知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)アイウエアに関して、商品形態模倣犯罪のみで初めて逮捕された事例
2026年04月08日
The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.211)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)
2026年3月17日、韓国知識財産処は、技術デザイン特別司法警察と大田地方検察庁特許犯罪調査部は、他人の商品形態を模倣した商品を輸入・販売した法人の代表A氏(38歳)ら3人を、「不正競争防止および営業秘密保護に関する法律」違反の疑いで起訴したと明らかにしました。他人の新製品をそのまま模倣した犯罪(商品形態模倣犯罪)のみで、初めて逮捕された事例となりました。
1.デザインのライフサイクルと意匠権
ファッション業界では、流行商品のサイクルが非常に短い現状がありますが、デザインを保護する産業財産権である意匠権(韓国ではデザイン権と呼びます)を取得しないまま、販売されることもあります。デザインは、特許技術とは異なり、見た目で模倣することが可能なため、権利取得を行わない場合に、模倣品が生産されることもあります。意匠権を取得しておけば、当該意匠権に基づいて模倣品に対する権利侵害の主張や対応を行うことが可能となります。一方で、意匠権を取得していない場合において、デザインの模倣が行われた場合は、いわゆる不正競争防止法において争われることとなります。今回発表された事例は、刑事処罰として、本法律が適用された事例であり、現在、多くの人がファッションの一部として楽しむ「眼鏡(アイウエア)」に関する事件であったため、非常に注目を集める内容となりました。
2.本件事案の詳細
以下、知識財産処から発表された内容の事件詳細についての報告を紹介します。
技術警察によりますと、A氏はアイウエアブランドを2019年に設立したものの、関連経験が全くない人物であったとのことです。A氏は、デザイン開発要員もいない状態で、国内の有名アイウエアブランドB社のサングラスなど人気商品を自ら撮影し、海外にある製造業者に送信するなどの方法で生産された模倣商品51種類、計32万1,000点余り(販売価格123億ウォン相当)を、2023年2月から2025年6月まで販売した疑いが持たれています。また、A氏は2023年8月から2025年6月にかけて、模倣品44種類、計41万3,000点余りを輸入した疑いも持たれています。A社の模倣商品(51種)のうち29種は、3Dスキャンで輪郭線に変換して、被害商品と比較したところ、誤差範囲1ミリメートル以内で一致する線が95%以上を占め、このうち18種は99%以上の一致率を示し、いわゆるデザイン「デッドコピー」商品に該当することが調査で判明したとのことです。
A社の模倣商品により被害を受けたB社は、各商品開発に最低1年以上の研究・開発期間と約50人の専門人材を投入するなど、独自のK-ブランド価値を構築してきた企業です。今回の事件により、B社はブランド価値の毀損(きそん)および莫大(ばくだい)な売り上げ減少による経済的被害を受けたと伝えられており、A氏の犯行は、独創性と斬新さを強みとして成長してきたK-ファッション産業の発展にも否定的な影響を与えたと考えられます。一方で、B社の被害商品51種は、デザイン権について未登録の状態であることが確認されたとのことです。技術警察は、A氏が創作的な努力なしにB社の新製品をそのまま模倣し、短期間で爆発的な売り上げ成長を遂げた点や、産業全体に悪影響を及ぼす恐れなどを考慮し、未登録デザインの模倣犯罪として初めてA氏を逮捕・起訴することとなりました。また、技術警察は犯罪収益の処分を阻止するため、確定判決が出るまでA社の財産を凍結すべく、去る7月に55億6,000万ウォン、9月に22億6,000万ウォンの追徴保全を申請し、大田地方裁判所は総額78億ウォン規模の追徴保全決定を下しました。さらに、技術警察と検察は共同で、A氏が保管していた模倣商品約15万点を任意提出の形式で確保し、さらなる流通の可能性を遮断したとのことです。
3.デザインを保護する法律
知識財産処は、2017年の不正競争防止および営業秘密保護に関する法律についての法改正を通じて、デザイン権として登録されていないデザインであっても、3年以内の新製品である場合には、これをそのまま模倣して販売するなどの不正競争行為が発生した場合、刑事処罰が可能となるよう改正しています。
まとめ
今回の事件は、意匠権(デザイン権)を取得していない物品において、いわゆるデッドコピーと呼ばれる模倣販売が行われた場合に、不正競争防止および営業秘密保護に関する法律が適用されて、刑事処罰が行われた最初の事例となりました。しかしながら当然、意匠権を取得しておけば、当該権利に基づいた対応もできるため、より自社の製品保護という点では有利になります。ライフサイクルが早いデザインの分野においても、費用対効果等さまざまな要素を考慮して、知財戦略の構築が重要となります。
今月の解説者
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT知財人材部長等を経て現職。
本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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