香港の貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年のGDP成長率は3.6%。民間消費も前年から1.9ポイント回復。
  • 輸出入額はAI関連製品の需要増などに伴いともに増加。貿易収支の赤字幅は拡大。
  • 対内直接投資額は前年比11.8%増、対外直接投資額は5%弱減。
  • 対日輸出入額はともに増加。日本の農林水産物・食品の香港向け輸出額は前年比0.9%増。

公開日:2026年7月9日

マクロ経済

輸出好調によりGDP成長率は3年連続でプラスに

2025年の香港特別行政区(以下、香港)の実質GDP成長率は3.6%となった。前年(2.6%)から1ポイント上昇し、3年連続でプラス成長を維持した。外需のうち、財の輸出では、世界的な人工知能(AI)投資を背景とした電子機器関連製品への需要や、中国本土を中心としたアジア地域などでの活発な需要が成長を支えた。また、サービス輸出も全般的に拡大しており、特にインバウンド観光や越境往来の増加、ならびに越境金融サービス活動の活発化がこれを下支えした。

実質GDP成長率を需要項目別にみると、個人消費の緩やかな成長が続く中、民間最終消費支出は1.7%と前年のマイナス0.2%からプラスに転じた。域内総固定資本形成も4.8%(前年は1.9%)と堅調に推移した。サービス輸出は6.2%とプラスを維持した。香港政府統計処のデータによると、インバウンド観光では2025年に香港を訪れた外国人渡航者数は前年比12.1%増の4,989万人となり、2022年以降4年連続前年比で増加した。うち、中国本土以外からの訪問客数は15.3%増の1,210万人だった。また、財の輸出は12.0%と前年(5.3%)から大幅に上昇した。なお、失業率は3.7%と前年(3.0%)から上昇した。

香港政府は2026年5月、2026年通年の成長率は2.5~3.5%を見込むとし、同年1月時点の予測値から据え置いた。安定した世界経済を背景に、投資および輸出の好調に加え、消費者心理の回復による個人消費支出の増加が成長に寄与するとした。一方で、中東情勢の緊張の高まりや長期化に伴う不確実性が香港経済の下押しリスクとなる可能性があると指摘している。引き続き各業界への経済支援策を通じて香港経済を下支えしつつ、外部環境の変化も注視しながら対応していく方針を示している。

表1 香港の需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 3.2 2.6 3.6 3.2 3.3 3.8 4.0
民間最終消費支出 6.8 △ 0.2 1.7 △ 0.7 2.4 2.4 2.5
政府最終消費支出 △ 3.9 0.7 1.5 0.4 2.5 1.9 1.5
域内総固定資本形成 11.4 1.9 4.8 0.2 1.8 5.1 11.7
財の輸出 △ 10.0 5.3 12.0 8.7 11.4 12.0 15.4
財の輸入 △ 8.3 3.0 12.6 7.2 12.6 11.7 18.2
サービスの輸出 19.2 4.1 6.2 6.0 8.0 6.4 4.7
サービスの輸入 25.6 11.3 4.3 5.2 6.4 2.0 3.7

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。

〔出所〕香港特別行政区政府統計処

貿易

輸出入額ともに増加、貿易収支の赤字幅は拡大

2025年の香港の財貿易の総額は、人工知能(AI)搭載電子関連製品の堅調な需要により前年比15.5%増の10兆9,271億香港ドルだった。うち、輸出は15.4%増の5兆2,403億香港ドル、輸入は15.5%増の5兆6,868億香港ドルと、前年からいずれも増加した。貿易収支は4,466億香港ドルの赤字で、赤字幅は前年比で17.6%増(2024年の赤字額は3,797億香港ドル)と拡大した。

輸出の内訳をみると、全体の98.7%を占める再輸出は15.4%増の5兆1,742億香港ドル、香港原産品の輸出(構成比1.3%)は14.1%増の660億香港ドルとなった。

輸出を国・地域別でみると、1位は中国本土(構成比59.7%)で、前年比16.7%増の3兆1,285億香港ドル、2位は米国(6.2%)で9.7%増の3,243億香港ドル、3位はベトナム(4.1%)で50.5%増の2,173億香港ドルとなった。日本(1.7%)は13.5%増の916億香港ドルで、7位だった。最大輸出先の中国本土のほか、ブルネイを除くASEANおよび主要先進国・地域向け輸出も軒並み増加。米国向け輸出も前年の8.5%増から増加幅が拡大した。品目別にみると、1位の電気機器・同部品(48.8%)が17.2%増の2兆5,589億香港ドル、2位の事務用機器・データ処理機(12.9%)が24.9%増の6,765億香港ドル、3位の通信・音響機器(12.1%)が16.5%増の6,332億香港ドルとなった。

輸入を国・地域別でみると、1位は引き続き中国本土(構成比43.8%)で前年比16.2%増の2兆4,918億香港ドル、2位は台湾(11.8%)で20.0%増の6,685億香港ドル、3位はシンガポール(7.7%)で11.7%増の4,352億香港ドルとなった。日本(4.3%)は7.7%増の2,444億香港ドルで6位だった。品目別にみると、1位の電気機器・同部品(45.6%)が17.9%増の2兆5,910億香港ドル、2位の通信・音響機器(12.1%)が24.6%増の6,889億香港ドル、3位の事務用機器・データ処理機(10.1%)が29.3%増の5,767億香港ドルとなった。

香港は原則関税がかからない自由貿易港であり、中継貿易拠点としての機能を果たしてきた。国際空港評議会(ACI)の統計によれば、2025年の香港国際空港の貨物取扱量は前年比2.7%増の507万トンで、上海浦東国際空港(中国本土)を抑えて世界トップの地位を維持した。他方、港湾貨物取扱量は、4.0%減の1億6,964万トン、取扱額は2.3%減の1兆307億香港ドルとなり、貿易総額に占めるシェアも前年の11.1%から9.4%とさらに縮小した。

表2-1 香港の主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万香港ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 2,182,692 2,558,895 48.8 17.2
事務用機器・データ処理機 541,541 676,546 12.9 24.9
通信・音響機器 543,594 633,239 12.1 16.5
雑製品 232,636 259,159 4.9 11.4
電動機 126,009 160,544 3.1 27.4
専門・科学・制御機器 146,850 157,078 3.0 7.0
非金属鉱物製品 136,250 121,328 2.3 △ 11.0
撮影器具・光学機器・時計 97,072 99,838 1.9 2.8
非鉄金属 70,071 94,480 1.8 34.8
特定産業用機器 42,034 64,363 1.2 53.1
合計(その他含む) 4,542,371 5,240,251 100.0 15.4

〔出所〕香港特別行政区政府統計処

表2-2 香港の主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万香港ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 2,198,416 2,591,020 45.6 17.9
通信・音響機器 553,080 688,915 12.1 24.6
事務用機器・データ処理機 445,894 576,653 10.1 29.3
雑製品 310,566 340,199 6.0 9.5
電動機 164,743 221,029 3.9 34.2
専門・科学・制御機器 138,293 147,070 2.6 6.3
非金属鉱物製品 137,231 130,618 2.3 △ 4.8
撮影器具・光学機器・時計 104,473 118,291 2.1 13.2
非鉄金属 73,482 106,984 1.9 45.6
石油、石油製品および関連物 83,757 77,692 1.4 △ 7.2
合計(その他含む) 4,922,101 5,686,833 100.0 15.5

〔出所〕香港特別行政区政府統計処

表3 香港の主要国・地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万香港ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕湾岸協力会議(GCC)諸国は、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦を加えた合計値。
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア 3,578,051 4,220,723 80.5 18.0 4,192,213 4,902,354 86.2 16.9
日本 80,656 91,577 1.7 13.5 226,970 244,388 4.3 7.7
中国 2,681,658 3,128,456 59.7 16.7 2,144,663 2,491,823 43.8 16.2
韓国 68,816 62,254 1.2 △ 9.5 287,096 251,732 4.4 △ 12.3
台湾 140,415 201,639 3.8 43.6 556,972 668,467 11.8 20.0
ASEAN 393,426 517,445 9.9 31.5 896,203 1,151,066 20.2 28.4
シンガボール 67,136 71,189 1.4 6.0 389,673 435,167 7.7 11.7
マレーシア 44,488 71,879 1.4 61.6 165,884 196,215 3.5 18.3
インドネシア 20,069 23,537 0.4 17.3 17,180 22,431 0.4 30.6
タイ 77,017 86,234 1.6 12.0 81,386 86,024 1.5 5.7
ベトナム 144,409 217,325 4.1 50.5 164,158 323,587 5.7 97.1
フィリピン 33,668 38,010 0.7 12.9 74,686 84,283 1.5 12.8
インド 137,022 144,210 2.8 5.2 63,995 80,405 1.4 25.6
オーストラリア・大洋州 29,955 30,035 0.6 0.3 20,280 21,085 0.4 4.0
オーストラリア 26,058 26,191 0.5 0.5 14,999 15,342 0.3 2.3
欧州 323,735 327,996 6.3 1.3 347,427 377,120 6.6 8.5
EU 275,674 273,622 5.2 △ 0.7 217,904 217,164 3.8 △ 0.3
英国 48,848 48,455 0.9 △ 0.8 72,601 104,318 1.8 43.7
中東 129,547 133,665 2.6 3.2 59,153 59,565 1.0 0.7
湾岸協力会議(GCC)諸国 112,356 118,217 2.3 5.2 42,506 44,706 0.8 5.2
北米 307,854 337,481 6.4 9.6 213,568 218,976 3.9 2.5
米国 295,571 324,266 6.2 9.7 206,101 210,163 3.7 2.0
アフリカ 28,211 34,593 0.7 22.6 18,501 16,321 0.3 △ 11.8
中南米 82,957 93,014 1.8 12.1 41,330 55,038 1.0 33.2
ブラジル 15,648 17,474 0.3 11.7 11,200 9,759 0.2 △ 12.9
合計(その他含む) 4,542,371 5,240,251 98.8 15.4 4,922,101 5,686,833 100.0 15.5

〔注〕湾岸協力会議(GCC)諸国は、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦を加えた合計値。

〔出所〕香港特別行政区政府統計処 Interactive Data Dissemination Service for Trade Statistics (Trade-IDDS)

通商政策

CEPA改正協議書が発効、サービス貿易分野で規制緩和

香港は、2024年11月にペルーとの間でFTAについて署名したほか、中国本土、ニュージーランド、欧州自由貿易連合(EFTA)、チリ、マカオ、ジョージア、ASEAN、オーストラリアとのFTAが発効している(2026年6月時点)。

うち、中国本土との間で締結している「中国本土と香港経済貿易連携緊密化の取り決め(CEPA)」については、2025年3月にサービス貿易に関する第2次改正協議書が正式に発効した。この発効により、「金融」「建設および関連エンジニアリング」「検査認証」「電気通信」「映画」「ドラマ・アニメ」「観光」など、香港が優位性を有するサービス分野で自由化措置を導入する。在香港の企業などは有利な条件の下、中国本土での事業展開が可能となるほか、中国本土で事業展開する際の障壁も大幅に削減された。

表4 香港のFTA発効・署名・交渉状況(単位:%)〔注1〕構成比については、輸出は地場輸出(再輸出は含まない)、輸入は輸入総額を使用。 〔注2〕中国とは「経済貿易緊密化協定(CEPA)」およびサービス貿易協定、投資協定(IA)、経済技術協力協定(Ecotech Agreement)を締結。 〔注3〕ニュージーランドとは「経済連携緊密化協定(CEPA)」を締結。 〔注4〕EFTAは、アイスランド、リヒテンシュタイン、スイスとのFTAは2012年10月1日に発効、ノルウェーとのFTAは2012年11月1日に発効。 〔注5〕EFTAの構成比はアイスランド、リヒテンシュタイン、スイス及びノルウェーの合計。
FTA 発効日 香港 の貿易に占める構成比(2025年)
往復 輸出 輸入
発効済み 中国 2004.1.1(CEPA)
2018.1.1(IA)
2017.6.28(Ecotech Agreement)
51.4 59.7 43.8
ニュージーランド 2011.1.1 0.1 0.1 0.1
欧州自由貿易連合(EFTA) 2012.10.1、2012.11.1 0.9 0.7 1.0
チリ 2014.10.9 0.1 0.1 0.2
マカオ 2017.10.27 0.7 1.2 0.2
ジョージア 2019.2.13
ASEAN 2021.2.12 15.3 9.9 20.2
オーストラリア 2020.1.17 0.4 0.5 0.3
合計 68.9 72.1 65.9
署名済み ペルー 0.0 0.1 0.0

〔注1〕構成比については、輸出は地場輸出(再輸出は含まない)、輸入は輸入総額を使用。
〔注2〕中国とは「経済貿易緊密化協定(CEPA)」およびサービス貿易協定、投資協定(IA)、経済技術協力協定(Ecotech Agreement)を締結。
〔注3〕ニュージーランドとは「経済連携緊密化協定(CEPA)」を締結。
〔注4〕EFTAは、アイスランド、リヒテンシュタイン、スイスとのFTAは2012年10月1日に発効、ノルウェーとのFTAは2012年11月1日に発効。
〔注5〕EFTAの構成比はアイスランド、リヒテンシュタイン、スイス及びノルウェーの合計。

〔出所〕香港工業貿易署

対内直接投資

対内直接投資額は3年連続2桁増

香港の対内直接投資統計(国際収支ベース、ネット、フロー)は、2026年6月時点では2024年の数値が最新となっている。

2024年の香港の対内直接投資額は前年比11.8%増の1兆763億香港ドルとなった。国・地域別では、7年連続で1位となった中国本土(構成比43.3%)からの投資が20.8%増の4,660億香港ドル、2位の英領バージン諸島(22.0%)は22.3%減の2,370億香港ドル、3位のケイマン諸島(8.2%)は7.0%増の887億香港ドル、4位の英国(3.7%)は前年の27億香港ドルの引き上げ超過から398億香港ドルとなった。日本(1.4%)は7位で22.8%減の146億香港ドルだった。

業種別では、投資持ち株会社・不動産・専門家・商業サービスが1位で前年比4.1%増の5,880億香港ドル、2位の貿易・卸・小売りは11.3%増の1,572億香港ドル、3位の銀行は72.0%増の1,433億香港ドルだった。

香港は自由な資本移動、国際的な物流機能、低税率、国際色豊かな人材などを提供している。中国商務部が公表する2024年の中国の対外直接投資額(フロー)1,922億ドルのうち、香港の構成比は60.4%と引き続き大きなシェアを維持している。また、2025年に香港市場に新規上場した中国企業は76社と前年の31社から大幅に増加した。同年に上場した企業のうち寧德時代新能源科技(CATL)、奇瑞汽車(Chery)、三一重工(SANY)など複数の企業が上場により調達した資金を海外事業に活用する計画を打ち出している。香港は中国企業の海外展開や資金調達を支える重要な国際金融プラットフォームとしての役割を強めている。

表5 香港の国・地域別対内直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:10億香港ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 385.8 466.0 43.3 20.8
英領バージン諸島 305.2 237.0 22.0 △ 22.3
ケイマン諸島 82.9 88.7 8.2 7.0
英国 △ 2.7 39.8 3.7
米国 61.6 32.0 3.0 △ 48.1
バミューダ 26.6 17.3 1.6 △ 35.0
日本 18.9 14.6 1.4 △ 22.8
カナダ 27.1 13.3 1.2 △ 50.9
台湾 5.1 10.7 1.0 109.8
シンガポール 4.2 4.9 0.5 16.7
合計(その他含む) 962.6 1,076.3 100.0 11.8

〔出所〕香港特別行政区政府統計処

表6 香港の業種別対内直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:10億香港ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
投資持ち株会社・不動産・専門家・商業サービス 564.9 588.0 54.6 4.1
貿易・卸・小売り 141.2 157.2 14.6 11.3
銀行 83.3 143.3 13.3 72.0
輸送・保管・郵便・宅配便サービス 33.1 76.9 7.1 132.3
金融(銀行・投資持ち株会社を除く) 17.9 54.0 5.0 201.7
保険 38.4 30.6 2.8 △ 20.3
建設 35.6 23.2 2.2 △ 34.8
その他 8.4 6.9 0.6 △ 17.9
製造業 6.3 2.7 0.3 △ 57.1
ホテル・飲食 4.1 0.7 0.1 △ 82.9
情報・通信 29.6 △ 7.1
合計 962.6 1,076.3 100.0 11.8

〔出所〕香港特別行政区政府統計処

対外直接投資

対外直接投資額は前年比5%弱減少、対中投資が引き続き過半

香港の対外直接投資統計(国際収支ベース、ネット、フロー)も、2026年6月時点では2024年の数値が最新となっており、2024年の対外直接投資額は前年比4.9%減の7,231億香港ドルとなった。

国・地域別では、中国本土への投資(構成比51.6%)が前年比7.4%減の3,729億香港ドルと減少したものの、15年連続で首位となった。2位は英領バージン諸島(27.5%)で70.9%増の1,989億香港ドル、3位はシンガポール(4.9%)で、前年の38億香港ドルの引き上げ超過から357億香港ドル、4位はバミューダ(4.2%)で25.5%減の307億香港ドルとなった。日本(0.4%)は7位で74.3%減の26億香港ドルだった。

業種別では、構成比が最大(62.6%)の投資持ち株会社・不動産・専門家・商業サービスが前年比3.8%減の4,529億香港ドル、2位が貿易・卸・小売り(14.6%)で13.1%減の1,057億香港ドル、3位は銀行(6.6%)で2.8%増の480億香港ドルとなった。

2024年の対中投資について個別案件をみると、香港の不動産投資会社である領展房地産投資信託基金(Link Real Estate Investment Trust)は同年2月、上海市にある商業施設「上海七宝領展広場」の残り50%の株式を25億9,080万香港ドルで取得し、完全に所有したと発表した。また、香港金融・保険会社の友邦保険(AIA)は、同年の10月から11月にかけて、山東省、安徽省、重慶市、浙江省での新支社設立許可を取得したと発表した(投資額は非公表)。

そのほか対外投資案件として、運輸物流会社の嘉里物流 (Kerry Logistics)は2024年3月、フランスの国際貨物輸送大手「Business By Air SAS」の株式の過半数を取得した。取得額は公表されていない。また、香港の多国籍コングロマリットの長江和記実業(CK Hutchison Holdings)は同年8月、傘下のネットワーク・通信会社Wind Treがイタリアの独立系5GネットワークオペレーターであるOpNetを買収したと発表した(投資額は非公表)。

表7 香港の国・地域別対外直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:10億香港ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 402.9 372.9 51.6 △ 7.4
英領バージン諸島 116.4 198.9 27.5 70.9
シンガポール △ 3.8 35.7 4.9
バミューダ 41.2 30.7 4.2 △ 25.5
タイ △ 5.9 5.6 0.8
英国 12.0 4.8 0.7 △ 60.0
日本 10.1 2.6 0.4 △ 74.3
ケイマン諸島 0.8 △ 0.6
米国 6.8 △ 1.5
オーストラリア 3.1 △ 1.7
合計(その他含む) 760.7 723.1 100.0 △ 4.9

〔出所〕香港特別行政区政府統計処

表8 香港の業種別対外直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:10億香港ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
投資持ち株会社・不動産・専門家・商業サービス 470.8 452.9 62.6 △ 3.8
貿易・卸・小売り 121.6 105.7 14.6 △ 13.1
銀行 46.7 48.0 6.6 2.8
保険 40.6 47.6 6.6 17.2
輸送・保管・郵便・宅配便サービス 39.5 36.9 5.1 △ 6.6
情報・通信 4.2 23.4 3.2 457.1
製造業 23.7 20.6 2.8 △ 13.1
金融(銀行・投資持ち株会社を除く) △ 27.9 7.8 1.1
ホテル・飲食 5.5 3.2 0.4 △ 41.8
建設 19.4 △ 3.4
その他 16.5 △ 19.5
合計 760.7 723.1 100.0 △ 4.9

〔出所〕香港特別行政区政府統計処

表9 香港の主な対外直接投資案件(2024年)
業種 企業名 投資国・地域 時期 投資額 概要
エネルギー 長江基建集団
CK Infrastructure Holdings
長江実業(集団)
CK Asset Holdings
電能実業
Power Assets Holdings
北アイルランド 2024年4月 約74億香港ドル 3社による共同事業体が北アイルランド最大のガスネットワーク「Phoenix Energy」を買収。
英国 2024年8月 約3億5,000万ポンド 3社による共同事業体が英国の陸上風力発電ポートフォリオ「UK Renewables Energy」を買収。
不動産 領展房地産投資信託基金
Link Real Estate Investment Trust
中国(上海市) 2024年2月 25億9,080万香港ドル 上海市の商業施設「上海七宝領展広場」の残り50%の株式を取得し、完全子会化。
運輸物流 嘉里物流
Kerry Logistics
フランス 2024年3月 n.a. フランスの国際貨物輸送大手「Business By Air SAS」の過半数株式を取得。
ネットワーク・通信 長江和記実業
CK Hutchison Holdings
イタリア 2024年8月 n.a. 傘下のWind Treが、欧州初の独立系5GネットワークオペレーターであるOpNetを買収。
金融・保険 AIA(友邦保険) 中国(山東省、安徽省、重慶市、浙江省) 2024年10月~11月 n.a. 中国の複数都市に新支社を設立。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

投資環境・外資誘致政策

投資環境の整備、産業発展と北部都会区開発を加速

2024年に引き続き、2025年も香港政府は投資、産業発展、北部都会区の開発に注力した。香港政府の李家超(ジョン・リー)行政長官は同年9月の施政報告(施政方針演説)において、主に「北部都会区開発の加速」「産業発展と改革」「強みの結集による国家全体の発展への統合」についての演説を行っている。

この演説で、投資環境については、香港で金(きん)の決済システムを導入し、より多くの機関が香港で金の保管施設を拡大していくことを奨励するとした。このほか、デジタル資産取引や有価証券管理サービスの免許制度に関する立法案の策定、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)でのカーボンマーケットの連携深化、クロスボーダー取引決済の試験運用の実施など、香港の強みである「国際金融センター」としての機能を強化する方針を盛り込んだ。

また、産業発展については、航空機リサイクルや新エネルギー産業など新型工業化産業の発展推進、製薬企業の革新的医薬品の市場投入に関する支援、AIやデータサイエンス産業の発展促進と応用拡大などを盛り込んだ。

さらに、北部都会区の開発では、行政長官が主宰する「北部都会区発展委員会」を設置し、意思決定レベルを引き上げるとしたほか、簡素化された法定手続を策定できる特別法を導入し、北部都会区の開発を加速させるとした。

香港会社登記所が2026年1月に発表した2025年末時点の登録会社統計によると、2025年に香港に拠点を新設または本拠地移転制度(注)に基づき香港に移転した企業数は19万5,343社で、前年(14万5,053社)から大幅に増加した。そのうち2025年に香港に新拠点を登記した香港域外企業は1,532社に達し、前年の1,079社から42%増となった。また、香港の投資支援機関InvestHKが2026年1月に発表した「スタートアップ調査(2025年)」によると、2025年末時点で香港に拠点を置くスタートアップ数は前年比11.2%増の5,221社となり、過去最高を更新した。

(注)
2025年5月に施行された香港域外企業の本拠地移転申請の手続きを簡素化する制度(2025年6月6日付ビジネス短信参照)

ジェトロなどが現地進出日系企業などを対象として実施した「香港を取り巻くビジネス環境にかかるアンケート調査(第16回、2026年2月実施)」では、香港拠点のメリットとして「低税率(45.2%)」「中国市場へのアクセスの容易さ(39.1%)」「関税が原則無税(36.5%)」が上位に挙がった(複数回答)。また、香港拠点の今後の活用方針については、「これまでと変わらない」と回答した割合が62.3%と最も多く、「拡大」は7.8%(前回3.3%)と微増した一方、「規模縮小」「撤退」「機能の見直し」の合計は10.3%(前回17.7%)にとどまった。他方、香港におけるビジネス展開上の懸念事項としては、家賃やオフィス賃料、人件費などの高騰による事業コストの増加に加え、先行き不透明な香港および中国経済の動向を指摘する声が引き続き多く上がっている。

対日関係

輸出入額はともに増加、対日貿易赤字は1,528億香港ドル

香港政府統計処のデータによると、2025年の対日貿易は輸出が前年比13.5%増の916億香港ドル、輸入は7.7%増の2,444億香港ドルと、対日貿易収支は1,528億香港ドルの赤字となった。

品目別でみると、輸出は電気機器・同部品(構成比20.8%)が前年比7.1%増の190億香港ドル、その他の雑製品(17.9%)が約2.1倍の163億香港ドル、通信・音響機器(13.5%)は13.9%減の123億香港ドルだった。輸入では、金額上位3品目がすべて前年比増加となった。全体の4割超を占める電気機器・同部品が10.1%増の1,096億香港ドル、撮影器具・光学機器・時計など(構成比8.4%)が32.8%増の206億香港ドル、その他の雑製品(5.7%)が26.3%増の140億香港ドルだった。

農林水産省が公表した「2025年農林水産物・食品の輸出実績(国・地域別)」によると、2025年の日本の農林水産物・食品の香港向け輸出は、前年比0.9%増の2,228億円(構成比14.0%)と微増した。上位10品目のうち前年から増加したのは、1位の真珠(天然、養殖)(6.0%増の355億円)、2位の牛肉(11.8%増の95億円)など。香港は2020年まで16年連続で日本にとって最大の農林水産物・食品の輸出先だったが、その後は2位で推移しており、2025年も米国に次ぐ2位となった。

香港政府は2023年8月23日、日本が東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水の放出を24日から開始することに伴い、規制対象となる10都県(東京都、福島県、千葉県、栃木県、茨城県、群馬県、宮城県、新潟県、長野県、埼玉県)の水産物の輸入禁止措置を24日から開始すると発表した。2026年5月現在、本規制は解除されていない。

直接投資については、日本側統計では、2025年の日本から香港向け直接投資額(対外直接投資額)は前年比47.6%減の1,530億円で、香港の対日直接投資額は52.7%減の2,387億円となった。

日系企業の香港ビジネスの展開事例では、卸売・小売業や飲食業の新規出店が引き続き活発である。卸売・小売業では、2025年7月に雑貨店「3COINS(スリーコインズ)」の香港1号店が開店した。また、同年5月と11月には中古衣料・服飾品店「セカンドストリート」の香港1号店と2号店が相次いで開店した。飲食業では、2025年10月に「博多やりうどん」が香港に海外1号店を出店し、同年12月にはステーキレストランの「やっぱりステーキ」の香港1号店が開店している。

表10-1 香港の対日主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万香港ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 17,781 19,045 20.8 7.1
その他の雑製品 7,843 16,348 17.9 108.4
通信・音響機器 14,319 12,330 13.5 △ 13.9
事務用機器・データ処理機 9,124 9,449 10.3 3.6
電動機 4,914 8,813 9.6 79.3
撮影器具・光学機器・時計など 5,541 5,459 6.0 △ 1.5
非金属鉱物製品 3,758 3,533 3.9 △ 6.0
専門・科学・制御機器 3,045 2,896 3.2 △ 4.9
衣類・同付属品 1,824 1,771 1.9 △ 2.9
その他の輸送用機械 1,698 1,757 1.9 3.5
合計(その他含む) 80,656 91,577 100.0 13.5

〔出所〕 香港特別行政区政府統計処

表10-2 香港の対日主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万香港ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 99,532 109,629 44.9 10.1
撮影器具・光学機器・時計など 15,494 20,571 8.4 32.8
その他の雑製品 11,047 13,950 5.7 26.3
通信・音響機器 14,849 13,147 5.4 △ 11.5
電動機 7,882 10,356 4.2 31.4
事務用機器・データ処理機 8,047 7,965 3.3 △ 1.0
非鉄金属 4,040 6,515 2.7 61.3
特定産業用機器 10,461 6,045 2.5 △ 42.2
非金属鉱物製品 6,108 5,597 2.3 △ 8.4
陸上の乗物(エアクッション艇を含む) 5,205 4,833 2.0 △ 7.2
合計(その他含む) 226,970 244,388 100.0 7.7

〔出所〕 香港特別行政区政府統計処

表11 日本からの主な香港向け対内直接投資案件(2025年)
業種 企業名 時期 概要
EC ブランジスタ 2025年8月 「TikTok Shop」での日本製品拡販を目的に香港現地法人を設立
飲食 オールドリバー 2025年9月 鶏専門店「鶏三和」の香港1号店を開店
西鉄ストア 2025年10月 うどん店「博多やりうどん」の海外1号店を開店
ディーズプランニング 2025年12月 ステーキレストラン「やっぱりステーキ」の香港1号店を開店
小売 いーふらん 2025年2月 買取専門店「おたからや」の海外1号店を開店
パルグループホールディングス 2025年7月 「3COINS(スリーコインズ)」の香港1号店を開店
ゲオホールディングス 2025年5月、11月 中古衣料・服飾品店「セカンドストリート」の香港1号店、2号店を開店
ダイコク 2025年8月 ダイコクドラッグが海外1号店を開店
ナルミヤ・インターナショナル 2025年9月 ベビー・キッズブランド「petit main(プティマイン)」の香港1号店を開店
アニメイト 2025年12月 「アニメイト香港」の初の直営店を開店
アイスタイル 2025年12月 海外初の旗艦店「@cosme HONG KONG」を開店

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

その他

国際金融・貿易センターとしての機能強化と戦略的展開

投資誘致の推進の一環として、香港政府は2025年5月、香港域外企業の本拠地移転申請の手続きを簡素化する「本拠地移転制度」を施行した。また、「国際金融センター」としての機能強化に向けて、2025年8月に、「ステーブルコイン条例」を施行した。ステーブルコインは価格の安定性を保つことを目的とした暗号資産であり、同条例ではステーブルコイン発行者に対するライセンス制度などを定めている。2026年4月には同条例に基づき、香港上海銀行(HSBC)とアンカーポイント・ファイナンシャル(碇點金融科技)の2社に対し、初のステーブルコイン発行者ライセンスを付与した。なお、財経事務・庫務局の許正宇(クリストファー・ホイ)局長は、ステーブルコインの主な利用分野の1つとして「クロスボーダー決済」を挙げ、海外の金融規制当局と相互承認の制度を構築することに前向きな姿勢を示している。

中国本土との連携についても進展がみられた。上述の通りCEPAのサービス貿易に関する第2次改正協議書が発効したほか、2025年6月には香港と中国本土間の越境即時決済システム「ペイメント・コネクト(跨境支付通)」が開設され、銀行口座間で香港ドルと人民元の即時送金が可能となった。本システムは今後、香港と中国本土間の経済活動を支える重要な金融インフラとして機能するものと期待されている。

このほか、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)構想の重点プロジェクトの1つである「河套深港(深セン・香港)科学技術イノベーション協力区」の香港園区(香港パーク)が2025年12月に正式に開園した。同園区の設立により、香港・深セン間のイノベーション・テクノロジー(I&T)の共同開発の加速に加え、大湾区内における研究開発から市場投入までを担う産業チェーンの構築が期待されている。

「国際貿易センター」としての機能強化に向けて、香港政府は各地域・国との連携強化を積極的に進めた。2025年5月、李行政長官は、香港企業に加え中国企業も率いてカタールとクウェートを訪問し、金融、インフラ、イノベーションなどの各産業分野での経済連携強化を訴えた。香港を通じた中国企業の海外展開や中東市場との連携強化を後押しする姿勢を鮮明にした。2025年11月には韓国で開催されたAPEC首脳会議に出席し、各加盟国・地域のリーダーとの会談を通じ、自由貿易の維持と経済連携の重要性を訴えた。

また、陳茂波(ポール・チャン)財政長官は、年間を通じて韓国、米国、サウジアラビア、英国、イタリアを公式訪問し、国際金融ネットワークの維持と幅広い分野での協力推進に努めた。香港政府は、「一国二制度」の優位性を活かし、中国本土と海外市場を結ぶ「スーパーコネクター」としての役割を強調しており、中国企業の海外展開や資金調達を支える国際金融・ビジネスプラットフォームとしての機能強化を進めている。香港政府による「国際金融センター」「国際貿易センター」としての地位維持・強化に向けた取り組みに、今後も注目が集まる。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 貿易収支:国際収支ベース(財のみ) 経常収支:2024年および2025年は暫定値。 対外債務残高(グロス):2025年は暫定値。
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 3.2 2.6 3.6
1人当たりGDP (1,000米ドル) 50.58 54.44 56.89
消費者物価上昇率 (%) 2.1 1.7 1.4
失業率 (%) 2.9 3.0 3.7
貿易収支 (100万香港ドル) △ 467,585 △ 379,731 △ 446,582
経常収支 (100万香港ドル) 250,922 418,597 407,920
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 425,415 421,329 427,645
対外債務残高(グロス) (100万香港ドル) 14,420,623 14,671,486 16,054,289
為替レート (1米ドルにつき、香港・ドル、期中平均) 7.83 7.80 7.80

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
経常収支:2024年および2025年は暫定値。
対外債務残高(グロス):2025年は暫定値。

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス)、為替レート:香港特別行政区政府統計処
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス):IMF