録された国の国内のみに及びます。この原則は属地主義と呼ばれています。
たとえば、日本の特許庁に特許を出願し、これが審査、登録された場合、特許権の効力は日本国内でのみ有効で、他の国には及びません。そのため、日本だけに出願し、他国に出願しなかった特許の内容は1年半後に公開され、全世界から(日本語で)利用可能になる反面、特許権の効力は日本国内にしか及ばないため、外国に技術情報を提供するだけで、外国で何らの権利も得られないことになります。
このような状況から、海外での特許出願には、翻訳費用や在外代理人の費用など、高額な費用が必要ですが、特許による保護が必要な重要技術については、外国への出願が必要となります。

2.外国から韓国への特許出願件数推移

韓国特許庁のウェブサイトに掲載されている1998年以降の外国から韓国への特許出願件数をまとめると、2020年まではずっと日本が首位をキープしてきましたが、既報のとおり 2021年に初めて米国に首位を明け渡し、2位に低下しました。
そして注目の2022年、米国から韓国への出願は前年比約14.0%増の17,679件とさらに伸び、日本から韓国への出願は約2.2%減の13,860件とやや元気がない状況です。中国から韓国への出願は近年急速な伸びを示していましたが、2022年はほぼ横ばいの6,320件に落ち着きました。
結果として日米の差は開くこととなり、日本の1位奪還への道のりは険しいものとなりました。
グラフ全体を見て感じることは、米中からの特許出願が大幅に増えている一方、他国からの出願は大きく変化していない点です。米中の覇権争いが韓国特許の勢力図からもうかがえる点は興味深いです。

出所:韓国知的財産統計年報(2020-2021年)、韓国知的財産統計月報(2022年)に基づいて筆者作成

今後も米中の出願動向、そして日本の動向から目が離せません。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 土谷 慎吾 (特許庁出向者)
2001年日本国特許庁入庁。通信・半導体分野の審査官・審判官、情報技術統括室室長補佐、審判課課長補佐、主任上席審査官等を経て、2020年7月から現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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